ばむばんか惰隠洞

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2004-03-14 この日を編集

[TV] 定期視聴番組

「頭文字D」、「光と水のダフネ」、「キャプテンハーロック」、「特捜戦隊デカレンジャー」、「仮面ライダーブレイド」、「ふたりはプリキュア」。「キャプテンハーロック」が案外面白いですな。松本零士は「これはりんたろう版『ハーロック』である」とかなんとかコメントしたらしいけど、おかげで松本零士が最も苦手とするSFの意味的描写が、松本作品の中では例外的なほどに説得力を持ってるような感じがする。松本零士的世界っちゅうのは、すべてに置いて情緒的な世界なんで、どこか理屈っぽさが必要なSF作品だと往々にしてなんちゃってSFにしかなってないように感じられることが良くあるんだけど、そこらをうまく消化して、松本キャラをうまく活かしつつ、「これはSFなんでっせー」な雰囲気も併せ持たせることに成功している、か、成功しかかっている、ように思える。なんでもヤッタランに説明させるのは勘弁な、とも思うけどね。山寺宏一のハーロックは、これはこれでオツなもんではないかいな、と思いますわ。

「デカレンジャー」は、オモチャ攻勢第一弾で、ロボット犬マーフィーK9登場。ん、K9? そりゃあ盲導犬じゃなかったかい? ま、それはともかくアップ部分は作り物なんだろうけど、かなりのシーンでCG合成が多用されてて、かつこれがかなり自然な感じに仕上がってるのはすげえなあと思ったです。個人的にはもうちょっと、マーフィーはやれば出来るんだけど性格ひねてて困りもの、みたいな部分を強調して欲しかったような気がするけど。

「ブレイド」のほうは、わはは、オンドゥル語全開だなあ、今回も。このシリーズ、iyenさんが日記でいみじくも、やっていることはきちんとやっているのに、どうも面白くないと書いておられるのだけど私もそう思う。やることを押さえるのに汲々としているのか、やることきっちり押さえることに終始したあまり、突き抜けた物を提供できていないのか、さて。個人的には今出てきている謎のいくつか、たとえば井坂さん関連のお話とはもうちょっと後に回して、とりあえずはライダーシステムちゅうもんがどういうもんなのか、とかアンデッドって何よ(その説明自体はとりあえず今は嘘でも構わない)って話とか、そっちを少し詰めていった方が良いんじゃないかなあ、と思ったりします。何事も、一度にひとつずつ、片づけていく方が良いと思うぞ。

それはそれとして、最近は慎吾ちぁんの「新選組!」もそれなりに楽しく見てます。出だしはちょっとなあ、だったんだけど、百姓上がりの侍は、どんなに志が高くてもその志を遂げることなどかなわない、と思い知らされた近藤勇、てなエピソードあたりからずいぶん面白くなってきたと思う。まあそれ以前にこのドラマ、テーマ曲が大変良くて、そこでかなりわたくし的に、ポイント稼がれてるんですけどね。ジョン・ウィリアムズばりにすっちゃらら、すちゃすちゃ、すっちゃらら、すちゃすちゃ、なストリングスにホーンセクションが被る曲想に私、弱いんですよ(^^;)。

本日のツッコミ(全5件) [ツッコミを入れる]

もんちぃ [K9は警察犬ではないかと(さらに深い読みがあるのかな?)]

ROVER [ぎょぎょっ、警察犬でしたっけ?"K9 犬"でぐぐってみたら、トップに来るのはペンションだったりす..]

asano [ジェームズ・ベルーシが主演の映画で『K−9 友情に輝く星』つーのがありましたなあ。 下記のサイトではヒドい評価ですけ..]

ROVER [あーオレ、今の今まで犬の名前がK-9なんだと思ってた。麻薬犬の訓練施設の名前だったんですね。]

もんちぃ [「K-9〜」は警察犬の話だと思ってますた。ロボット犬“マーフィー”ってトコからも映画ネタから引用なんでしょうね。]


2005-03-14 この日を編集

[Day] サクラサク (12:30)

倅の元に合格通知が一通到着。えーと、これほど世の中舐めた生活態度の小僧でも拾ってくれる大学があることに、父は驚いてますが。

まあ4年間の猶予はもらったってことで、一応おめでとう。でも父と母はさらに脛が細ることになるなあ。めでたさも中くらい。

[CS] なんだとー? (19:43)

フジテレビ721+739 月額料金改定のお知らせ。月1050円かよー。オレ、F1しか見ないんだけどなあ。721オンリー500円、とか言うコースがあるとうれしいんだけどな。

[Books] トリポッド(3) 潜入 (23:47)

本書カバー ジョン・クリストファー 著/中原尚哉 訳
カバーイラスト 西島大介
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN4-15-011506-0 \640

「大魔神逆襲」を思い出しちゃったよ

厳しい試練を経て、トリポッドに支配されていない一握りの人々が集まる"ホワイトマウンテン"にたどり着いたぼくたち三人。そこでぼくたちは、厳しい自然に耐えながら、やがては来るであろうトリポッドたちとの闘いのため、身体を鍛える毎日が続いていた。そしてそんなぼくたちに、意外に早くその成果を試す時がやってくる。ドイツのある地方では、年に一度、スポーツ大会に優勝した少年たちを、トリポッドたちの街へ、奉仕者として連れて行くらしいのだ。その大会で優勝すれば、今まで誰も見たことのない、トリポッドたちの秘密がわかるかも知れない…。

英国製ジュヴナイルSF、第3弾、と言うか実質的には第2弾。序・破・急の「破」。厳しく、少し切ない思いの果てにたどり着いた本当の意味での「人間」たちの集落。でもそこも楽園ではない。なぜなら地球はいまだに異星人の支配下にあり、大多数の人間たちは彼らの家畜になってしまっているから。だから、例え少年たちであっても、時として大人に混じって、あるいは単身で過酷な任務に立ち向かい、戦っていかなければならない。だから少年はふたたび過酷な任務に…、と言うお話な訳ですな。前作が逃亡のための過酷な旅だったとしたら、今回は人類の逆襲の第一歩となるための過酷な旅。そしてその旅は、前以上に辛く、厳しく、そして切ない。ううう、これぞ英国SF。甘ったれたところは微塵もない。

あまりに甘ったれたところがないものだから、普段ぬくぬくな世界に暮らしている私なんかは、「子供にここまで残酷な現実を見せつけちゃって良いんだろうか」と思ってしまう訳なんだが、英国SFの矜持として、例えジュヴナイルといえど、いやジュヴナイルだからこそ、時として現実ってのはどうしようもなく痛みに満ちて、理不尽で、悲しいものなのだ、と言うことをきっちり子供のうちから教えておかなくちゃいけない、って考えがあるんだろう。その真摯さは、もしかしたら大人になった人間が読んだときにこそ、その厳しさが改めて身にしみ入るようなモノなのかも知れない。

主人公のキャラクターを比較的深く造っておいて、それ以外のキャラの掘り下げは割と控えめにしてあるあたりの匙加減もうまいと思う。これにより、欠点だらけ(いやもうぶちこわし型の典型なんだよね、主人公のウィル君って)の主人公が、何かのきっかけで他の登場人物たちの考え方や性格を少しずつ深く知っていく、様な構造になっているのもちょっと面白い。それでもまだまだ、我らがウィル君は何かと困ったちゃんなところもあるのだけど。さて人間とトリポッドの闘い、本書でそれには明確なタイムリミットがあることが明らかになるのだが、あまり多いとは言えない残りの期間で彼は、どんな成長を遂げるのだろうね。最終巻が待ち遠しい。

それはそれとして、訳者あとがきで中原さんがちょっと触れておられるBBC版「トリポッド」の紹介サイト、見つけたつもりだったんだけど改めて行こうとしたら、リンク死んじゃってる感じだなあ。どうしたんだろ。もしかしてオレが、忘れないように、とMM/memoとかはてなブックマークとかにURI放り込んだのがマズかったかしら…(おろおろ)。

(★★★☆)

おや、今見ると復活している模様。一応貼っときますね。
http://www.gnelson.demon.co.uk/Tripods.html

[Day] 紀香先生はオプションですか (24:01)

というわけでいきなりレオパレス21のサイトとかをつらつらと眺めてる私。明日もうひとつ、結果待ちの学校があるんだけど、んでもってどちらにしても自宅から通える距離ではあるんだがそれはそれとして、とーちゃんとしては大学生にもなって親と一緒に暮らしてんじゃねーよ、と言うところもあるので、状況が許すんなら下宿暮らしをさせたい気もあるんだけど。たまには終電気にせず呑みたいときだってあるだろうし、あわよくば彼女(できたらなー)を連れ込むのにも便利だろうしさ。

んでレオパレス21の会員制賃貸モード。意外にリーズナブルなんだな。家具家電にエアコンまでついてて月6万前後(ただし、敷金礼金は確かにゼロだが、「会員制」に少々出費が必要)は、オレらの頃(20年ほど前)なら月4万ぐらいの感覚? それなら仕事やる気ない両親でもなんとかなるかなあという感じではある。

問題は倅のガッコからええ具合のところに、ええ按配の物件が見つからないってことかなあ。下宿暮らしで電車通学、つーのもなんかなーと思ってしまうわけだが。

どうしたもんだか。

[TV] なんかちょっと嬉しかった (24:33)

ECC予備校のCFのアニメ、これ森雅之だよね?

本日のツッコミ(全9件) [ツッコミを入れる]

Before...

もんちぃ [大学生活が脛の無駄遣いにならない事を祈る。(無駄遣いしたオレが言うな)]

美紀 [ここは本名でいいかしら。ちょろっとだけ。 おめでとうございます乱土さん。入学金すすすごいですよね。 どうでもいいです..]

rover [のほほーい、みなさんどうもありがとうございます。 4年後の私はジオングになってるかも知れないなー。]

寸゛ [二浪もして親を骨皮スネ夫にしてしまった私からすると、「何と親孝行な息子さんだ」と思ってしまいましたよ。おめでとうござ..]

でした [ そういえば、受験シーズンでもあったんですねえ。 独り者なので、そういう感覚がすっかり無くなってましたが、 それはと..]

rover [>美紀さん なんかひっさしぶりな書き出しだなあ(^^;)。 で、ついでに高橋英樹がヒデキとかで出てくると凄さパワーア..]

hisamura75 [下宿だけど大学まで電車で10分とか、わりと普通だったような。 男の子なんだから終電逃しても3駅くらい歩けるでしょうし..]

rover [だって倅が家を出てくれたら、ヤツの部屋を古本倉庫に使えるもの。]


2006-03-14 この日を編集

[Day] 申告完了 (13:41)

5秒で終了。苦労のしがいのない儀式だよなあ。

せっかくなので三宮に出て、意外におもしろいと評判の「Zガンダム」でも見ようかと思ったんだけど、先に本買いすぎたので映画はパス。お茶飲んで帰ろ。

ありゃ、仕事が入っとる模様(つoT)。

[Books] 名作再版 (24:13)

41501154944150308381というわけで鈴蘭台ってとこは、こんな本も簡単には入手できないのでございますよ。ともにハヤカワ、2月の新刊文庫だっつーのに。西鈴のTSUTAYA、今やハヤカワ文庫新刊で入れることにしてるのは「グ」だけなんじゃないだろうか(創元はもっと悲惨っす)。つーわけで街に出る機会を捉えては、新しめな文庫を買いまくることに。で、文庫3月の新刊案内を見てたらちょっと嬉しいタイトルが。ハヤカワ名作セレクションから、マイケル・バー=ゾウハー「パンドラ抹殺文書」再版だ。

こいつはSF者じゃなく、冒険小説ファン用の本。バー=ゾウハーはあんまり数が出てなくて、しかも今手に入る本がとても少ない作家なんだけど、で本人がユダヤ系の人って事もあって少々イスラエルよりな描写が目立つってところもあるにはあるんだけど、発表する作品たちは基本的に軽快なスパイ・アクションになってて楽しめる。私のお薦めは「エニグマ奇襲指令」、「ファントム謀略ルート」(これらはそういう魅力に満ちてる。いいよ)、「復讐のダブル・クロス」(こちらは逆に、彼の出自が少々色濃く反映された作品。モサドがヒーロー、って時点で拒否反応示す人もいそうだなあ)、「影の兄弟」(これはわたくし的に久々のバー=ゾウハー作品だった。で、すばらしく面白かった)あたりかな。なので、どうせ再版するなら「エニグマ」をやって欲しかったのになあ、とはちょっと思った。ミュンヘン : オリンピック・テロ事件の黒幕を追え(Bar-Zohar,Michael/著 Haber,Eitan/著 横山啓明/翻訳 ほか)

それにしてもなぜ今バー=ゾウハーなんだろう、って思ったんだけど、あれですわ、スピルバーグの「ミュンヘン」の便乗本(なのかな?/ amazon)の著者の一人が彼なんですな。ふんむー、そういう事情かあ。

ま、それはそれとしてバー=ゾウハー作品自体はどれも楽しめますんでオススメしますよ。古本屋で安く手に入れられたりするとお買い得感もアップ(控えめな誘導。たぶん「エニグマ」「ファントム」「パンドラ」「ダブル・クロス」は在庫あるはず)。

[Hobby] うわはははははは(いや実はかなり感動している) (25:08)

とんたん、サイコー(^o^)。

本日のツッコミ(全3件) [ツッコミを入れる]

すみけん [>5秒で終了 そなんすよね。わたし今年はじめただったんですが、窓口で「不備はないですか? あれは? これは?」とか..]

rover [あっしも最初はビビリまくりでした。領収書の束とか持って行ったんですけど、そんなの全然必要なくって拍子抜け。国税庁のサ..]

たかはし@梅丘 [さっき終わりました。サラリーマンですが、「新現実」の稿料なんてのが入ったり(笑)。もちろん大きな額ではありません。念..]


2007-03-14 この日を編集

[Day] 仕込み完了 (26:35)

ってまたえらい時間じゃないか。寝る。


2009-03-14 この日を編集

[Comics] 西島大介のマンガ

97841520872019784152087119凹村戦争(西島大介/著)買取物件ピックアップシリーズ、その9。Jコレクション枠で発刊された西島大介氏のコミック、「凹村戦争」、「アトモスフィア」(1)、(2)。「二人のウェルズに捧げる」とあり、お話の舞台が「凹村」と来れば、下敷きになるのはアレだよね、ってのが「凹村戦争」。虚構がいつしか現実世界をかき回したのが件のラジオドラマ事件だったとすれば、凹村で起きた(というか起きなかった)のは、現実の中でなぜか台風の目のような状態になった小さな村での小さなお話。「セカイ系」とか口が裂けても言いたくないので苦労して言い換えるならば、心地のいい閉塞と破壊に囲まれた解放の、どちらがキミにとって望ましい未来なんだろうね、ってなお話。ほんわりとしつつどこか投げやりな雰囲気が、この人の持ち味と言えるのか。

つづく「アトモスフィア」は、ドッペルゲンガーをネタにした、これまた少々読者を置き去りにしつつ、妙な疾走感(んー、疾走と言うよりはトコトコ歩き、って感じだけど)は与えてくれる。そこの所の妙な感覚と、分岐していく存在と世界の有り様を描いていくあたりは、確かにSFと言えるんだろうな、と時々自分で自分に念を押しながら読んでいったら、最後の最後でどっかーんとひっくり返してもらって、思わず(本編の主人公がしばしば口にしかかって飲み込んだセリフであるところの)ふざけんなって言っちゃった。いや、良い意味でね(w。

以下余談。

そういう意味でそれなりに楽しめる3冊ではあったのだが、んー、これは「マンガ」なのだろうかね。「凹村戦争」はそれでもまだ、マンガの体裁を持っているとは思うんだが、「アトモスフィア」の方はマンガの形を借りた文章実験、みたいなイメージもある。Jコレクションから出てる、ってのはそういうことなんだろうか。マンガに限定してくれるなよ、みたいな。

さらに余談。

「マンガ家入門」でマンガのシステムというか文法の基本を学び、それからいくつかの石森マンガに触れて、ページ/コマ/絵の構成に関する実験的な表現なんかに触れてきた身としては、とりわけコマ割りに工夫のない最近のマンガに、少々苦々しい思いを致しているオッサンがここに一人。

マンガとは、コマを構成単位として物語が進行する絵、つったのは夏目房之介だったかな。構成単位としてのコマを非常に自由に使ってきたのが石森マンガとそこに影響を受けた少女マンガで、そこからどんな新しい表現方法が出てくるのかなあと思ってるところに、コマを「額縁」扱いし、その中に極めて緻密な映画的手法を持ち込んだのが大友克洋で、その作品自体は素晴らしいものだと思いつつも、なんか彼によってマンガの表現手法に妙な縛りがかけられたんじゃないかなあ、なんて思うこともあるんでした。

あ、余計な話の方が長くなっちゃった。

[Books] 犬は勘定に入れません あるいは消えたヴィクトリア朝花瓶の謎

犬は勘定に入れません : あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎(Willis,Connie/著 大森望/翻訳 ウィリスコニー/著) コニー・ウィリス 著/大森望 訳
装画 松尾たいこ
装幀 岩郷重力 + Wonder Workz。
早川書房
ISBN978-4-15-208553-5 \2800(税別)

過去と現在を自由に行き来する技術、"ネット"。だが、時間の連続性を乱す何物も、"ネット"を介して現代に持ってくることが出来ないことが分かり、タイム・トラベル技術が21世紀になんの恩恵ももたらさないことが分った時点で、大多数の企業、軍部は時間旅行への興味を失ってしまう。ただ一人残った大口スポンサー、レイディ・シュラプネルが執念を燃やすのは第二次大戦で消失したコヴェントリー大聖堂の復元のみ。唯一の大口スポンサーの命令は絶対で、オックスフォード大学歯学部の面々は全員が大聖堂の資料集めのために過去と現在をとんでもない頻度で行き来させられる羽目になっていた。学生の一人、ヘンリーもレイディ・シュラプネルのワガママに振り回され、疲労困憊の日々。そんなヘンリーに新しい任務が申し渡されたのだが…

こちらも買取物件ピックアップ。「ドゥームズデイ・ブック」と同じ舞台設定ながら、前作がどちらかと言えば少々重めだったのに対して、こちらはかなりのドタバタ・コメディ。ただ一人の大口スポンサーのワガママで、様々な時代へ研究員を送り込み、コヴェントリー大聖堂に関する様々な資料集めが始まるのだが、実は時間線の流れにおいて、コヴェントリーに極めて重要な意味を持つ時期があり、そこでのごく些細な歴史の改編が、連続する時空に壊滅的な打撃を与える可能性があることが分って、ってのがお話のキモ。ヴィクトリア朝の英国に送り込まれた研究員にして本作のヒロイン、ヴェリティが、それまで不可能と思われていた過去のアイテムを現代世界に持ち込んでしまったがために、時空が大きく歪む可能性が生まれた結果、その修正のためにヘンリーが駆り出されるのだが、連日のタイム・トラベルの連続からくる一種の時差ボケで朦朧としていた彼は、そもそも行った先で誰にあって何をするのかをまったく憶えてない。これがさらに話をややこしくしていって…、みたいな。

ゲルニカから始まって重慶、ロンドン、コヴェントリー、ドレスデン、東京と続いていく無差別都市空襲の流れの中で、コヴェントリー空襲はあらかじめそれが分っていたにもかかわらず、とある戦略的な理由からあえてその阻止行動が取られなかった故に起きた悲劇、というのは有名な話だが、本書でもこのエピソードが重要なポイントになっている。この空襲で消失した大聖堂の復元事業のために、過去のあちこちに飛んでかつての大聖堂の資料集めが行われるのだが、一点のみ、突如行方をくらました「主教の鳥株」と呼ばれる花瓶に振り回される人々の物語。

登場人物のキャラ立てが非常に上手く、彼らがみなやたらと饒舌に語る上に主人公ヘンリーも、お話のあちこちで時空に関する思いをつらつらとつぶやくモンだから、お話の分量はどんどん増えていく。多分シンプルにシノプシスのみ追っかけていったら、本書は多分3分の1くらいのボリュームでも、それなりにピリッとしたものが出来上がっていたと思うんだけど、そこにどんどことまぶされたユーモアとウィットのおかげで、相当な分量の本であるにもかかわらず、とても楽しく読んでいける。大森望氏の訳もなんだかノリノリだ(w。

タイム・パラドックスに関する手綱捌き、ヴェリティのミステリ好きな部分や登場人物たちの歴史談義が上手い具合に絡み合い、ミステリ仕立ての時間SFとして上々の仕上がり。ウィリスはこのシリーズの第3弾にも着手してるって事なので、そちらも楽しみ、というかそろそろ出来上がってくる頃なんじゃないんすかね。

★★★★


2010-03-14 この日を編集

[TV] 定期視聴番組 (23:38)

「とある科学の超電磁砲」、「マクロスF」(再)、「戦国BASARA」(再)、「天装戦隊ゴセイジャー」、「仮面ライダーダブル」、「ハートキャッチプリキュア!」、「鋼の錬金術師」。「龍馬伝」は飽きました。

さてラス前の「超電磁砲」。登場人物たちを少しずつ掘り下げていって、最後にみんな仲間じゃん、一緒にがんばろうぜ、で最終回に続ける。良い感じでございますね。良いお話であるが故に難しいのかな、佐天さんと初春ちゃんのお芝居がちょっとついて行けてない感じがあったかも。次回最終回。毎回損な役回りの婚后さん、実力的には黒子と同様レベル4の大能力者なんだけど、その実力は見られるのかな?

「クェイサー」はまあ、これでいいです(w。

日曜朝。まだ掴みきれてない「ゴセイジャー」、良い感じに乗れてる感じの「ダブル」が好対照か。「ダブル」は三条さんと長谷川さんが交代でホン書いてるんだね。今回の人形つかいのお話は長谷川圭一脚本。ちょっとほろっとするいい話。亜樹子のいいところもさりげなくアピールされてましたな。

「プリキュア」は愉快な生徒さんたち紹介シリーズ。増子さんみたいな女の子が出てきたぞ。ノリ的にかなり「どれみ」を意識しているのかしらね、今回のプリキュアは。

[F1] バーレーンGP決勝 (24:34)

タイミングモニタで観戦。Operaでもやっぱり盛大に表示がずれるな。あらゆるブラウザでずれるってことは、FlashPlayerかJavaの問題なんだろうか。ビデオカード、っつーセンもあるか、うーむ。

さてヴェッテル、マッサ、アロンソ、ハミルトンの順でスタートした開幕戦、序盤でザウバーが沈んでしまったという残念な結果もあったけど、レース自体はおおむね上にいるべき人たちが上で闘ってるようなレースで、そういう意味ではまあ、さほど波乱のないレースと言えたか、前半は。

後半になってちょっと動きが出て見応えがアップした。ヴェッテルのマシンに若干の不具合が出たようで、他のマシンに比べて2秒ぐらいラップタイムが落ちてしまう。コメンタリでは排気系か? なんて書かれていたけど実際のところはどうだったんだろう。あっという間にペースの速いアロンソ、マッサ、ハミルトンが抜いていく。

残り10周で2秒遅いってことだと、最悪8位くらいまで落ちかねない状況だったんだけど、そこは給油禁止の新ルールが救いになったか、最終局面まで来てどの車も軽くなった関係上、マシンの不調がいい具合に誤差の範囲に均してもらえた感じで、何とか4位フィニッシュ。終盤になってやたら速くなったハミルトンもさすがだったけどパッケージとそれを動かす人のトータルな能力、って所でやっぱりフェラーリの引き出しにはいろんなものが入っているんだろうな、最終的にアロンソとマッサのフェラーリでワンツー、続いてハミルトン。4位を死守したヴェッテル、がんばってミハエルの前を走り続けたロズベルグ、復帰第一戦でいまだにトップ10の力があることを見せつけたミハエルは偉かった。なんの見どころもなく、淡々と走ったジェンソンはやっぱりなー、と、そんなレースだったかな。

かつてのそれとは全然別物とはいえロータスが完走したこと、(地上波でちらっと見たんだけど)ヘルメットをかぶったブルーノ・セナ君が叔父さんそっくりに見えたのもちょっと印象的なレースでございました。


2011-03-14 この日を編集

[Day] 出してきた

確定申告。今じゃ電子申告やら郵送やら、便利な方法はいくらもあるんだけど、こう言うのはセレモニーだからね。ちゃんと書類揃えて出すの。

とは言え最近は、受付会場の方も簡略化されちゃってて、書類が揃ってると受付会場の玄関で「はいこれ」って出せちゃうんで、逆に門前払い食らってるような気もしないでもないんだけどね。

[Day][web] ふらふらしながら

書類出したあと軽く散歩。古本屋さんを冷やかしながら、久しぶりにTwitter見たりしてたんだけど、何となく神戸の震災の時を思い出してた。あのときはまだインターネット自体がまだそれほど一般的なものじゃなく、というかあの震災のおかげでwebの情報発信のポテンシャルみたいな物がクローズアップされたような記憶がある。自分がインターネットにパソコンを繋いだのもこの年だったし(多分まだ288モデムの頃だったと思うぞ)。で、当時の主力はラジオだったと思うけど、それが今じゃTwitterやFacebookに換わって、ラジオでは受けるのみだった情報へのアクセスのしかたが、個人レベルでもその気になればいくらでも積極的にPUT出来る時代になっているのだな、とは思った。

そこでやりとりされてる情報の質について偉そうなことは言えないんだけど、なんだろな、双方向で情報をやりとりできるようになった時代、というのが一種の「集合知」を産み出すものかと思ったらそうでもなく、今はまだノイズ混じりの有象無象が一気にwebにまき散らされてる気はしないでもない。こう言うのはこの先、洗練されていく物なんだろうかね。

[News] 物言いというのは難しいもんだね

「大震災は天罰」「津波で我欲洗い落とせ」石原都知事(asahi.com)。

ま、石原慎太郎という人はこういう物言いをする人だし、そこがまた、何だかんだと言われてもそれなりに支持者も確保できている理由なんだろう。自分には理解できないタイプの人間が増え、そんな連中が好き放題やっているように見える今の日本に対しての憂国の情抑え難く、ってあたりか。そこで「天罰」なんて言葉が出ちゃったんだろうな。そこが浅慮でもあるんだろうけど。

「天罰」発言のあとに続けて、「押し流されるべきは無能な政治家たちであった。自分もそこに含まれるのかもしれないが」ぐらい言い足しておけば、逆に評価が上がってたかもしれないのにね。

そういえば「TVつまらんからTSUTAYAに来てね」とかつぶやいて叩かれた店員さんもいたようですが、こっちも言い様一つでもっとどうにかなっていただろうにね。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

taoy@笹塚 [あくまでも個人的には、ですが。タイミングとして某氏が「出ない出ない」って云ってたのに出馬宣言した途端の地震だったので..]

rover [あんなこと言うから、ほんとに天罰の追い打ちが来ちゃったじゃないのよ、どーすんのさって感じですなあ。ってこれもたいがい..]


2013-03-14 この日を編集

[Anime] 定期視聴番組

古本発送準備、あーんど確定申告の仕上げをしながら「まおゆう」、「さくら荘のペットな彼女」、「みなみけ ただいま」、「PSYCHO-PASS」、「たまこまーけっと」、「ヤマノススメ」、「まんがーる!」、「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる」、「新世界より」。なんだよー、「まおゆう」総集編かよー、ってこれ見てもやっぱり世界観の詳しいところはイマイチ見えてこないんだけどね。まあながらで見てるこっちも悪いんだけど。「さくら荘…」、ええ子の恋は割と成就しない、というのが昨今の流行りなんすかね。

「PSYCHO…」、面白いんだけど、いきなりのバイオ・テロの展開にちょっと戸惑ってるかも。なんつーか、それはシビュラ・システムと直接関連する筋立てとは言えないんじゃないか、って気もしてね。それまでと全然違う色合いの風呂敷をいきなり広げ始めた感なしとしないかな。

水曜日もいい感じ。

にしても一気に見てると、近い時間帯で卒業式はあるわクリスマスは近いわ水着を買いに行く話はあるわ、季節感もへったくれもないね。

[web] Xは海外に出てへんの?

【画像】外人のガンダムシリーズの認識wwwww (やらおん)。ちょっと笑った。


2014-03-14 この日を編集

[PC] 詰め替えインク問題 その後

えらく早くインクが無くなった問題、純正に交換したのでこれでしばらくは平和かな、と思ってたらば、今日になって古本の納品書をプリントアウトしたら用紙にえらい勢いで黒いシミが。これ、詰め替えインクを使い始めたときから時々出てたんだけど、純正品に変えたとたんにシミが増えるってどういうことなんだい。

っかしいなあと思ってフタ開けて、カートリッジを外して、ついでにカートリッジを取り付けるプラ製のホルダーみたいなものも外してみたらあらびっくり。ホルダー部分の下っかわに大量にインクがこびりついている。ははーん、これが溢れて、それが紙を押さえる用途で設置されているプラのローラーにこびりつき、ローラーから紙に乗り移ってマックロクロスケみたいな染みを作っていたんだね。

詰め替え用のインクがカートリッジ内のインクを溜めておく部分(スポンジみたいなモンなんだと思う。バラしたこと無いから分からんけど)に上手く浸みわたらずに、カートリッジから洩れてしまったってことなんだろう。つまりは自分のインクの注入の手順が正しいそれよりもちょっと性急だった、って事なのかも知れない。あと、一回目はそれほどでもなかった、って事を考えると、本来そういう(後からインクを足すようなことは考えてない)作りになってないカートリッジ、こういうことすると、いろいろ劣化しちゃうってこともあるのかも。

マニュアルに書かれていることよりも、さらに慎重に(スローモーに)やってやることで、もうちょっとは事情は好転するかも、ってことなんだろうか。安価なブツと引き替えに、そういったもろもろの手間をかけることを良しとするか、割高な純正カートリッジを購入して、その後は何も気に病むことなく使い続けるか、の二択ってことか。答えはその時の気分と財布の状態で変わってきそうだなあ。

[F1] 開幕しました

おかしなノーズのマシンのオンパレード。あれはどうなんだろうねえ。エンジンや燃料関係のレギュレーションの変更などもあって、全体に遅くなるんじゃないか、なんて予想もあるようですがさてどうなるか。

往年のブラバムを連想させるウィリアムズ、なかなか好調らしいですが本番ではどうなんでしょう、あと、苦労は多いだろうが可夢偉も頑張って。

さて、今シーズンからカーナンバーはドライバーが希望するものを付けるようになったんだけど、F1ドライバーはなぜその数字を選んだのか: 固定ナンバー 4(F1通信)。マルシア、ケータハム編なんですが、その後に全レーサーのナンバーが番号順に並んでいるので把握しやすいかも。

カーナンバー31を誰も選んでないってのはどういうことやねん(どうもこうも無かろう)。

[Anime] 定期視聴番組

「凪のあすから」、「蛍火の冷徹」、「キルラキル」。「凪…」、ああそういえば、紡くんも海の人とのハーフだったんでしたっけか。なんかいろいろ、遠慮がないなあ。「蛍火…」はクラリスで半笑い。「キルラキル」は「グレンラガン」的熱さの無駄遣いは悪くない。勢い優先は後に引かない、って法則をぶち破るほどではなさそうなんだけども、その場の面白さ、ってところは文句なしですわ。


2015-03-14 この日を編集

[F1] 開幕しとるがな

オーストラリアGP。なんとまあマクラーレンの2台がQ1でノックアウトされるとは。これから改良していくしかないとは思うけど、さてどうなるか。スピリット時代の最高位は7位だっけ。今年の目標はそのあたりですかね。もちっと行けるのか、意外に低空飛行が続くのか、どっちなんでしょうな。

上の方はメルセデス、ウィリアムズ、フェラーリが並んでる。レッドブルもやや厳しいシーズンになるんでしょうかね。

[Anime] 定期視聴番組

「純潔のマリア」、「DOG DAYS''」、「暁のヨナ」、「クロスアンジュ」、「ガンダムビルドファイターズトライ」、「艦隊これくしょん」、「アルドノア・ゼロ」。日曜日、なにやら近代的な自我の発祥の瞬間的なものに立ち会った? みたいな話になってた「純潔…」。展開的には「お」と思ったんだけど、ベルナール役の櫻井孝宏さんの演技の熱量にマリア役の金元寿子さんの芝居のそれが足りてなかったかなあ、とは思った。がっつり教会サイドの人間であったベルナールを動揺させるほどのセリフの説得力が、マリアからは感じられなかったような気がしたんだよな。そこはちょっと惜しかったかも。しっぽアニメはまだキャラが増えるのね(^^;。

「ヨナ」は海賊編も終わってお話をまとめる方向に。姫、ついに人を殺めてしまいましたなあ。んでもって天才少年くんが最後の四龍、ってことになるんすかね。「クロスアンジュ」はまあある意味マイペース。タスクくんはやっぱフェードアウト要員? あとエンブリヲさんは結局パプティマス様みたいな人なのかしら。向こうよりはかなりレディファースト感は薄めだけど。

水曜日、「ビルドファイターズ」はユウマくんメインの回、つか完全に勇者シリーズリスペクト、みたいな。トライオン3、ZZなんすね。「艦これ」はミッドウェイ海戦に続く的な? 「利根」の偵察機が定刻通りに発進できた、みたいな歴史改変でお話を作ってくるんすかね。「アルドノア…」はこれ、どう転んでも苦い方向でお話閉じそうだよねえ(^^;。


2016-03-14 この日を編集

[Day][News] 緯度じゃなくて囲碁だった

ここのところ話題になってるGoogleの囲碁ソフト、AlphaGO対トップレベル棋士、李九段の対局、最初にAlphaGOが3連勝した時点でAIのパターン認識みたいなものが人間のそれとは全く違うものなのかな、なんて感じてそちらはそちらで興味深かったんだけど、4戦目、李九段が勝利(asahi.com)というニュースを聞き、それが李九段の方が、なんだろう、一種の奇策に出たときにそれをAI側が奇策と認識してそのための対応に遅れが生じたことが敗因になった、ってあたりになんとも言えんSFっぽさを感じてしまった。なんだろね、「コバヤシマル・テスト」をただ一人クリアしたジェイムズ・T・カーク的な何らかの意表を突く作戦(件のテストはテストのルール自体の盲点を突いたんでしたっけか)みたいなものを李九段が持ち込んできたって事なんだろうか。

なんというか、AIの可能性云々以上に、AIの可能性をふまえ(その能力の高さもしっかり認識した上で)、圧倒的に不利な状況にとんちで立ち向かう人間、という図式に例えようもない魅力を感じてしまったんだけど実際にはどうだったんだろう。単純な勝ち負け以上に、なんかいろいろ面白いネタが転がっていそうですねw。


2018-03-14 この日を編集

[Day] 申告したったった

画像の説明おおむねの数字は先週末に出てたんだけど、家売った分をどうするか、ってところでちょっと逡巡してて、気がついたら14日だよ。と言うことで必要な書類(今年からマイナンバーの記入とそれが正しいよ、って証拠を同封しないといけなくなったのね。面倒くさいなあ)揃えて申告会場に持ち込み。書類は特に問題もなく受領してもらったんで、あとはハーバー方面を散歩。もう冬装備じゃ汗かく季節だねえ。

いつものように立ち飲みでプハーして、それから湊川公園でひと休み。鳩さんって目ぇ赤いのね(^^;。

あとなんか久々にがっつりポケGOやったような気がする。アクティブなプレイヤーからはレベルで10ぐらいおくれを取っちゃっているからね。

画像の説明せっかくなのでもう一枚。なんちゃってフィッシュアイ、結構気に入ってます(^o^)


2019-03-14 この日を編集

[Day] 今日もお見舞い

画像の説明そういや肝心の病院の写真上げてなかったな。こんなところにお世話になってます。今日は休んでも良かったんだけど、カミさんから「Tシャツ何枚か持ってきて」って要請もあったし、2月分の入院費も払わなくちゃいけないし、ってことで連日出勤。

ちょうどリハビリの時間帯に入ったみたいでベッドは空、先に着いてた従姉妹殿とデイルームで小一時間雑談。まあ話題はやっぱりちょっと前の、シャントを再作成するかどうかの選択をさせられた上に亡くなってしまった方の事件がメインかな。

病室に戻ってみるとかみさんもリハビリから帰ってきてて、こっちの顔見るなり「あ、薄情者」って。だからそれはオレのせいじゃないって(^^;。その他ちょっと雑談してんじゃまた、と。多分次は土曜日に邪魔しますね。


2020-03-14 この日を編集

[Books] ゲームの王国

ゲームの王国 上(小川哲/著) ゲームの王国 下(小川哲/著) 小川哲 著
カバーデザイン 川名潤
ハヤカワ文庫JA
ISBN978-4-15-031405-7 \840(税別)
ISBN978-4-15-031406-4 \840(税別)

史実を追いながら不穏さが浸蝕してくる

第2次大戦後、激動の時代を迎えたカンボジアに異能を授けられた二人の子供がいた。一人は相手の嘘を見抜く力に長けた少女ソリヤ、もう一人はたぐいまれな認識能力を持った少年ムイタック。独立から革命、そしてクメール・ルージュによる大虐殺と続く歴史の中で、二人と彼らにまつわる人々の物語が時に混じり合い、時に並行しながら進んでいく…。

念のためWikipedia先生にカンボジアの歴史を教えてもらったんだけど、ほぼ本書で描写されているような流れになっている。自分の記憶にあるのは、長かった戦争が終わったばかりだというのに隣国であるカンボジアにベトナムが侵攻した、ってニュースあたりか。せっかく戦争終わったのになんでまた戦争すんだろう、って思ったことと、やたら「シアヌーク殿下」って名前が出てきてた、ってあたりか。ちなみにシアヌーク、というのは旧宗主国であるフランス語読みだと h を発音しないからで、正しくはシハヌーク、ってのが近いようですね(Wikipediaで教えてもらった)。そのあとクメール・ルージュの大虐殺の報道を知って恐怖した、あたりか。

んでその辺の実際の歴史の流れ、本書はかなり正確になぞっている。なので出だしはSFと言うよりも、そうだな、船戸与一もかくや、と思えるような暑く、じっとりとした冒険小説の趣。なんだけどそこからの展開は、なんと言うんだろう、SF的不穏さが徐々に増していき、最後は本書のタイトルでもある「ゲーム」にまつわる展望が語られる、みたいな。全体としてはきわめてゆったりとした流れながら、非常に濃密な展開をとても平易な語り口で語られていく物語の展開は、全く退屈しない。そこそこ長いお話なんだがたいしたページターナーっぷりだと思う。

ソリヤとムイタック以外の登場人物たちもたいそう魅力的。普通の人間とSF的な異能の主が渾然一体、先にも書いたように徐々に増していくSF的な不穏さ、未来への展望のようなものに関わり合いながらお話は展開していく。魅力的なキャラが沢山いるんですが、それを明かしちゃうのはもったいないからここは自重しますけど。

最悪の革命政権によって一度は暗黒状態に陥ってしまったカンボジアで、その暴虐の嵐から如何に逃れ、その状況に対するカウンターとなろうとする人々の苦闘に、SF的な仕掛けが徐々に大きな影響を与えていって、最終的に辿り着くところは…ってあたりは是非自分で読んでいって味わって欲しい。「王国」とは何を指すのか、誰が「王国」を造り、運営し、どこへ目指すのか、ってあたりには様々な解釈も成り立つだろう。

そのうえで、これはほとんど言いがかりというか、そこに著者の目的は無いであろう事に対して文句を一つ付けるのだけれど、先に書いたようにフナドで始まった(ような気がする)物語の最後にもフナドてきな決着も付けて欲しかったような気がしている。舟渡作品のテーマって言うのは、虐げられた者たちに対する熱い共感、のようなものであると思うんだけど、そこを最後にもう一度、何らかの形でけりを付けて欲しかったような気がするんだな。もちろんSFとしてこれは間違いの無い終わり方であると思うんだけど、序盤であれだけ酷い目に遭ってしまった市井の人々への、ちょっぴりでも良いから共感を分けて欲しかったかもな、って気はしてるんですね。勝手な思いだけど、そこだけちょっと残念だったかも。

んでも読み応えはたっぷりでした。素晴らしい作品だと思います。

★★★★


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