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ジェフリー・ディーヴァー 著/池田真紀子 訳
装画 水戸鉄也
装丁 関口聖司
文春文庫
ISBN978-4-16-770568-8 \800(税別)
ISBN978-4-16-770569-5 \743(税別)
最初の犠牲者は音楽学校の女生徒だった。脱出マジックを知る者であればおなじみのシチュエーションに固縛された彼女。だが彼女には脱出のためのトリックが何も用意されてはいなかった。異常を聞いた警官たちの行動は迅速で、殺人現場で目撃された犯人は早晩逮捕されると思われたのだが、密室に追い込まれたと思われた犯人は、忽然とその姿を消していたのだった。あまりに不可解な犯罪を解決するため、協力を依頼されたライムとサックスは、捜査を進めるうちに、今回の事件の主犯にはかなり豊富なマジシャンとしての素養があることを察知するのだが…。
いりゅーじょん!! ですよ。ああ、久しぶりに「イリュージョン刑事」見たくなった、ってwebで見れるんかい、わはは…って全然関係ない話だった、すいません。
さてさて、リンカーン・ライムものの第5弾。今回のお相手は極めて高い技術を持ったマジシャン。ミスディレクションや思い込み、余分な警戒心などを最大限に利用することで相手にイリュージョンを見せることを生業とする人物が、その技術を惜しみなく犯罪に注ぎ込んだらどうなるか、それに対して証拠とそこから導き出される論理で知的な戦いを繰り広げるライムは、いったいどんな手段で対抗するのか、というお話。"Twist"を売りにするディーヴァー故に、読んでるこちらはあらゆる登場人物とお話の中で起きる物事に、「おいおい今のは言ったとおりの意味なのかい?」と疑いの眼を向け、それでも予想しないところでぺろりと捻りを決められておっとっと、と焦ってしまう。その捻りがもたらす「おっとっと」感の連続はまあ、楽しい。ただ、相手がディーヴァーなので読者側もそれなりの心構えで立ち向かっているわけで、そこの所の書き手と読み手のせめぎ合いに楽しさを見いだせたら、その作品は成功だろうと思うんだけれど、そこらが残念ながら今一歩。ネタバレにならないように書くのが難しいので、非常に大ざっぱに書くならば、こちらがこう捻ってくるな、と予想していたものを覆されたのはいいけれど、その覆し方はありなのかい、と。確かにそれはさすがに予想してなかったけど、そいつはいくら何でも仁義にもとる捻り方なんじゃないのかい、って話だな。
読んでるうちはおもしろいけれど、捻り優先で組み立てられたお話は少々説得力の部分で足りないところがあると思う。基本的に手の内を見せない、あるいは見せている手の内が本当なのかどうなのかがわからない魔術師(と書いてイリュージョニストと読む)という敵キャラ、魅力的ではあるんだけれどある意味何でもありのキャラとも言えるわけで、そこに上手い縛りを作れなかったあたりは少々惜しいか。結果的に出来の悪い推理小説の典型とも言える、最後に名探偵が長々と不可能犯罪のトリックの種明かしが開陳されちゃう展開になってしまい、ライムが自分の持てる知力を総動員して、魔術師の隙を突くような展開になってくれていないのが少々残念なのだった。
もちろんそうは言っても凡百のキオスク・ノベルズあたりが束になってもかなわないくらい面白い本ではあるのだけれど、シリーズが続くに従って、"ためにする捻り"みたいなシチュエーションが増えてきたような気もするな。ディーヴァーには「ああ、そういうことだったのか、やられたー」ってな気分に浸らせて欲しいと思ってるんで、そういう意味では少々物足りなかったかも。
個人的にはディーヴァーって、ライムものじゃない方にこそ、面白いものがあるような気がしてるんですけどね。
★★★☆
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