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大森望・日下三蔵 編
カバーディレクション&デザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
創元SF文庫
ISBN978-4-488-73402-2 \1100(税別)
2008年の日本SFの到達点を集成したアンソロジー。コミック1編を含む15編収録。
前巻から半年ほどしか間があいていないタイミングでの刊行になるんだけれど、これはむしろ前巻の方がややイリーガル。実際には本書の刊行タイミングの方が、本シリーズの正式なリリース時期って事になるのだそうで、大森望氏のあとがきにも曰く、梅雨時には≪年刊日本SF傑作選≫のことを思い出してください。
ってことなので、「あーなんかジメジメとうっとーしい季節になってきたなー」と思い始めたら、鬱陶しさと共に楽しみも一つ生まれるということになるんだね。
ということで一言コメント、いくど。
かなり蘊蓄全開のジャパニーズ数学SF、なんだけどそこで積み重ねられていく数々のテクニカルタームたちが、実は極めてオーソドックスな、時間SFを成立させるためのものだった、ってあたりで、それまでの「よく分からねえよぉぉ」感はさっぱり解消。数学音痴でもちゃんとニヤリと出来るオチが待っとるよ。
なんでラストで「ARIA」を連想してしまったんだろう。かなり魅力的なビッグ・ブラザーに管理された社会に風穴を開けに来た存在とは、みたいなツカミはオッケーなれど、そこからの展開にややこちらがついていけなかった。キイ・ワードである「集合的無意識」をうまくイメージできなかったのが敗因っぽいな。これは「異形コレクション」にて既読。
フランケンシュタインの怪物の物語を扱った重厚な力作。長すぎるんじゃないかともちょっぴり思うけど、メアリ・シェリーが生み出したフランケンシュタインの怪物の物語と、ボリス・カーロフが演じたことで有名になったビジュアル作品のフランケンシュタイン、それからもう一つ、おそらくこれから我々が目にすることになるかも知れないフランケンシュタインの怪物のストーリーが巧妙にシンクロしながら展開する。正直読みづらい作品で、時々文字を追うのにうんざりもする、が、それでも今回のアンソロジーの中で、一番ストーリーを作っていこうとする力、みたいなものが感じられた。
「天体の回転について」で既読。なので感想もそちらを乞御参照。改めて読んだわけですが、感想が大きく変ることはなかったので大丈夫(何が)。
選者も「SFか?」って言ってるぐらいSFなのか感満点な作品、なれど妙に心に残る。無理やりSFっぽく説明するなら、土着の何かと人間との関わりを、静かに問うていくようなお話と言えるか。かなり好き。
日常系のちょっと不思議で、微妙に怖いお話。どちらかというとショートショートになるんだが、そちらのお約束をしっかりと踏まえて作られた、ある意味SF入門にもってこいの一作。イメージが想起しやすい作りになっているのがとても良いね。
虚と実の境界線が実に曖昧、かつ作者の掌上のさじ加減一つで振り回されるタイプの疑似エッセイでなかなか楽しい。タイトルにもなっている「分数アパート」の発想が素晴らしくSFだ。
短歌が紡ぐセンス・オブ・ワンダー。これで単行本一冊埋めたら、それはそれで筒井康隆になってしまったりするんだろうか。「眠り課」って言葉、確かにSFっぽい匂いがするよな(w。
星新一をテーマにした著作の取材の中で出会った少し不思議なエピソード。ノンフィクションなのか、全てが幻視の産んだものだったのか、いくばくかの真実といくばくかの幻想の混合物なのか、真相は作者以外には知り得ない、あったかも知れない星新一秘話。
今回のアンソロジーのコミックサイドの収録作品。申し訳ないがあんまりピンと来なかったのは、あっしが講談社系の「線」があんまり好きじゃないからなのかな。
内藤泰弘氏のイラスト込みでの収録。アイデアとシチュエーションと勢いのみで突っ走る、ある意味ライトノベル的エンタティンメントと言えるだろうか。その勢いが余りに気持ちいいんで、ニヤニヤしながら読んでいけた。ヒロイン「姫」はまあ、くぎゅなんだろうね(^^;)。
オジサンSF読み的にはなんだかホッとする、極めてオーソドックスにまとめられた短篇。関西テイストも加味されてるんで読み心地の良さは2割増し。オーソドックスさがとても嬉しい。
クラーク追悼企画で発表された短篇。クラーク作品の中でも最上級に有名なあの作品の、あの連中が登場するんだが、ノリ自体はむしろベンフォードあたりの作品がもつ匂いを微妙に感じたりもして。
ごめん、わからん。
「意識が命令を発する以前に、脳はその準備に入っている」って言うテーマが根幹にあったSFを別に読んだ憶えがあったんだが、あれは何だったっけか…。タイトル、キーパーソンとなる人物の名前が「アクロイド」ってあたりで狙っているところが奈辺にあるか、何となく見えてくるような気もするし、そこにもう一捻りしてほしかったような恨みも無しとはしない。ある意味分りやすいが故に「なぜこれを?」と著者に聞きたくなってしまうところもあるのだが、それは今となってはかなわぬ望み。全くもって残念な話ではある。
基本的に今回も力作揃いなんだが、このアンソロジーで日本SFがどういうものなのか、を視野に収めようとすると、そこの所にかなり高めのハードルができてしまっているんじゃないだろうか、ってな心配も同時に湧いてきてしまうのも確かなところで。若い読者の皆さんにとって、ここでチョイスされた作品群が日本SFの先端だ、といわれたときに、その先端ぶりをちゃんと読み取ることができるんだろうか、みたいな心配がちょっとこちらに引っかかったままになってしまうのだな。
なんていうかこう、入門編といえるジャンルでのSFの佳品が少なくなってきているんじゃないかという気がするな。いきなり円城塔にぶち当たった年若い読者さんは大丈夫なんだろうか? そこらを補助してくれる意味でライトノベルがあるんだろうか? このアンソロジー自体は素晴らしいものであると思うんだが、これが直接、日本SFの地平をどどんと拡張してくれるような力があるか、と考えるとどうもそうは思えないところもあって、何かと複雑な気分になってしまうんだよな。
★★★★
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