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仁木稔 著
カバーイラスト 佐伯経多&新間大悟
カバーデザイン 岩郷重力
ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
ISBN978-4-15-208588-7 \1900(税別)
22世紀に発生したキルケー・ウイルスに端を発する大戦争を経て、ほとんどの科学技術が伝説となってしまい、20世紀初頭の文明レベルまで後退した27世紀の世界。ラテンアメリカは科学技術を継承する独立都市、かつてのアングロサクソン世界からの移民達、細菌戦争の影響で変異体となってしまった人々によって混沌としていた。そんな世界を平定すべく、独立都市エスペランサの統治者、アンヘルはレコンキスタ軍総統を名乗り、かつて世界を守護していた12の知性機械の一つ、サンティアゴの助けを借りて南米方面に侵攻を開始する。かたわらに不老長生のメトセラの少年、ホアキンを守護者(グアルディア)として従えて…
著者、仁木稔氏のこれが最初の小説作品、にしてこのボリューム。デビュー作には作家の全てが込められている、とは良く言われるけれど、その伝で行くと本作から伝わってくるのは異形とならざるを得ない存在となってしまったものたちへの限りない共感、といえるだろうか。著者による「あとがき」で本作が完成するに至るまでの過程が語られていて、そちらもなかなか楽しかった。それでこのお話が作れちゃう、ってのはすげえことだよなあ、と思ったことです。とはいえ…
ラテンアメリカ世界を舞台にした血と硝煙、さらにはSF的なフリークス的な者どもの匂いに満ちあふれた、言ってみれば「山猫の夏」とか「神の最後の土地」的な、むせかえるような暴力の世界を予想して読みはじめたんだけど、そう言うものとはちょっと違っていた。んまあ舞台は中南米なのだけれど、ここにはSF的に一度大きな力がふるわれている、と言う事情もあるせいか、汗ばむような世界観はあまり伝わって来ず、スペイン語が醸し出す語感や同じ意味合いを英語で発音したときのニュアンスの違い、みたいな物を武器にして語られるのは、なんだろなー、やってるのはすんげーアグレッシブで暴力的な「メトセラの子ら」、みたいな?
非常に魅力的な世界観、その中で登場するキャラクタたちの「立ち」具合、共に文句はないんだけど、どういう訳だか読後感にもう一つ残るものがない、と言う感じ。なんというか、「世界」を描きたかったのか、「人々」を描きたかったのか、どっちなの? と言う思いが最後まで拭えないまま、この長大なお話はラストまで行ってしまった感じがある。で、最終的に落ち着いたのは「愛」だ、ではちょっと納得できないんだよな、そう言うのは「ヤマト」で散々イヤな思いをしたのでね(^^;。
それなりのボリュームのある作品だけど、引っ張る力はあると思う。ただ自分の好みからしたらセンチメンタル要素の描写がしばしばややくどくて、そこで瞬間的に(読み進める)引っぱり力が切れかかっちゃう時があったように感じた。読み終えるまでに3日かかったんですけど、それはつまり読み始まったら離さない、までの力は無かった、って事なのかも知れないな。力作だとは思うのですが…。
★★★
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