ばむばんか惰隠洞

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2004-07-27 [長年日記]

[Oldbooks] 軽石庵脱出計画

とりあえず重い腰を上げて、古本屋のサイト、ギガからWADAXへのネームサーバ書き換え儀式を挙行。しばらく様子見中。一応旧鯖からも買い物はできますが、できれば一日二日、様子を見ておいてくださるととても嬉しいかも。

[News] 訃報

中島らも氏(asahi.com)。カミさんと思わず、「この死に方しかないわな、らもさんは」で意見が一致してしまったというのは、故人に対して少々酷な反応かなあと思いつつ。アル中前後のエッセイは面白いと思った。お芝居は良くわからない。小説はあんまり面白くなかった。朝日新聞の人生相談は、あれはあれで面白かったけど、朝日に妙な自信を持たせて、その後箸にも棒にもかからん人生相談が紙面にしぶとく生き残る結果になっちゃってるのはなんだかな、と。まあなんだ、これ以上死ぬことはないんで、思う存分あの世で酒呑んでくださいってことで。

[Books] 揺籃の星

本書カバー ジェイムズ・P・ホーガン 著/内田昌之 訳
カバーイラスト 加藤直之
カバーデザイン 矢島高光
創元SF文庫
ISBN4-488-66323-0 \720
ISBN4-488-66324-9 \840

地球を離れ、土星の衛星に自給自足のコロニー群を建設し、地球とは違う価値体系の許で生活するクロニア人たち。彼らが進んだ科学技術と一種の理想郷のような文化を築き上げ、苦しいながらも充実した世界を作りつつある一方で、地球は宇宙への情熱を失い、ひたすら目先の安寧のみを求める怠惰な日々に浸っていた。そんなとき、クロニアの科学者たちから驚くべき知らせがもたらされる。数億年の間にわたって安定した状態を保っていると考えられてきた太陽系が、実はそれほど安定した存在ではなかった、というもの。彼らがその証拠として上げたのは、さまざまなデータから推測される、金星の異常な「若さ」だった。いったんは騒然とする地球の科学陣だが、あまりに大胆なその仮説と、科学者たちの間に染みついた既得権益への保身の態度は、クロニア人たちのメッセージに煮え切らない反応しか返さない。そんな折、木星に一大異変が起こる。木星の一部が小惑星となって分離し、地球とすれ違う起動に乗っているというのだ。地球側の科学者の大部分は、それもまたたいしたことではないと、クロニアからの警告を重く見ない態度をとり続けるのだが…

なんですな、「重力に魂を引かれた人々」のすむ地球と、性善説の塊みたいな人々の集まりになったコロニー連合にわかれた未来社会を襲う大天文パニック小説、つー感じで、微妙にガンダムっぽい社会での「悪魔のハンマー」みたいなお話になっている。私、初期作品限定とはいえある程度ホーガン贔屓なところはあって、彼のたたみかけていくSFガジェットの面白さとハッタリ、それから脳天気とも言える人類の未来への明るいヴィジョンみたいな物は大好きなんで、ついついそういうのを期待して彼のお話を読むのだけれど、残念ながらそっち方面の快感を、思う存分味あわせてはいただけなかった恨みは残るかな。

ホーガンは一時非SFな、ポリティカル・サスペンスぽい作品も書いていて(でもSF文庫に収まるんだけど。『ミラー・メイズ』のどこがSFやっちゅーねん)、その修行の成果があったのかどうか知らないが、ハードSF系の作家にしては「物語」を上手く造れる方の人だよなあと思う。本作の後半は、なんだかんだあって(この辺はネタバレになってもいかんのでぼかしときますが)地球全土に大パニックが発生し、その中で生き残りを賭けて戦う主人公以下一握りの苦闘が延々続くわけだけど、この辺の描写は上手い。私、思わず地図帳片手に読みましたよ(w。お話として面白いのは確かで、ちょっと途中でページを措くのがもったいなくなってしまう。実際一気読みになってしまった。でもね。

これはニーヴンとパーネルがもっと凄いスケールでやってるんだよなあ。話の作りだけなら連中(というか主にパーネル)の方に軍配が上がるよなあ、という感じも同時に持ってしまった。ホーガンが気合入れるべきところはそこじゃなく、嘘だろうがハッタリだろうが、読んでるこっちを「うはは、そう来たか」とニヤニヤさせ、最後には嘘でも良いから「な、なんだってー」と仰天させる、SF的ハッタリかましにあると思うんだけど。そこが上手かったから、「星を継ぐもの」は私の中で、オールタイムベストSFの上位をキープしている訳なんですけれども。

本作で言うなら序盤から中盤にかけて、クロニア人たちがもたらした情報を追試していく(地球側の)主人公たち、ここにまるで「妖星ゴラス」における速男君発言(ええ、無茶なたとえなのはわかってますとも)のごとき、外部からのコペルニクス的思考の転回の一押しが加えられて、やがては「地球は(以下自粛)だー!」という流れに至る、なんてあたりはいかにもホーガンで、読んでるこっちは思わず口元がほころんじゃったりするのに、その楽しみを最後に用意してくれてないってのはなあ。何? これも三部作? しかも第三作はまだ書かれてもいない? あうう(^^;)。

というわけでこれ一作で判断しちゃあいかんのかなあ、というところではあるのだけど、んでもやっぱりホーガンらしさを味わうには、ちょいとパワー不足だったかなあという感じ。抜群に面白い。でもホーガンが書かなくても、というかホーガンが書くならこの落とし前の付け方はいかんでしょー、と、ね。

最後に一言付け加えますが。

オビやカバー裏の惹句でも書かれてるとおり、この作品のベースをなしているのは「ヴェリコフスキー正しい!」というものだ。ホーガンが真剣にヴェリコフスキーが正しいと思っているのかどうかは知らんが、一世を風靡した「衝突する宇宙」、あれがやっぱり正しかったとしたら宇宙ってのはどういうんだろう、ってのをホーガンが全力を挙げて考え抜いて書いているわけ。だからといってホーガンの働きでいきなりヴェリコフスキーが実は正しかった、なんてことにはならないわけで、そこを鵜呑みにしないように。って理屈で物を考えるのが大の苦手の私だって、あちこちで「おいそれはないやろー」と思ってしまうところもあるので、まあ大丈夫だろうとは思うんだけど。SF苦手な人は、念のため巻末の金子隆一さんの解説を先に読んでおく方がよいかも知れませぬ。

あー、クロニア人、という妙にガニメアン臭い人々のうさんくささについても書きたかったんだけど、長くなりすぎた。続編も出るんだろうからこっちはその時にでも。でもまあ私の予想してるような展開になるんじゃないかな、と密かに思ってますけど。ええ。

(★★★☆)


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