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野尻抱介 著
カバーイラスト 撫荒武吉
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫JA
ISBN4-15-030746-6 \640(税別)
零細運送屋、ミリガン商会の酔いどれのオーナー、ロイド、腕は立つし美人だが、運悪くいまだにロイドの下で働く宇宙船パイロットのマージ、そしてヴェイス・コロニーの騒動の後、ついてきた新米航宙誌のメイを乗せたおんぼろ輸送船、アルフェッカは今、惑星フェイダーリンクを取り巻くガス状のリングの中にその身を潜めていた。前の仕事で麻薬組織の裏をかくような真似をしたために追われる身となりここに隠れる羽目になったのだ。目論見はうまく行くかに見えたが、ちょっとしたミスからアルフェッカの船内は電子装置がダウン。あわやと言うところで三人を救ってくれたのは、このガスのリング内にコロニーを建設して暮らす"ハイドラー"と呼ばれる人々だった。九死に一生を得たアルフェッカのクルー。だがコロニーの人々にも今、大きな存亡の危機がやってこようとしていたのだった…。
同名のゲーム、「クレギオン」の設定をもとにした宇宙SFシリーズの第二弾。実は前作、「ヴェイスの盲点」も読んだのだけど、特に感想書く気も起きなくて放置してたもの。第二巻のこれも、買うだけかって放ったらかしてたんだけど、病院での待合い時間の暇つぶしにと思って読み始めたら、これが意外に面白かったのだった。
特に目を引く新機軸、みたいなものは別にない。惑星を取り巻くガス状のリング、同じくガス惑星の描写、ガス惑星をミニ太陽化しようというアイデア、どれもハードSFとしては比較的オーソドックスなもの。ただ、それらが非常に収まりよく配置されていて、気軽に楽しめるSF作品になっている。そこがかなりいい。私、野尻抱介さんの本って「ピニェルの振り子」と「ヴェイスの盲点」、んでこの本しか現時点では読んでいないのだけど、その中では本書はかなり良い。ハードSFなんだけどとても取っつきやすく、ビジュアルな面白さに満ち、さらに微妙な人間ドラマ、しかもそれが私の大好きなボーイ・ミーツ・ガールものになっているというあたりで、かなり点数甘くなっちゃうのであった。すばらしく良い、というのではないけれども、なんだかちょっといいな、と思わせてくれる佳品、という感じで。放ったらかしにしてたけど、続きも読んだ方が楽しいのかな、などとちょっと思ってしまったです。
以下余談。ちょっと前、adramineさんがはてなで、とあるSFの新人賞の選考委員に推された野尻氏のコメントを話題にされていたけれど、その野尻氏本人が、少なくともこの作品では、結構人情の機微みたいなものをお話の重要なポイントに据えてたりするんですよね。言うまでもなく、ボーイ・ミーツ・ガールな部分のそれ。そこはSFでしか描けないもの
では全然無いのだけれども、「お話」を考えた時にはやはり無視できない部分であるわけで。なんというか、野尻ボードでの氏の発言というのは、今、新人賞に応募してくる人々に対して、それぐらいの矜持は持ってくれよ、というメッセージに過ぎなかったのではないかいな、と言う気はしました。仮にも「作家」となった人間ならともかく、これから「作家」それも「SF作家」を目指そうというのなら、それぐらいとんがった方向性を見せてくれなきゃ、選者の目には留まらないよ、って事が言いたかったのじゃないのかな、などと。いや、もとよりご本心はワシらにはわかりゃしませんが。
(★★★)
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