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ロバート・B・パーカー 著/菊池光 訳
カバーフォーマット 辰巳四郎
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
カバー写真 ©KOICHIRO SHIMAUCHI/amana images
ハヤカワ・ミステリ文庫
ISBN4-15-075683-X \800(税別)
それは、あってはならないけれども残念ながらありふれた、といえる出来事だった。黒人のチンピラによる白人の女子大生のレイプ殺人事件。前科のある容疑者、目撃者の証言も揃っていたこの事件は、大した波乱もなく容疑者が有罪、収監され一応の終結を見たかに思えたのだが、容疑者を弁護した若手弁護士には今ひとつ納得がいかないままだった。そして、その納得のいかなさはなぜか、検察側に立ったやり手弁護士の目にも留まる事になる。真実は別なところにあるのではないか…。疑問を収める事のできないかつての被告側弁護人からの依頼を受けて、スペンサーは2年近く前の事件の再調査を行う事になった。だが、さほど重大とも見えなかったこの事件について、スペンサーの前に立ちはだかる障害は少々予想を超えているものだった。そしてさらに、スペンサーやホークに匹敵すると思われる、極めて危険な暗殺者によって、スペンサーは瀕死の重傷を負わされる事になる………。
「スペンサー」シリーズ、文庫版最新刊。粗筋は上記の通りで、これだけ読むとなんだか緊迫したノリかも、と思うかも知れませんけどそこはスペンサー、基本はやっぱりまったり無駄口系。今回はなぜかシリーズで顔を出した様々なキャラも続々登場し、クランシーの小説が最近、ライアン一家総出演、の様相を呈しているのと同じようなノリになっちゃってるのと同じような印象も持ってしまった。まあスペンサーだから、やっぱり事件そっちのけで恋人、スーザンとの恋愛談義が延々展開したり、今回はこれまた事件をそっちのけに、重傷を負ったスペンサーの、約1年にわたるリハビリの描写が延々続いたりするわけだけど。だいたい普通、1年経ったら前の事件なんてとっくにうやむやになってしまいそうなもんだが、そうはならないあたりも実にスペンサー。
今回のキモは、事件とはそっちのけで語られる(まあそのこと自体はいつも通りのことなんだけど)、スーザンの子供を持ちたい、という願望に対するディスカッション。ここにおなじみ、ポールとの会話なんかも加わって、(それまで子宝に恵まれなかった)中高年者が育児に触れる事ってどうなのよ、ってあたりで語られる部分と、あとは重傷を負ったスペンサーのリハビリ。ええもう、メインであるべき事件は、いつものようにそれほど重要ではないエレメントなのだよね。「解説」でミステリ書評家の杉江松恋氏(すいません、どういう人か存じません)がこのシリーズを、「喜劇小説」と位置づけておられたけど、いやまことにもってその通り。つか今まで誰もそういうふうに取らなかったんだろうね、って感じもある。ミステリでありながらミステリに重きを置かず、ひたすらハードボイルドの様式美をなぞってるようで、実は真剣に古典のスタイルをなぞる事にも妙な気恥ずかしさがつきまっとっちゃう、ってあたりのテレ隠し感覚、をうへへと笑いながら読むのが、このシリーズの楽しい楽しみ方なのかも知れないな。
それはそうとこれ、少なくとも日本語訳された本書に限りますが、シリーズ中屈指の問題作になるかも知れない一作でありますよ。
なんとあなた、スペンサーとホークが登場していながらですね、一度も「アン、ハ」が出てこないんですよこの作品。これがどのくらい大変な事かというと、神林長平作品に、一度も「フムン」が登場しないぐらい画期的な事だったりする訳なんですが。もしかして前作であまりに「アン、ハ」を連発して顰蹙買ったりしたんだろうか菊池さん、などといらん心配までしてしまった訳なんだけど。
(★★★)
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