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[間歇日記]世界Aの始末書より。すてき。拍手拍手。
クリフォード・D・シマック 著/林克己・他 訳
ハヤカワ文庫SF(SF205)
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はるか昔に、人間は地球から姿を消していた。かつては人間たちのもっとも近しい友であり僕であった犬族が、いまは地球における支配者の地位にある。発掘されたいくつかの人間たちの時代の書物から、犬たちは人間とは一体どんな生き物であったのかを改めて知ろうと試みるのだが…
商売モノに手を付けるシリーズ。人にはそれぞれ、きっちり読んでてしかるべきであるにもかかわらず、ほとんど、あるいは全く読んでない作家なり作品というのがあると思うけど、私にとってはシマックってそう言う作家の一人。多分「マストドニア」と「妖魔の棲む沼」ぐらいしか読んでないんじゃないだろうか。別に嫌いってわけでもないんだけれど、なぜか本屋さんでシマックの名前を見かけても手が伸びなかったってのは…
「スター・シマック」のせいです、とは心の中で思っても口には出さないでおこう。あ、指が出た。関あきら先生ごめんなさい。
余談長すぎ、さて本書。一言で言って静謐に満ちた連作集、と言えるだろうな。かつて地球を支配していた人間たちが姿を消し、人間の身近な友であった犬たちが実質的に地球を支配しているという未来。とはいえ人類は滅亡してしまったわけではなく、とある事情で姿を変え、某所で生き延びているらしい。人類によってちょっとした改良を加えられた犬族が現在ただいまの地球の支配者ではあるのだが、いろんな意味でその支配には少々不安もつきまとっている、そんな年代記の中で語られる、人類に対する考察。
タイトルは「都市」だがその実、本書の基本をなしているのは、いってみれば「スキゾ都市」な訳で、人が集まるところである「都市」をいったん切り捨てちゃったら人類の未来、どうなるんだろうってあたりにスペキュレーションがある、とは言えそうだ。現在ただいまのレベルで見てみると少々甘いかと思えるところも結構多いのだけれど、あちこちになかなか、捨てがたい考察も見えてそこはさすがにSFのマストアイテム的作家ではあるわいと感心させられる。多くの人類が消える先に対する考察なんかは、いまのSFでも形を変えて語られているテーマであると思えるし。
ま、その辺を別にしても、(いきなり分不相応な)知性を与えられ、それを伸ばしてきたワンちゃんたちの気持ちの揺らぎを楽しみながらお話を読んでいくっていうのもそれなりに楽しい。人間が追いやられたように、はるかな未来、ワンちゃんたちもまた××によって追いやられる存在であるのかも、って予感をそこはかとなく漂わせながらお話を締める構成もなかなかで、膝ぶっ叩いて大喜び、とは行かないけれどもこういうSFもありだよなあ、そう言えばこういうSF、最近見ないよなあ、なんて事もふと思ったりしたのでした。
(★★★)
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