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タニス・リー 著/井辻朱美 訳
カバーイラスト 久織ちまき
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011611-8 \860(税別)
シルヴァーとジェーンの悲しい恋物語。それはジェーン自身によって綴られ、地下出版物として密かに人々の噂の元として存在していた。孤児のための宗教施設に引き取られていたローレンが偶然その本を手にしたのは11歳の時。それから6年、17歳になったローレンは今も一人、シティのかそう出それなりにたくましく生きている。あの"本"を手放すこともなく。そんな彼女が驚くようなニュースがもたらされる。かつてエレクトロニック・メタルズ社によって産み出されたスペシャルクラスのアンドロイド達、それらが新興企業、META社によって再調整され、公開されるというのだ。かつてのシリーズに比べ、明らかにそれは人間には見えない風貌を持ったアンドロイド達。だがその一体は、明らかにかつてのシルヴァーだった。矢も楯もたまらず、ローレンは"彼ら"の発表の場へ向かうのだが……。
「銀色の恋人」、24年ぶりの続編。前作が私のようなオジサンには少々読み進めるのに努力を要する、どちらかというと辛い類の本であったのに対し、24年の月日が何かをもたらしたのか、久々の続編はオジサンでも実に楽しく読み進める本になっている。若くて夢見がちな乙女が一気に書き上げたのが前作だったとすれば、人生経験を積んで、酸いも甘いも噛み分けることが事が出来るようになったオトナの女が、念入りに構成して作り上げた物語が本書、と言えるだろうか。勢いに換わって技巧で読ませる小説になっている。
前作で、やや放り出し気味のままだったいくつかのネタも今回は丁寧に回収しつつ、基本的に一本道で進んでいたお話が、今回は念入りに何度も何度もひっくり返され、読んでるこちらがあちらこちらで驚かされる展開が待っているわけで、そこら辺を大歓迎。かつてのジェーンとの体験によって、もしかしたら一時的に"魂"のようなモノを持ったかも知れない人工生命体がふたたびアクティベートされたとき、それは果たして前の通り、人間のコントロール下に容易に収められる物であるのか、それは前の通り人間の従順な奉仕者たり得るのか、を隠し味に進む物語は、二転三転するストーリーの捻りの巧さもあり、基本は甘々ロマンスであるにもかかわらず、そういうのが苦手なオジサン本読みにも投げ出すことなくページをめくりたいというヒキを提供してくれるのだった。
愛を識り、自我を考えるようになった(のかもしれない)AIが何を求めるのか、その答えについては、やや浅いんじゃないかそれはと思わなくもないけれど、考えてみるとその先にあるのが必ずしもハッピーエンドとも言えないよな、と思えるエンディングなども含め、どうしてなかなか読み応えのある続編。オジサン、こちらの続編の方はかなり好き、と言える。達者な作家の老練なテクニックを堪能できますぞ。
ついでに。こういう展開ならこのあからさまな種風味のイラストも、まあありなんだろうなあ、と納得いたしましたです、ええ。
★★★☆
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