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ジェイン・アン・クレンツ 著/和爾桃子 訳
カバーイラスト 小菅久実
カバーデザイン 波戸恵
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011633-0 \940(税別)
"カーテン"として知られる時空異常によって見いだされた地球型惑星、セント・ヘレンズ。地球からの移民者たちを受け入れ始めた矢先、突如"カーテン"は閉じられ、セント・ヘレンズの入植者たちは地球との連絡を絶たれ、独自の進化を遂げざるを得なくなっていた。地球から持ち込んだ金属やプラスティック、シリコンなどがたちまち朽ちていき、高水準の科学文明が使えなくなった状態から文明を維持するために苦闘してきた人類は、この惑星で独自の進化を遂げていた。さまざまな業種に特化した超能力者と、その超能力を集中的に発揮させる触媒となる"プリズム"と呼ばれる能力者。そんな"プリズム"たちの中でも最高能力を持つ女性、アマリリスの元を訪れたクライアント、ルーカスが持ち込んだ案件とは……
つまり、二人が合体すると、いろんなところで(もちろん、うっふんあっはん込みで)最高級の能力を発揮するカップルの存在を、その存在自体には疑問が差し挟まれることが無く、でも文明のレベル自体は現在ただいまの我々が暮らしている世界のそれでとどめておいて、その中でちょいとサスペンス風味なラヴ・ストーリィを展開したいと思ったらどうするか。そりゃSF仕立てで行くしかないだろう、という話。SFをやりたかったのではなく、ラヴ・ストーリィに斬新な切り口を持ち込みたいと思ったら、SF仕立てにするのが良さそうだ、で出来たのが本書。なんだかんだで設定の詰めの甘さや、読んでる最中全く読んでるこちらが「SFを読んでる」感に浸れない恨みを感じまくってしまうのだが、基本的にこれらの問題の責任の根っこは、これを青いカバー背の文庫で出した早川書房にある、って気はする。
「SFではないのか?」といわれたら「いやそういうわけでは…」と思いつつ、「んじゃSFなの?」と問われたら、「んー、ワンダー成分が、ちょっと…」などと言い淀んでしまうような一冊で、これが"ハーレクイン・ロマンス"や"シルエット・デザイア"の中の一冊として出てたら、それなりにチャレンジングな一冊、みたいな評価も得られたかも知れないけれど、ハヤカワSFから出るとなると、いろいろケチを付けられてもしょうがないだろうなあとは思ってしまう。
著者のジェイン・アン・クレンツはいくつかのペンネームを使い分けて、ロマンス小説を量産している人気作家で、そちら方面ではかなりの人気作家らしい。小説としての造りのしっかりぶりはさすがの職人芸。美人でナイスバディなのだけれど、倫理観ガチガチのヒロインと、ちょいとイリーガルな出自から、上流っぽい階級ではやや異端っぷりが目立つワイルドなヒーローのろおまんす、なんてのは間違いなくそっち方面の小説の定番パターン。で、そこは過不足無く押さえていると思う。過不足はないが、読んでるこっちに全然ワンダーがやってこないってのが問題なんだと思うけど。
あと、訳もちょっと気になる。なんつーか、「格調」みたいな物が統一されてない感じ。上手く説明できないんだけど、「そのキャラはそこでそういう口調になるのかな」的な展開が結構あるのと、シチュエーション的(潜入捜査の真っ最中とか)にそれはないだろ的場面で、「金切り声」をあげるってのはどうなのよ、とか思った。
全体として、軽く読み飛ばす分にはそこそこ上等。深く考えたら負け、みたいなお話かな。
★★☆
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