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ディック・フランシス 著/北野寿美枝 訳
カバーデザイン 松昭教
カバー写真 ©Scott Barbour/Getty Images
ハヤカワ文庫HM
ISBN978-4-15-070741-5 \920(税別)
いつもと変わらぬ一日になると思っていた。天気予報は快晴を保証しているが、退役した海軍少将にして元義父であるチャールズの見立てが雨を予測していたぐらい。だが、空模様に波乱の兆しを認めたチャールズの予想は、別な方向で的中する。ビッグ・レースの開催されるこの日のチェルトナムには、三つの死がやって来たのだ。そのうちの二つが人間の死であり、さらにその片方の死体には、紛れもなく銃弾の痕が残されていたのだった…。
本作から「競馬シリーズ」を訳される事になった北野寿美枝さん、亡くなられた菊池光さんが残された膨大な作品群からくるプレッシャーは相当なものであったのではないかと思うが、まずは無難な引き継ぎであったと言えるのではなかろうか。会話と地の文をかなり大胆かつ不親切にぶった切ってくるのが菊池訳の魅力の一部であったような気がするんだが、そこまでの思い切りはさすがに出来なかったのかもしれず、そのあたりで微妙に切れ味が足りてない感じもなくはないが、それでも引き継ぎ第一作として充分に重責は果たしておられるとは思う。さすがにオーブンを"オヴン"とやるのは躊躇われたかも知れないけど、でもでも、
テイブル!!
いえい(w。前作の感想で「さようならテイブル」なんて書いたけど、うむ、少なくともテイブルは引き継がれた事をちょっぴり喜びたい。菊池訳とまるきり同じことをやる必要なんかはもとよりないと思うんだけど、でもちょっとしたところにこれまでの作品群に対する遊び心込みの敬意が見えたりすると、それだけでうれしくなってしまいますな。
さてお話の方は、このシリーズの読者ならおなじみ、隻腕(というかまあ、いまはオートメイル(違うよ)のお世話になってるんだけど)の調査員、シッド・ハレー四たびの登場ってことで、奥様を亡くされてしばらくお話が書けない状態であったフランシスにとって、文字通り(とは言え邦題のみに限った話ですが)「再起」のための心強いパートナーとして、選ばれたキャラクターであったのだろうな、とは思う。悪い言い方をすれば安全牌で様子見な南一局、ということにもなるのだろうけれど、そこはフランシス、手堅く行きながらも単純に安全牌を切っていくようなことはせず、ちゃんと今風な話題にもアンテナを張っていてくれているあたりがすごい。フランシスの作品でGoogleなんて単語を見ることになるとは思わなかった。展開的にはまあ、こちらが満足するレベルで自分の予想の正しさを確認させてもらった上でもう一捻り、が用意されているという構造で、まずは過不足のない出来、と言えるだろう。
原題"UNDER ORDERS"にあえて「再起」と付けたハヤカワさん、著者のもろもろの事情、それから翻訳者の事情をあわせて考慮した上でのタイトルと言うことになるのだろうと思うが、悪くない仕事であったと思う。一点文句を付けさせていただくならば、文庫版のカバーデザインがこれまでの「競馬シリーズ」のフォーマットに則っていないこと、だな。ハードカバーはシリーズのデザインを踏襲してたんだし、ここはいつも通りのデザインの方がうれしかったんだけど。気持ちはわからないこともないけど、変える必要があったのかな?
本屋で探す時に、つい見逃しちゃうんだよ、いきなりデザイン変えられると(^^;)
★★★
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