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ジャック・キャンベル 著/月岡小穂 訳
カバーイラスト 寺田克也
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011732-0 \860(税別)
全てが上手く行くと思えた矢先に降って湧いたようにイクシオン星系に出現したシンディックの大艦隊。その背後に見え隠れするのは正体不明の異星人の姿。進退窮まったアライアンス艦隊の指揮官ジョン・ギアリーは、激闘の末かろうじて脱出に成功したばかりのラコタ星系へふたたび舞い戻ることを決定する。連戦連勝の"ブラック・ジャック"ギアリーを信奉する艦隊クルーの大部分は、彼を信じて危険な敵の拠点への再突入に備えるが、一部の造反者や、これまで彼の支えとなってくれてきた同盟国の副大統領リオーネは彼の決定に危険なものを感じていた。
強大な艦隊を擁していたラコタ星系だが、今そこへ舞い戻ろうとしているギアリーの艦隊の追撃のため、ほとんどの艦隊は星系を離れており、残っているのは先の戦闘で損傷を受けた艦が大部分だろうと言う予想のもと、危険なトンボ返りに賭けるギアリー。だが彼の行く手を阻もうとする勢力は今や、シンディック、艦隊内の造反者、異星人、さらに正体不明のもう一つの勢力がその姿を現そうとしていた…。
シンプルに楽しめるスペース・オペラ・シリーズも第4作。長く続くお話ともなれば途中でダレ場ってのも必要になるわけで、本書はもしかしたらそういう位置づけに当る本なのかも。全体としては前半があらすじで述べたような展開から来る艦隊戦の描写、それが小休止したあとの後半は、クライマックスへのヒキを含めた、いろんな部分に対してのちょっとしたひっかきまぜが加えられるような流れ。絶望的な航行が一人の英雄的存在で、ちょっとずつ手持ちの札が良くなっていく状況下で、そうは行かないぜ、とばかりにこれまでの状況への邪魔が入ったり、これまで巧妙に姿を隠していた新たな障害が少しだけその存在をあらわにしてくる。残り二巻、そう簡単に決着はつかないぜ、スケールの大きい部分、割と小さな部分、どっちでも、ってな位置づけの本ってことになるかな。
公私ともに一時は良い感じになるかと思われたギアリーとリオーネの関係に、かなり修復不可能っぽいしこりが生まれたり、それにともなって全幅の信頼の置ける艦長だったデシャーニとの関係にも、前巻ぐらいから微妙な温度差が出てきたりして、豪快なスペースオペラを期待して本シリーズを読んでる人の中には、そういう部分でちょっと気に入らないところが増えていると言えるのかも知れない。本書の「訳者あとがき」でもリオーネの不人気っぷりはかなりのものらしく、向うに2ちゃんがあって、そこに「『彷徨える艦隊』で消えて欲しいキャラ」ってスレが立ったら、凄い勢いで「リオーネ」って書き込まれてもおかしくないような勢いのようだ(w。
長いお話には(ラストの盛り上がりのためにも)ダレ場が絶対必要で、ダレ場を演出するためには、読んでるこちらがもう、どうしようもないくらいイライラ、ムカムカする登場人物やストーリー的展開が用意されていて、しかもここのところのイライラやムカつきが大きいほど、その後に待っている大団円の痛快感は増幅されると思うので、こういうイライラはむしろ大歓迎(あ、でもやっぱ読んでる時にはしんどいんだけどね)。ここをちゃんと書き込めてるってことは本シリーズの著者ジャック・キャンベル、かなりできる人ってことになるんじゃないかと思うんだがさてどうでしょう。割と順風に見せて陰でいろいろ心配事を仕込んで来るあたりのお話の作り方、あたしゃ好きですが。
このシリーズは一応残り2巻、お話づくりの定番を考慮するなら、ここまでに登場したキャラクタの内、こいつは絶対信頼できるだろうと思ってた登場人物のうちの誰かが、実はシリーズ屈指の大悪党ってことになるんだろうと思うんですが、さて作者の筆はこの辺をどう捌くのか、続きが結構楽しみですわ。
★★★
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