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カリン・ロワチー 著/嶋田洋一 訳
カバーイラスト 佐伯経多 + 新間大悟
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011729-0 \1000(税別)
戦闘輸送艦<マケドニア>の艦長、アザーコンの息子、ライアンの暗殺に失敗し、今は警戒厳重な刑務所に収監されている海賊ファルコンの後継者、ユーリ。そんな彼の許を訪れたのは地球政府側の情報畑の工作員。彼はユーリに、海賊たちのもとにふたたび舞い戻り、内通者として活動し、海賊たちを潰滅させることと引き替えに、身柄の自由を持ちかけられる。疑念も残るがこの申し出を請けたユーリだったが、計画された脱出行のとっかかりから、予想外のアクシデントが連続し……
「戦いの子」、「艦長の子」に続く、お子様シリーズ完結編。「艦長の子」のラストでわたしゃ、不幸な子供の話、難儀な子供の話ときて、さて3作目はどんな子供の話を読ませてもらえるんでしょう
なんてなことを書いたわけだが、その伝で行くとううむ、今回はそうだな、目の開いてない子供の話、って事になるのかな。
平穏に暮らしていた少年が戦争の巻き添えを食らって難民キャンプ暮らしを余儀なくされ、そこで荒んでいたところにうまい話が転がり込み、これだと飛びついたら世の中そんなにウマい話があるわけもなく、飛びついた先は海賊船。そこで海賊の首魁の後継者の可能性を見いだされ、そのための教育を受けていくわけだが、そこでユーリは、なかなか物事の深いところを目にすることを阻止されたまま成長し、それがために、とてもピュアな部分と怜悧な部分を併せ持った青年に育っていき、自分がその二つの要素にうまく折り合いをつけられないために、いろいろ苦労していく姿が描かれる。前のお話のラストを引き継ぐ形で進んでいくパートと、海賊船に拾われ、海賊として、さらに本書でかなり重要な意味合いを持つ"ゲイシャ"(現在の芸者さんとはかなり意味合いが違うものですが)としての教育を受けていく過程がカットバックで描かれていく。
一人の少年の成長物語を、同じ時代であってもその環境や背景が変わるとどうなるか、って切り口で描いてきたのがこの三部作だと思うんだが、先に書いたとおりこの三人目は、いろんなところに縛りをかけられ、がんじがらめな気分のまま青年になってしまった若者の物語。そのがんじがらめっぷりと、海賊ファルコンの後継者として施されるさまざまな教育の影響から、ユーリは非常に不安定な人間になっていくのだが、前二作に比べて非常に大きな比重を持ってくるのがセックスの部分ってことになるだろうか。ロワチーさん的"ゲイシャ"は、あらゆる手管を使って対象となる相手を籠絡する特殊な技能職と言う設定に合っている関係もあり、今回はそっち方面の描写がかなり多めで、かつやや「腐」な方向にシフトしているような感じはある。ユーリの個性(プラス本書カバーのイメージもあり)などから、何とはなしに腐女子が描く、フィーチャリング早乙女アルトの二次創作物を読まされてるような気になってしまうのだな、これが。
こういうノリも決して嫌いではないんだが、今回はヤオイ風味ばかりが前に立ち、肝心かなめの主人公の成長と、彼に取っての重荷になっていた何物かからの救済という、とても大事なパートについての描写がかなり手薄で、お話としてこれで良かったのかなあと言う気分はかなり後を引く。序盤からの念入りな流れが、終盤になって急に駆け足になって、いろんなものへの説明をいい加減なまま、ラストシーンを作ってしまったような印象がある。いろいろ釈然としないんだが、著者は当面続編を書くつもりはないようなので、これはこれで一段落、と納得するしかないんだろうけど、この終わり方はちょっとすっきりしないものがあるな。
しばらく冷却期間をおいて、いくらか歳くった三人の若者たちの話、なんてのを書いてもらえたら嬉しいかも。もうちょっと三人の若造が密接に関係しあって進むような話だとさらに結構なんですが。
★★★
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