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ジャック・キャンベル 著/月岡小穂 訳
カバーイラスト 寺田克也
カバーデザイン 岩郷重力+WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011838-9 \900(税別)
長きに渡るシンディックとの戦争をいったん終息させ、最愛の女性とも結ばれたギアリー。だがアライアンス最大の英雄となることは、アライアンスの上層部にとっては同時に最大の政敵となる可能性も意味していた。さらに人類にとっては、陰でシンディックをアライアンスとの戦争に駆り立てた謎の異星人の存在も見逃せない。アライアンス上層部は厄介な存在であるギアリーに対し、謎の異星人の正体を突き止めるため、強力な艦隊による強行偵察任務を命じるのだった…
第二部開幕というわけで、まずはいろいろと一部とは違うんですよ、の説明用の小ネタ的なエピソードが並んでいて、まあどちらかというと地味目な印象、なんだけどその小ネタ自他は割に良い感じ。百年を超える戦争で思考がおかしな方向に硬直してしまった結果、軍艦の耐用年数が数年程度のものになってしまっている(無謀な作戦しかしないから、あっという間に消耗する)、とか、同じく硬直化した組織がやらかすさまざまな馬鹿げたお役所仕事とか、あまりに巨大な存在になってしまったが故に、「良き兵士」でありたいと思ってるだけの主人公が、既存の権力者達が自分の権益を保持するために汲々としていることに理解できずに悶々としてたり、さらには最愛の人と結婚できたは良いが、それ以前にやらかしたちょっとした火遊びの相手がまた現れたり、といった割に下世話な方面も結構念入りに描かれていて、そこが結構楽しめるんだった。
なんだろうな、海外のSF-TVドラマシリーズで、ある程度登場するキャラが立ったあたりでの、それぞれのキャラの個性みたいなものを少し深く掘り下げるようなエピソード的な味わいと言えるだろうか。その分スペオペ的な見せ場は少なめなんだけど、こう言う話もあっても良いとは思う。
問題はむしろ、第二部を引っ張る存在になるであろう謎の異星人、絡みのお話って事になるだろうか。詳しいことはこれから説明しますからね、ってところなのかも知れないけど、それにしてもややとっちらかり気味で、かつ不用意に風呂敷を拡げすぎなんじゃないか、って気もしないでもないな。この先どうなるかは判らんけど、ちょっと話を大きい方向に持って行きかかってるんじゃないかって気はしないでもないな。
あと、これはamazonの評で知ったんだけど、若干訳がスカタンかも知れない可能性があるのだね。確かにadmiralを「元帥」にしちゃうと、お話の途中のある展開の厄介さが上手く伝わらないかも知れないな。自分は原書当ってないので良く判らんけど、実際のところはどうなんだろう。ま、特に戦闘シーンの訳しっぷりとかは、「何が起こってるんだ?」と思ってしまうところもちょいちょいあるのは確かなんですが。
★★★
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