ばむばんか惰隠洞

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2012-03-21 [長年日記]

[News] 訃報

アニメ監督の石黒昇さん死去 「宇宙戦艦ヤマト」演出(asahi.com)。満を持して、なのかなとも思える「2199」公開前のタイミングでこれか…。尽きせぬ感謝を。

[Books] 赤い星

赤い星(高野史緒/著) 高野史緒 著
カバーイラスト 加藤俊章
カバーデザイン 岩郷重力 + Y.S
ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
ISBN978-4-15-208950-2 \1600(税別)

華麗なる薄味

北方海域で発生した日本漁船とのいざこざを口実に、帝政ロシアは江戸幕政下の日本をその支配下に置くことになった。そんな江戸の街で情報絡みの便利屋として暮らす娘、おきみは、幼なじみで今は吉原一の花魁となった真理奈太夫から一つの相談を持ちかけられる。正式には逝去したとは言われているが、生存説も根強く残るかつてのロシア皇子ドミトリが今、江戸に潜んでいるというのだ。自身が徳川の御落胤であると主張する真理奈は、ドミトリを捜し出し、その后となることでロシア皇后の座を射止めようというのだ。半信半疑ながらも真理奈の頼みを引き受けたおきみだったが…

軽石庵からJコレ借りて読んでみようシリーズその10。前のアイオーンでちょっともやっとした気分が残ってしまったので、もう少しこの人の本を読んでみようじゃないか、ってことで。とりあえず「アイオーン」よりは続きが気になる感、みたいなものはしっかり伝わって来たかも知れない。前作が「信じるに足る自分の立ち位置」みたいなところに目を向けていたとするならば本作は、「信じるに足る世界とは何なのか」ってあたりを向いたお話づくりがされていて、かつその「世界」のスケール感が良い按配だった、って事なんだろうか。

とはいえ残念ながら「アイオーン」にあった問題点もそのまま引き継がれてしまっていると思えるところも多々あって、そこはやっぱり辛いかも。衒学的な面白さや本気とも冗談とも付かないお話の味付けなど、面白いと思える描写はそこここにあるのだけれど、それらがみんなツッコミ不足というか「え、そこで終りなの?」的な描写で終わってしまっていて、なんて言うんだろうな、本書の前半でちょっと出てくる女郎屋での描写的な話で言うなら、内股にしのばせた手を肝心なところまで深く押し入れることをせずに、ひとなでしたらすぐにお腹のあたりをさすり始めて、かつ秘所にはその手が戻ってこない、みたいな(^^;。もう少しそちらを深く突っ込んで書いて欲しい、と思ったところで語り手の興味は別の方に移ってしまうのだね。

歴史改変SF的なノリで言えば、何故ロシアなのか、ってところ(ロシア的さまざまな物事自体はかなり面白いんだけど。スミレーノフ長官は本書、読まれたんですかねw)や、そもこの作品世界ではどういう流れで帝政ロシア→ソ連邦→ふたたび帝政ロシア、という流れが出来たのか、とか、その間日本にはどういう歴史的な流れがあったのか、といったあたりの説明が決定的に不足しているので、中盤以降のストーリー展開のキモになる、「この世界のほうがリアルなラインなんだよな?」ってテーマ部分の補強が全くない感じがするんだよな。なので面白いお話ではあるんだが、同時に割とどうでも良い話になってしまっている、という欠点も同時に持ってしまってる、ってことになってはいないかな、という気もしてしまうんだった。細かいところなのかも知れないけど、そこの所のディティルへの説明が足りていないことが、なんて言うのかな、最終的に「まあ、ね」って言う読後感で終わってしまう本になっちゃった、という〆を提示する結果をもたらしてしまったんじゃないのかな、と。

少しタイト目にまとめた分、お話的には「アイオーン」よりはいいと思いました。終盤の展開も(前述のような理由で)もっとやり様はあったとは思うけど、それでもかなりハッタリは効いててそこは良かったと思う。それだけに全体に漂う薄味感はもうちょっと、何とかしてもらえたら嬉しかったんだけどなあ。

★★★☆


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