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ロイス・マクマスター・ビジョルド 著/小木曽絢子 訳
カバーイラスト・浅田隆
カバーデザイン・矢島高光
創元SF文庫
ISBN978-4-488-69818-8 \1300 (税別)
ハネムーンを終え、バラヤーへの帰途についたマイルズとエカテリン。故郷に帰れば人工子宮で育まれている二人の子供たちとの対面が待っている。幸福感いっぱいの二人だったが、そこに予期せぬ急使が。皇帝グレゴールから聴聞卿マイルズへの緊急任務、それは帰途の進路上の付近のグラフ・ステーションで、バラヤー艦隊に護衛されたコマール商船団が足止めを食らっているという。しかも護衛のバラヤー艦隊の連絡士官が一人、行方不明になっているという。事態の解決のため、グラフ・ステーションに向かうマイルズたちだったが…。
前作からほぼシームレスにつながるお話で、ノリとしては安定したSFミステリ。お話のつくりはさすがにビジョルドで、理屈抜きで楽しめる。本としての物理的なボリュームも適正で、いろんな意味でエンタティンメントSFとして、お手本のような一冊になっていると思った。このシリーズを読んでる人であれば懐かしいキャラあり、新たに登場した魅力的キャラ(前作のおまけ短編で頑張ってくれた彼ね)ありで存分に楽しめる。
本シリーズとの付き合いの長い人であれば久しぶり感満点の、セタガンダの人々だったり、前作のおまけ同様のデンダリィ傭兵隊のキャラとの再会があったりで、ファンサービス的には文句なしの一作。お話的には比較的オーソドックスなSFミステリの体で、何かが突出しているとかいうものではないんだけど、ストーリィ・テリングの上手さは百難隠す。楽しかったです。
ただその上で、やっぱりビジョルドの考え方に100パー納得は出来ないところもある。それは前作でもちょっと気になっていた、このシリーズにおけるベータ星系的な生殖の考え方。女性からしたらそういうものだよ、と言われてしまう物なのかもしれないけど、痛みや辛さを伴わない出産、ってのはそれほどまでに素晴らしいものなのかな。サンプルがウチのカミさんの話だけになってしまうんですけど、割に小柄なウチのカミさん、倅の頭が結構大きくて子供を出すのに数時間かかっちゃったのね (ちなみにその時、オレはひどい結膜炎で立ち合いを遠慮してドラクエしながら連絡待ってました)。で、ようやく子供が世間に出てきたときにカミさんが言った言葉が「また産みたい」だった、ってんで担当医さんや看護師さんが苦笑された、って話をお義母さんから聞かされて、ちょっと良いなあと思ったんだけど、ビジョルドさん的にはそこの辛さと、それを乗り越えたところにある何らかの感慨みたいなものってのは、無い方が良いもの、って意識なんだろうか。
女性の気持ちというか辛さ、みたいなものの本質的なところなんてのは、野暮な野郎には到底判らないものなのかもしれなくて、ウチのカミさんのセリフも実はその裏に結構深いものがあったりするものなのかもしれないけれど、それでも自分の身体を苛めた上で得られるものの愛おしさ、ってもののかけがえの無さ、ってのも決して捨てた物じゃないと思うんだけどなあ。
そこのところの割り切れなさは終始付きまとったことでしたよ。
マイルズ君、セタガンダ訪問編。これは押さえておいた方が良いかもね。→マイ感想
★★★☆
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