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2014-12-09 [長年日記]

[Books] 日本海軍400時間の証言 軍令部・参謀たちが語った敗戦

日本海軍400時間の証言(NHKスペシャル取材班/著) NHKスペシャル取材班
カバー写真 NHK提供
新潮文庫
ISBN978-4-10-128373-9 \750 (税別)

バックステージにもドラマあり

2009年に放送されたNHKスペシャルの担当スタッフによる、同番組の取材にまつわるエピソード、放送には乗せられなかった証言などで構成されたノンフィクション。

この番組は放映時にちゃんと見てて、なかなか良かった覚えがあったのでおさらいの意味で、と思って購入したんだけど、番組を再録するというものではなく、先に書いたように番組を作ろうとしたきっかけから、それぞれ(全3回)の取材の模様などを交えながら、各エピソードを追体験していくような本。なのでこの本を読めば件の番組の内容がわかる、と言うようなものではなく、あくまで副読本的位置づけになると思う。

そこを踏まえ、例の番組を思い出しながら読んでいくと大変面白い。制作に当たったスタッフたちと膨大な数であっただろう証言者たち、それぞれのドラマは大変に豊かなものであると思う。複数のスタッフがそれぞれ独自に番組製作のエピソードを語っていくのだけれど、それがどこかのタイミングで交差するあたりも興味深い。特に証言者サイドではなく、取材スタッフ側に起きたとあるエピソードは、かなりぐっとくるものがある。そして他の書籍などでもしばしば取り上げられた何名かの著名な海軍軍人(特に名は伏す)たちの、何とも言えん胡散臭さがこちらでも健在なあたりは、巷間言われていることはかなり真実に近いのかもな、などとも思ったり。

番組を見ていたときにはスルーしていたいくつかの証言者のお名前を、活字で改めてみてみたときに、「ああ、あの本書いた人だったか」と改めて思い出して見たりもできて、そこもなかなか興味深かった。本書で紹介される「反省会」の出席の中でも最も先鋭的な意見を述べていた鳥巣健之助さんや妹尾作太男さんの本、前に読んでましたわ。そこのところの感慨もあった。

その上で感じるのは、先にリンクを張ってある番組を見た感想のところでも書いている、人の命の大切さ、と言うあたりを着地点にしてしまっている所からくるウェットさが逆にノイズになってしまう、ってことだろうか。そのテーマは確かに本質的なものではあるのだけれど、そこをプッシュしすぎると、それは思考を遮断して一種の盲信を強要する結果になってしまうのではないかと思ってしまうのだけど。

取材、番組製作にまつわるエピソードが満載の本書だと、確かにクルーと証言者の距離が近い分、メンタルな方面での思い入れのようなものはより強く残ってしまうのだろうけれど、そこはぐっとこらえて、ほんとに言いたいことは読み手が自分で見つけ出す、ような構造になっていた方が良かったと思うんだけどな。そこだけちょっと残念だったかもしれない。

B006T698RA

とか何とか言ってますけど一見の価値のある番組だと思いますよ。

★★★☆


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