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松崎有理 著
カバーデザイン 岩郷重力+WONDER WORKZ。
サイエンスソーズ PPS通信社
創元SF文庫
ISBN978-4-488-74501-1 \860 (税別)
東北のとある都市に蛸足状に発展した総合大学に在籍する学生、研究者たちが体験する様々な不思議…。第1回創元SF短編賞を受賞した表題作、単行本化された際に書き下ろされた短編などを含む6編を収録。文庫化に際して「幸福の神を追う」を追加収録。
いろんなところで話題になってたのに、なぜか今まで手が出なかった本。なぜでしょう、わかりません(^^;。たぶんそんな深い理由は無かったんだと思うんだけどね。なので前置きはさっさと終わらせてそれぞれのお話について簡単にいきます。
恩師である偉大な生物学者が未完のまま残した仮説を検証しようとする幼なじみの男子学生、イカル。彼がめざしたものとは…。こちらは既読。いわゆるバイオ系SF、ごく軽めのホラー風味付き、という感じか。
来たよ数学SF(w。なんだけどここでの数学は、たとえばラッカーとかイーガンみたいな若干難解方向にシフトした奇想のネタに使われるんじゃなく、もっとこう、すごく下世話な、恋バナ成就譚的ところで機能する。そこがちょっとおかしく、切ない。タイトルはあれです、「アルジャーノンにあんみつを」とかでも良いんじゃないかって勢いで。
この世界では通称 「出すか出されるか法」 なる法律が施行されていて、研究者は3年以内に最低一本の論文を提出し、それが受理されないと研究機関には居られなくなってしまう。そんな世界でニーズ急上昇中なのが代書屋稼業。先輩の紹介で駆け出し代書屋となったミクラの許に舞い込んだ依頼とは…
このあたりからこの短編集は、この「出すか出されるか法」とそれに対応すべく、学術論文に向かう若き研究者たちの苦労話がベースになっている。で、この論文対策のパートがかなり面白い。理系の世界でどうやって自分を認めさせていくか、ってところの描写がいろいろ「ほう」と思わされるところが多くて。
ミクラ君がなかなか良いキャラで、そのキャラ故のオチのつきっぷりが、ほほえましいのか、切ないのか、何とも微妙。
こちらは理論屋と微生物の専門家が「出すか出されるか法」に挑戦する話。ここにちょっとしたミステリ要素も加味される。このあたりまで読んでくると、この短編集のそれぞれの短編のモブ的キャラクタ達が、実はただのモブじゃなく、それなりにシリーズ構成的に機能している人物として登場しているんだな、ってのが見えてくるあたりもちょっと楽しいかも。お話的にはSF側じゃなくミステリ側に寄ったオチの付け方で、そこはちょっと惜しかったかなあ。
動物を使った実験系研究者が落ち込んじゃった萌え要素とは…、みたいな。一種のスラプスティックなんだけど、スラプスティックの先に待っているのが、というかスラプスティックが始まる理由の時点から、納得できない要素の方が多かった。
明日から夏休みだ
…この野郎 (著者は女性です) オレが一番弱いフレーズブチ込みやがって(^^;。最後にちょっと良い感じのジュヴナイルを持ってこられては…
という感じで。全体的にビターなお話が並ぶ短編集だったけど、不思議と不快な読了感は無い一冊だった。あと。このあとにオボちゃんの一件があって、そこで理系研究者の論文が受け入れられるまでには、どういう経路を通らなくてはいけないのか、って知識が無駄に増えちゃったものだから、本書での論文受理までの流れでどういうハードルがあるのか、ってのが必要以上に良く解ってしまった状態で読めたのは良かったのか悪かったのか(苦笑)。
個人的には小保方さんもこんな環境で研究できてたら、もうちょっと違ってたかもしれなかったのかもなあ、とは思いましたけれどもね(^^;
★★★★
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