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ジェフ・カールソン 著/中原尚哉 訳
カバーイラスト 鷲尾直広
カバーデザイン 常松靖史[TUNE]
創元SF文庫
ISBN978-4-488-75001-5 \1140 (税別)
木星の衛星エウロパで発見された生物の死骸。それは意外なくらい近くに、地球以外の生命体の存在を示唆するものだった。直ちに組織された国際科学探査チームだったが、先行した三人のチームはエウロパにおいてかつて存在したと思われる文明の痕跡を発見し、さらにサンフィッシュと名付けた生命体とのコンタクトも果たす。だがサンフィッシュ達は敵意をむき出しにして調査チームに向かい、たちまち二人のメンバーが彼らによって起こされた落盤に巻き込まれて死亡してしまう。一人残ったボニーは必死のサバイバルを開始するのだが…。
地球外生命体とのファーストコンタクト、しかも初手から相手との意思が通じ合わない、という状況下で主人公はどう頑張るのか、どういうSF的なネタでコンタクトとコミュニケーションを先に進めていくか、と言うあたりに力点を置いた話なのかな、と思って読み始めたんだけどそういうものとはちょっと違っていて、どちらかというと人間側のいろんなしがらみやら事情やらを織り込んだアクションSFに、随所随所でハードSF的風味がまぶされたような作品になっている、といえるか。少々小難し風味のハードSFテイストよりは、むしろミリタリSF的なテイストの方が前面に出たようなお話になっている。
お話の背景になっているのは100年ばかり先、偶発的な小規模の世界大戦などの影響で現在ただいまの我々が知っているそれとは若干様子が違うパワーバランス下にある世界において発見された異星生物をめぐり、各国の思惑が絡み合う中、主人公のボニーがなんとか科学者としての矜持を通そうとするお話が本線。ここに22世紀の様子であったりサンフィッシュ達への考察だったりがまぶされてる。基本はアクションSFで、キモの所にハードSF的な考察を交えてくる、と言うスタイルになっている。で、ここのところの差配がどうだろう、今ひとつ上手く行ってないんじゃないのかな。
様子のわからん生命体とのコンタクト、と言うところは、やっぱどうしたってハードSF的な部分での腕の見せ所、と言えると思うわけで、そこのところは「重力の使命」からこっち、どうしたって読み手の方が期待してしまう部分だと思うんだけど、残念ながら本書はそこへの突っ込みがあまりにも浅い。本来難しい話が嫌いな自分がそう思うぐらい浅いのはかなり辛い。アクションSF部分が対立軸的なところで飲み込み辛いところも多かった、って点も込みで、もうちょっとアクション部分を削ってでもいいから、ハードSF的な部分を増量して欲しかったような気はするな。
というわけでそこそこ面白くはあったのですが、アクションSF、ハードSF、どっち方面にもグン、って振り切ったところが無かったのがちょっと惜しかったかなあ、と。ただ一点、前後の脈絡なく引くので未読の人には訳わからんでしょうけど、こういう一節を読んだときに「SF好きでよかった」と思えるところがあったのでそこで星半分ぐらいサービスしてもいいかしら、って気はしております。こんな感じだ。
「なんてこと。敬意をしめしているつもりだったのに。礼儀正しくしているつもりだったのに」
『じつはそれは高圧的な態度だったんだよ』
ここだけ引いても訳わからんでしょうけど(^^;、ここまでの流れがかなり、SFじゃないと出来ないことになってるんだよね。そこはかなり嬉しかったですよ(w。
★★★☆
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そうそう、もちょっとハードSF寄りにして欲しかったと私も感じました。けっこう悪くないんだけど、ごちゃごちゃしちゃって「おー、これだ!」感が薄くて読んだのを忘れてました…。
上下関係の話とか結構面白くて、ここを最大の盛り上がりどころにしてくれたら、いや、実際そうしようとしてたのかもしれんのだけど、「星を継ぐ者」級に(大げさか?)「おー、これだ!」が来たかもしれないのに、ちょっと惜しかったですよねえ。
そうそう、上下関係は面白かったですよねぇ。その一点へ集中させていく謎解きサスペンスっぽくなっていれば、もっと印象に残る作品になったと思います。<br><br>やっぱり「火星の人」みたいにあんまり風呂敷広げないほうが印象が残りやすいのか…。あー、そうでもないですね、「キャッチワールド」みたいなのもあるなぁ。むーん。
今まさに「火星の人」読んでます(w。なかなか良い感じですが、こっちはこっちでんー……、って所もありますですね(^^;。