カテゴリ一覧
Anime | AV | Baseball | Books | CGI | Chinema | Comics | CS | Day | DVD | Event | F1 | Games | Hobby | HTML | Kindle | Misc | mixi | News | Oldbooks | PC | Photo | SpFX | Stage | tDiary | Tour | TV | web | 逸級介護士
グレッグ・イーガン 著/山岸真 訳
カバーイラスト 小阪淳
カバーデザイン 岩郷重力+A.T
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-012014-6 \1100 (税別)
2012年、イラン。イスラム革命を経て今、新たな民主革命の嵐がこの地に吹き荒れようとしていた。オーストラリアのジャーナリスト、マーティンは少々意にそぐわぬところもありはしたが、再び彼の地に赴き、このうねりのなか、同時に新たな情報通信革命の兆しに対面することになる。同じ頃、かつてのイスラム革命を嫌ってイランを脱出してアメリカで研究職に就く女性、ナシムは同じく革新的な情報のストレージに関する技術革新に向かいながら、今一歩のところで突破口が掴めないでいた。そして革命は成功し、イランには新しい社会体制ができあがる。それから15年…
かつてのイラン革命の際に知り合った女性と家庭を作り、イランで書店を営んでいるマーティンだったが、そんな彼を立て続けに不幸が襲う。このままでは愛する息子はやがて天涯孤独の身になってしまうだろう。未来を憂えるマーティンが偶然出会ったヴァーチャル・リアリティ・ゲーム「ゼンデギ」の発展型に一筋の光明を見出した彼は、そのシステムの開発者であるナシムにコンタクトするのだが…、というのが続くお話。
基本的なお話のテーマは家族愛、というところになるのかな。ここに情報ストレージとその再生方法、さらにはその再生環境に関するSF的というかテクノ・サスペンス的な風味が隠し味的に効いてくるようなお話で、これまでのイーガン作品に比べると非常にエッジがまろやかになり、ややこしいところがほぼ無くなり、取っつきやすい要素としてのバーチャル・ゲームのスパイスがほどよく効いて、結果、
なんか退屈なお話になっちゃってる(^^;。
人を煙に巻くSF的ハッタリは皆無、それが無いから意識がぽーんと跳ねる瞬間が無い、その替わりに作者としてはヒューマンドラマの部分を前面に押し出してきたかったのかもしれんけど、失礼ながら作家としてそこまで腕のある人じゃあないだろう。物語を造る、という作法の部分においていろんなところが足りていないと思う。描くべきところを省略しすぎ(そも、マーティンはなんであの女性と結婚したんだ? とか)だし、そこは省略しても良いだろ、ってところを冗長にやり過ぎ(序盤の音楽データのリッピング問題とかね。その先のストーリーに絡んでくるパートではあるので、ある程度の描写は必要だとは思うけど、その前後も含めて、もっと切れるだろ、と思った)てしまってる。結果としてなんだか読んでも読んでも(読み手の気持ち的に)フォーカスが絞れん話になっとるなあ、という感じが拭えないの。
ただ、よくできたSFってのはそういう作劇的な作法とかお約束とかを超えたところで、読み手に何か形状しがたい衝撃を与えてくれるものだと思っているんだけれども、そちら方面で読んでるこちらに「そうですか」と思わせてくれるものは残念ながらなかったかなあ、と。なんか読んでる間じゅう、感じたのは「出来の悪いときのクライトンみたいやなあ」ってところですかね。ごめんなさい、残念賞物件(^^;。
★★☆
前 | 2015年 8月 |
次 | ||||
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
1 | ||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 |
30 | 31 |