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2016-08-27 [長年日記]

[Books][Kindle] 軌道学園都市フロンテラ

B010DY7PHS ジョーン・スロンチェフスキ 著/金子浩 訳
創元SF文庫(Kindle 上下合本版)

ものすごく回りくどい『幼年期の終わり』

22世紀初頭、環境の激変で暮らしづらくなり、いくつかの政治形態の変化も起きている地球を離れ、衛星軌道上に点在するスペースハブのひとつ、フロンテラ大学に入学が決まったジェニー。難問山積の地球とは異なり、先端技術に支えられ、適切に管理された学生たちにとってのユートピアに見えたフロンテラだったが、ここもまた、悩みや問題から無縁の世界ではなかった…。

たとえが古くて申し訳ないですが(なんせオッサンですから)、なんとなく「空中都市008」的なステキ未来カタログ的なお話なのかな、などと思って読み始めたんですがそう言うものではなく、や、もちろんそういう未来カタログ的な面白さも充分あるんだけど、そこにすらも何やらちょっと不穏な匂いがしてきてたりするのがちょっと興味深い。軌道エレベータを支える基礎素材になるのが「炭疽菌ケーブル」だったり、エイズウイルスが一種の健康飲料的に利用されていたり、何やら石油タンパク的な匂いのする万能(食べ物から建材にまで合成できる)素材、アミロイドとかね。それ自体は結構なことじゃないかとも思えるけど、同時に何かちょっと不健康というか、危ういものを漂わせている感も同時にするのだった。

この時代の地球は、宇宙から飛来したと思われる植物、ウルトラファイト(ファイトはFightではなくPhyte、ある種の植物の頭に付く単語らしい)によってそれでなくても激変してしまった環境が徐々に犯され続けている世界。ウルトラファイトはストレスが溜まると青酸ガスを吐き出してしまう、という厄介な植物で、地球はつねにウルトラファイトの繁殖を抑えるための戦いを強いられている。それでなくても地球は、南極をめぐる国際動乱をようやく脱して全世界的に復興しようとしている時期だというのに、厄介ごとがひとつ増えることになってしまった、という、厳しい世界になっている。

対するフロンテラの方は、ではウルトラファイトの危険もなく、ただひたすら楽しく学問やスポーツに打ち込める世界になっているか、というとこちらもそうでもなく、読み進めていくと徐々に、こっちにもいろいろ問題があるんだな、というのが見えてくる。そもそも主人公であるジェニー自身、キューバを含めた新生アメリカにおいて、大統領を輩出している家系の娘ではあるけれど、事故で最愛の双生児、ジョーディーを失い、それがきっかけで一種のパニック障害的な症状を内に抱えた人物だし、友人のアヌークは過度なインフォマニア、ジェニーと同室になるメアリは全身義体で、精神的にも不可解な未発達性を残したままの女の子、と、登場人物のほとんどがメンタルなりフィジカルなり、あとはジェンダーがらみなどで何かしらの問題を抱えた人物という設定になっている。

一件ステキ未来に見えた世界にも内憂外患、さまざまな要素が絡み合い、それがやがて大きな事態にエスカレートしていく様は、正直もたつき気味な部分もあるんだけど、それなりに読ませる。そこそこユーモアもちりばめられているし。しばしば退屈しつつも一応興味の持続は途切れず、やがてそれらの状況が、主にウルトラファイトを軸に一本の線に収束していってついに大ネタ炸裂、という後半の流れは正直かなり上がる。「おっほぉ!」とか声が出るくらいには気持ち良い。猛烈に回り道してきたけれど、最終的に「幼年期の終わり」みたいなところに落ちつきたいのかな? と思わせてくれるぐらいのワンダーはある、と思う。ただ、

そこからが長い(^^;。

前述の大ネタ炸裂のあとのパートの大部分をはさみでちょん切って、それを大ネタパートの前に持って来ることは出来なかったのかね? そうしたらもっと気持ちよかったのに、と思えてしまうんだな。なので大ネタ部分で一旦盛り上がったこっちの気持ちは、またそこにたどり着くまでのもたつき感に取って代わられてしまうのだった。

大変盛りだくさんに要素が詰め込まれていて、しかもその要素たちが食い合わずにお話の中に収まってるあたりは上手いと言えるのかもしれないけど、それって単に構成が間延びしててお互いが食い合わない距離に配置されてる、ってだけのことなのかもしれない。お話の作り方があまり上手な人ではない、ってことなのかもしれないな(苦笑)。だけどまあ、嫌いではないです。大ネタのところで★一個オマケかな。

★★★

[Books] Kindleで読書

というわけで上の「軌道学園都市フロンテラ」はKindle Unlimitedで手に入れた本。上下合冊版、通常のKindleだと2400円がUnlimitedだと月額980円の範囲内で手に入るわけだから、この時点で元は取った、と言えないこともない。元を取るために本を読むのか? と言う問題はあるにせよ(^^;。

ただしKindleでの読書には問題もあって、それはこの日記みたいに読後感を書くときに、やたら参照が大変になるってことですかね。読んでるときに気になったところはマークしまくっとけって話かもしれんけど、読んでる最中は気にならんかったところが、感想書いてるときに「あそこ、なんだったっけ」ってなることは結構あるんだよね。で、このときにその「あそこ」を探すのは結構大変、というか無理。

そこはやっぱつらいかなあ。なんか上手い手はあるんだろうか。


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