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マーク・ホダー 著/金子司 訳
創元海外SF叢書 上下合冊版(Kindle Unlimited)
アフリカ探検で名を挙げたサー・リチャード・バートン。その探検の最中に起きた諍いを解決するため、かつての盟友にして今は最大の論敵となってしまったジョン・スピークとの討論の場に臨んでいた彼の許に驚くべき知らせが。スピークが銃の事故で危篤状態に陥ったというのだ。手を尽くしてスピークの入院先を捜索するバートンだったが、ようやく探り当てた病院では彼の身体はすでに家族によって引き取られたという。割り切れぬ気持ちのまま、街をさまようバートンの前に人間とも怪物とも付かぬ奇怪な影が立ちふさがり、意味のわからぬ警告を発するのだった…。
わずかに異なる時間線の上にある19世紀の英国を舞台に、その時代の著名な人物たちが若干立ち位置を違えた設定で丁々発止を繰り広げる、という設定はまあ類似品もあると思うけど、ここにスチーム・パンクの世界観をかぶせてきて、かつここに、邦題でも触れられている(原題は直訳したら「バネ足ジャックの奇妙な事件」なんだけどね)のでネタバレとも言えんだろうから言うけど、時空に関する仕掛けも絡んでくる、という構成はちょっと新しいか。
序盤はどちらかというとゴシック・ホラー風味でお話は進み、読んで行くに従って徐々にこの作品世界が微妙な時間改変SFの風味やスチームパンクの要素も備えたお話なんだ、ということがわかっていく、という過程は比較的ゆったりしたペースで語られていて、ここのところの味はSF感というよりはどっちかというとホラー風味のファンタジー的なスタイルでお話が進んでいくのだが、これが後半戦に入ると一転、割にSFっぽさ、とりわけ「時空」にもまつわるSF的な味付けも強めな、乱暴に言っちゃえばスラプスティック風味が強い物に切り替わり、読んでるこちらは若干目を白黒させることになる。前半のやや重たいけれどもそれなりに読み応えがあると思えていたお話が、後半では一気に、やや軽いかな? って気もするノンストップ・アクションになだれ込む感じ。
そこを楽しめるかどうか、ってところになるんだと思うけど自分はそれなりに楽しめた。成功者と冒険者、どちらを選ぶかの岐路に立つことになったバートン卿、彼とコンビを組む、酒とSMプレイに耽溺する売れない詩人アルジーことスウィンヴァーン、敵方に配置されているのはダーウィン、ブルネルをはじめとする近世の産業・文化の大立者たち、というわけで「R・O・D」もかくやという偉人軍団相手の大立ち回りが楽しめる。キム・ニューマンの「ドラキュラほにゃらら」シリーズにも通ずる、あの人がこのお話ではこんな事やっている、でニヤニヤ出来る要素も満載で、かつその件についてちゃんと「補遺」でサポートしているあたりも狙っているんだろう。
書店で見かけたときに、その新書サイズの押し出しとタイトルで、これはかなりヘヴィー級な本なのでは? と思って敬遠したんだけど、で、正直そこで敬遠したのは正解だったと思うけど、この(Kindle Unlimitedで読める)スタイルでならばお買い得感は満点だし、実際読んでみても充分に楽しめた。続きもしっかり確保してますよ(w。
★★★☆
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