ばむばんか惰隠洞

«前の日記(2016-10-09) 最新 次の日記(2016-10-12)» 編集

カテゴリ一覧

Anime | AV | Baseball | Books | CGI | Chinema | Comics | CS | Day | DVD | Event | F1 | Games | Hobby | HTML | Kindle | Misc | mixi | News | Oldbooks | PC | Photo | SpFX | Stage | tDiary | Tour | TV | web | 逸級介護士


2016-10-10 [長年日記]

[Books] 砂星(すなぼし)からの訪問者(フィーリアン)

砂星からの訪問者(フィーリアン)(小川一水/著) 小川一水 著
カバー装幀 二階堂龍吏
カバー装画 鈴木康士
朝日文庫
ISBN978-4-02-264789-4 \880(税別)

もしラノベ作家がブリンの「知性化シリーズ」を書いたら

恒星間航法を手に入れた人類は、宇宙を航行する間にいくつかの異星人と遭遇することになった。そしてそれら種族の中には、必ずしも人類に対して友好的に接してくれない者たちもあった。拙速なコンタクトが人類文明、さらには人類がこれまでに遭遇した異星文明全体にも災厄を与えかねない、という事実が人類にダーウィン機関を設立させることになる。強力な戦闘部隊と高度な訓練を積んだコンタクトの専門家たちを乗せた宇宙艦隊で他の星を調査する機関。新米カメラマン、イシヅカタビトの姿もその艦隊の一員だった…。

という出だしで、実は一件すでに状況は発生し、終了している。そう、これは何というシリーズなのかはわからないけど「臨機巧緻のディープ・ブルー」という作品があって、そこで本作にも登場するキャラクタの何人かはすでに登場していて、ついでにダーウィン機関というものの詳しい説明とかもなされている模様。読み始めてあれっと思って調べてみてそういう事がわかって、しまったー! と。

ただまあ、「ままよ」と思って読んで行ってみると、前作を読んでなかったらどうしようもなく訳がわからん、なんて事はなく、何となく割と天然なカメラマンが未知の異星人の世界に飛び込んで、素人故の型破りなコンタクトをやらかして、それが結果的に思いもよらない成果を上げはするんだが、一応軍紀違反的行動であったのでタビト君、前巻ラストで営倉送りになっちゃいましたとさ、ぐらいに思っておけば何とかなると思う。

で、そんなタビト君たちが先の調査を終えて機関の本部に戻ってきたところ、正体不明の異星人による襲撃が発生、極めて優秀な装備と極めて劣悪な戦術で動く彼らを人類側はとりあえず撃退するのだが、その過程でタビト君はフィーリアンと呼ばれることになる異星人に拉致され、フィーリアンたちの拠点に連行されて…というのがお話の流れ。

ここからお話はタビト君なりのどたばたコンタクトと、コンタクト相手のフィーリアンの持つSF的な仕掛け、宇宙における人類やその他の種族、さらにはもしかしたら存在しているかもしれないすべての宇宙航行種族を産み出したと言われる「黎明の播種者(ドーン・シーダー)」なる存在への仄めかしなんかもあり、なんというか、抜かりはない。全体にすごく噛み砕いた「知性化」シリーズという感じはちょっとした。著者はダーウィン機関、ってネーミングからして彼なりの「宇宙船ビーグル号」をやりたかったのかもわからんけどね。

その上で登場人物のキャラの立て方なんかも上手で、タビトの相棒、AIのポーシャの皮肉屋感、タビトと接触するフィーリアンのンールーのやんちゃでちょっと抜け作なクァール(メス)感とか、おそらくレギュラーメンバーであろうダーウィン機関の人びとのキャラクタなども良い感じ。総じて読みやすく、しかもちゃんとSFしている作品になってはいると思った。

最終的なオチの付き方に若干苦いものがあり、それを受け入れられるかどうか、ってところで評価は分かれるかもわからん、とは思ったけど、うん、楽しかったです。

★★★


Google search
www.bumbunker.com
Web
2016年
10月
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

ここ1週間分の話題

傑作です

懐かしさ満点

妖精を観るには…

ジュヴナイルとしてなかなか良質

バナーが必要ならこちらを
バナー素材

古本屋やってます
特殊古本屋 軽石庵

2003年9月までのサイト

巡回先
ROVER's HATENA

あすなひろし追悼サイト
あすなひろし追悼サイト

twitter / karuishian
«前の日記(2016-10-09) 最新 次の日記(2016-10-12)» 編集
©1996-2020 乱土 労馬:l-rover@kobe.email.ne.jp