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2017-03-07 [長年日記]

[Books] 勅命臨時大使、就任! 海軍士官クリス・ロングナイフ

勅命臨時大使、就任!(マイク・シェパード/著 中原尚哉/翻訳) マイク・シェパード 著/中原尚哉 訳
カバーイラスト エナミカツミ
カバーデザイン 早川書房デザイン室
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-012112-9 \1100 (税別)

回り道が伸びていく

人類勢力の辺境、リム星域周辺の調査にあたるクリスたちを乗せた王立調査船ワスプ号。不倶戴天の異星人、イティーチ族との緩衝空域付近に新たなジャンプポイントを発見、探索ブイを先行させてジャンプを行うのだが、ワスプ号がジャンプアウトする直前に何者かによってブイは破壊されてしまう。緊張しながら通常空間に転移した彼らの前にはイティーチ族の宇宙船と、さらにその向こうにはロングナイフの宿敵、ピーターウォルド家が支配するグリーンフェルド宙域の軍艦の姿が。辛うじて八十年保たれた人類とイティーチ族の講和状態に亀裂が生じようとしているのか……。

前作からあまり間をあけずに語られるお話。あらすじのような冒頭から、お話はグリーンフェルド艦との丁々発止を経て、突如出現したイティーチ艦の目的が交渉であることがわかり、彼らがその交渉相手に指定してきたのはクリスの曾祖父にしてかつての大戦の人類側の指揮官であったレイ・ロングナイフその人だった、と言う展開。言っちゃ悪いがこっちもそれなりにこの手の小説は読んでるわけで、かつて血で血を洗った相手が突然やってきて何か相談がある、と言いだしてくれば、その内容はだいたい予想が付くというもの。なので本書では、その「ああ、やっぱりね」に至るまでに色々と小ネタを挟み、なかなかその「やっぱりね」に辿り着かないような構成になっていて、そこはまあ、とっても楽しい。

この楽しさはつまり、前作までに積み上げられてきた各キャラクタの個性が良い感じに立っているが故の掛け合いの面白さ、ってことになるんだろうと思う。トラブルを引き寄せずにはおかないクリスの行動、そのロングナイフ故のトラブル・アトラクターぶりに辟易しつつもクリスを愛して止まない周辺の皆々、と言う構図が良いのだね。その上で今回は激辛コメンテータ的面白さを持った超高機能AI、ネリーの個性にまつわるお話とかも加味されている。

前の感想ではロングナイフ家だったりと言ったしがらみをいったん断ち切って、一種の遊軍的な存在となったクリスと愉快な仲間たちの冒険を描いていくお話になっていくようだなんて書いたけど、そんな事もなく、先に述べたようにおなじみの面々とのアンサンブルを楽しむ回なので(そうか?)、こっちの描写も色々ある、上にクリスの曾祖父、レイからしたら簡単には許すことの出来ないイティーチ族側の事情みたいなものも説明はあって、総じて過不足無い出来にはなっている(ああでも、本書のクライマックス付近はちょっと物足りないかもな)とは思うんだ。

ただ、そのいろんな物への対策が、読んでるこちらからしたら「そこはいいからさっさと先へ進もうよ」って気にさせてしまうことにもなっていないかな、って気はするのだな。前述したとおり、こうなったら次はこう、で、しかもその予想は当たってる。だったらこちらとすればその「次」に向けてどういう話が展開するのか、ってところに興味が移ってしまっているのに、お話の方は行くべきところが判っているのになかなかそっちに進んでいかず、良く判らん回り道に話を進めていくところに、「なんでそっちに行かないの?」って気持ちが出てきてしまうのだな。

予想できてる展開があって、そこを外し気味に回り道をする、と言うのもまあ、焦らしのテクニックとしてはありだと思うし、一回だけなら受け入れられると思うけど、本書はそれが二回あり、しかもその結果、こっちが読みたい「次」はたぶん次巻以降にね、ってことになってしまっているのはなんだろな、「待たしよるなあ」って気分が先に立つ。面白いし、長く続くシリーズってのにはこういう無駄足的なパートも必要、というのも判るんです。なんせこちとら「グイン」に付き合ってきたんですから(^^;。

そこをこの先上手に捌いてもらえたら、長く楽しめるシリーズになってくれるんだろうな、とも思うんでここはひとまずお手並み拝見、と言うことにしておきます。今のところ楽しめてるのは確かなんだしね。

★★★☆


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