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ロイス・マクマスター・ビジョルド 著/小木曽絢子 訳
カバーイラスト 浅田隆
カバーデザイン 矢島高光
創元SF文庫
ISBN978-4-488-69821-8 \1300(税別)
人体冷凍保存技術を基幹産業とする惑星「キボウダイニ」。グレゴール帝の命を受け、そこに本拠を置く各企業の連合体主催の会議に出席したマイルズたち。だがそのレセプションの最中、何者かによって拉致されたマイルズは、延々と冷凍状態の死体が並ぶ地下施設で目を覚ました。薬物に対する反応が常人とは少し異なるマイルズの狂態に手を焼いた誘拐犯たちは、彼を置き去りにしてしまったらしいのだ。鎮静剤の後遺症に悩みながら何とか地上に戻ることに成功したマイルズだったが、自分がどこにいるのかも解らない状態。そんな彼が出会ったのは…
「ヴォル」のシリーズ最新刊にしておそらく最終刊になるであろう本。ちょっと古いSFなんかではよくあった、不治の病にかかった大富豪がみずからを冷凍睡眠状態において治療法が見つかるまで眠り続け…なんてツカミのアップデート版がお話の背景と言えるか。んでそこのところに何かものすごく新しいネタがあったりするわけではない。冷凍状態で保存されてる死体とはどういう状態でなければいけないか、ってところにちょっと説明が増えたかな、って程度。
なのでお話そのものはあくまでも、いつものようにマイルズ君が彼独特の戦略的なセンスを発揮して、一体何が起こったのかわからない状態からその事件の背後に潜むより大きな陰謀を暴き出し、その陰謀を打ち砕く流れの上でいくつかの新たな出会いにもそれなりのゴールを用意してめでたしめでたし、というある意味安定銘柄。で、そこはさすがに作家力は確かなもので、何のストレスもなく楽しく読んでいくことが出来てとても嬉しい。なんせこの前に読んでたのが「エコープラクシア」だったもんだからね(^^;。
そういう意味ではとても楽しく読めた。最近のヴォルのシリーズはメインキャラたるマイルズよりも、脇を固めるキャラに作家の目線が行っている感じはあって、それは本作でもそうなんだけど、新たに登場したヴォルであるヴォルリンキン卿のキャラがとても良いし、「キボウダイニ」の人びとの描写も悪くない。そこまで日本に寄ってくれなくても別に良いけどね、とも思うけど(w。
なんだけど同時に、「命」のとらえ方って部分でどうしても簡単に首肯しづらいところもあるにはあって、それは前作でも感じた、痛いこととか辛いことをばっさり切ってしまったらそれだけで人は幸せになれるんだ、って考え方(が何となくビジョルドにはあるような気がするんです)はどうなんだろう、って引っかかりはやっぱり残ってしまうかな。そこはなんだか残念でした。「物語」としてはがっつり面白いんでこのシリーズに馴染みのある人だったら読んで損なし、だとは思うけどね。
★★★☆
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