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でもちょっと歩くだけで結構汗かくぞ。空は高くなったかな、って気はするけどね。
突然ですが野球は本日のナイターで阪神最下位確定らしく。今年はほんとにおもしろくないシーズンだったねえ。
カート・ヴォネガット 著/大森望 訳
カバー装画 片山若子
カバーデザイン 川名潤
河出文庫
ISBN978-4-309-46479-4 \920(税別)
「はい、チーズ」と同様、ヴォネガットのキャリアの初期に発表された短編16編を収録。
前が14編でこちらは16編。増えてるじゃん(w。と言うことで早速行くしか。
女体を模した電気冷蔵庫にジェニーと名付け、全国を回ってセールス・プロモーションを続けるジョージ。そんな彼に重い病の床にある元妻から「一度会いたい」との連絡が。自分のスジュールで動くジョージを探すため、新米社員のぼくに社命がやって来て…。
広義でロボットSFといえるかも知れないけれど、重要なのはオリジナルとコピーの相克、とも言えるかも。
すべての生命保険会社を震撼させたひとつの事実、それは…。
一種の終末SFと言えないこともないが、お話の根っこは結構不条理。「条件に合う者皆殺し」は怖いのか、可笑しいのか…。
暴力事件の取り調べを受けている一人の男。供述が進んでいくにつれ、なんとも言えない事件の真相が見えてくる…。
こちらもむりくりSFのジャンルで語るなら、今ならネットゴーストがらみのユーモアSFとして料理できそう。とはいえ50年代のショート・ストーリーで、電話でこの話の拡げ方はなかなか。
酒で身を持ち崩した父親の許を今日、成人した息子が訪問する。ずっと禁酒を続けていた父親も、この日ばかりは一杯の酒を自分に許そうと決めていた。久しぶりに顔をあわせる息子を待つ間饒舌になっていく父だったが…
短く、切れ味良く、そして割とブン投げられた感じはある。これはハッピーエンドなのか、修羅場の一瞬前なのか…。
土木事業で財をなした男の唯一の趣味は鉄道模型だった。確かにそこに耽溺気味なのは認めるが、それでも妻をないがしろにしたつもりはない。だが母は何かと口うるさくて…
もう、いつ模型を捨てられちゃうかと心配で心配で(w。ある意味一番身につまされたし、クライマックスの破壊力もこれで良いのかと思うし、このオチで良いのか感もちょっとある。自分が模型好きだから、割り切れないのかもね。
ディクタフォン(レコードのご先祖)に録音された音声をタイプする仕事に就いている若い娘。ある日彼女の許に届けられた音声データは、見知らぬ者からの助けを求めるメッセージだった…
「はい、チーズ」に収録された「FUBUR」にも登場した、ガール・プールという名の人材派遣会社の社員のお話。一瞬再収録かと思ったんだけどそんな事はなく。向こうはほっこりするお話だったけど、こちらは少し苦めの不条理劇。
妊娠中に夫が戦死し、彼の母の家を訪れたルース。何かちぐはぐな会話となってしまう母との間にぎこちなさを感じる彼女は…
一人の男を愛する、と言うことがそのポジションによって思いも行為も変わってくる、と言うお話、なんだけどそこにさらに共感にまつわる何かが加味されて結末を迎える、みたいな。
事実を記事にすること以外に興味のないベテラン新聞記者ハックルマン。だが世間はなにかと仕事以外の活動も要求してくる。季節はクリスマス。街一番のクリスマス・イルミネーションを選出する、というやりたくもない仕事を命じられた彼は、その仕事をそっくりぼくに押しつけてきた…。
これほど心あたたまらないクリスマス・ストーリィも珍しい。なんとなくハックルマン氏がフロストおじさんに思えてきたりして(^^;。
年の離れた夫に先立たれ、四十代で未亡人となったアニー。周りからは堅実で貞淑な女性と思われている彼女の唯一の楽しみは、一度も会ったことのない男性との文通だった。驚くほど理解と共感に満ちた手紙を書いてくれる彼に、いつしかアニーは心を寄せるようになっていくのだが…。
いわゆるトゥイステッドなキレのある作品。ディーヴァーが書いてても違和感なさそうね。
富裕層が集い極めて排他的な小さな村。ここに住む一人の青年の家庭教師のぼく。おとなしく、目立たない生徒のはずだった青年ロバートにとあるきっかけで大きな変化が起きることに…
保守的な世界に浸かっていた若者に起きた些細な事件が、一人の若者を熱狂に巻きこんで、と言うお話。
とある会社の株主記録課ではたらく3人。うち2人の密かな楽しみは、記録されている株主のひとりに勝手なストーリーをでっち上げることだった。そしてそれを3人の残りの1人にふき込むこと。ちょっとした悪ふざけに過ぎなかったその遊びが…
一種のなりすましコメディとでも言いますか。こちらもトゥイスト効いてます。
老いが引き起こすちょっとした騒動、苦い、ってよりは苦笑案件でしょうかね。
兵役の後大学に復学し、犯罪学の講義を受けるジョージ。講義の一環として刑務所に収監されている女性の話を聞くことを指示された彼が会ったのは…
なんていうかな、チェリー・ミーツ・ドリアン、みたいな(w ? これはこれでハッピーエンドのラヴ・ストーリィではあるのですが…。
若く才能あるオペラ歌手、ニッキー。ぼくは彼に10ドルの貸しがあるのだが、彼はいっかな返そうとはしてくれない。それどころかニッキーは、オペラそっちのけで別なことをやろうとしていて…
んー、わからん(w。才長けた存在というのは凡人には想像も出来ない行動に出て凡人を振り回し、結局最後には凡人も納得するしかないんだよ、って話なのかなあ。
ベンの雑貨屋の前に止まったキャデラック。そのドライバーはどこかはかなげな若い女性だった…。彼女は最近亡くなった富豪の膨大な遺産を受け継いだ女性に会いに行くのだという…
金は全てではないがあるに越したことはないけれど、ありすぎるのもそれはそれで問題だろう、と。見られているのは人物なのか、人物のバックにある何かなのか、って話かな。
前衛画家たちが集まる通りに一軒のみ店を開いているオーソドックスな絵描きの画廊。評論家受けは良いが稼げない芸術家と、俗物扱いされてはいるが稼ぎは充分な職業画家の葛藤とは…
こうありたい自分とこうするしかない自分の対立構造。視点を一度変えれば見えてくるものも変わる、と言うお話の好例と言えますか。ちょっと女性陣が貧乏クジではあるけれど(^^;。
基本は(『古き』抜きの)「佳きアメリカ」の市民たちに向けて書かれたお話たち、ということで。愛らしく、時にちょっと棘があるようなお話たちと言えるかな。帯で池澤春菜さんも仰ってます、「心が疲れた時は、ヴォネガットおじさんにお話を聞くことにしよう」まあこれが全てかもわからんね。
★★★☆
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