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デニス・E・テイラー 著/金子浩 訳
カバーイラスト EVILVIT
カバーデザイン 早川書房デザイン室
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-012202-7 \1020(税別)
アザーズの侵攻を阻止できず、パヴ人達の大半を救うことが出来なかった上に、自らも大きな損害を被ってしまったボブたち。しかもアザーズが次に狙ってくるのが地球であることは間違いない。限られた時間の中で、アザーズへの対抗策を講じなければならなくなったボブたち。しかも問題はそれだけではなかった……。
滅亡に瀕した地球人類の移住計画の進行、遭遇した異星人たちのサポート、厄介なブラジル軍人への対応、海洋惑星への空中都市の建設、AIからレプリカントへの移行と、それに伴う限りある命を持つものとの軋轢と、ボブたちが解決しなくてはならない問題は山積み状態。しかもそれらをこなしながら、最強の敵への対策もしなくてはならないという大忙し状態。にもかかわらずここに悲壮感のかけらも無いってあたりが本シリーズの魅力と言えるかな。何せこのボブ君たち、すでに一回死んでいるんでね、これ以上死ぬ心配は無いってのはやっぱり大きいと思う。なにせバックアップがあれば多少後戻りもあるけど復活は可能なわけだから。
そこのところがスポイルするであろう、命がけ感、みたいなものを補強するために、モータルとイモータルの間の(恋愛込みの)心の交流であるとか、命に限界がある者とそこに限界がない者との間の関係性みたいなもので、いろいろ工夫はしていると思う。そこは認めます。
これまでに撒いたいろんな要素を一応収束させ、最悪の敵との決着も抜かりなく、こっちが忘れかけてたブラジルさん(^^;との決着もつけて、とまあよくやってのけたものだと思う。思うんだがその結果、全部の要素が薄くなっちゃったんじゃないか、って恨みもあるんだよな。
基本的にこのシリーズは、最凶の敵であるアザーズとの決着が一番大きい要素になるはずなんだけど、そこのところの盛り上がり方が、他の様々な要素のおかげで少々薄味になってしまった感はある。そして、その最凶の敵との決着において、勝った側であるボブたちが持つべき感慨に罪悪感が入りづらいってあたりも辛いかも。ここは前作では褒めた「神様には頼らない」って姿勢が逆に、悪い方に働いてしまったんではないのかな、と。原罪を犯してしまった存在に救いをもたらす存在が不在なのだね。ここで神様に頼れなかった、ってのは逆に辛かったのかな、なんて事は思いました。
あともう一点、これも神様がらみかもわからんけど、イモータルであることへの言及は欲しかったかも。確かにボブたちの未来は限りなく拓けているものであって、それはそれでポジティヴで良いものだと思うけど、それとは別に、無限の命を持ったものがあえて、その命に自ら幕を引く、て展開があったら文句なしだったんだけどな。
まあまだ続きもあるらしいので、そこらはこの先語られるのかもわからんのですけどね。まあないだろな(^^;。
★★★☆
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