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デニス・E・テイラー 著/金子浩 訳
カバーデザイン 早川書房デザイン室
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-012254-6 \1100(税別)
技術はあってもなかなか有利な職に就けないでいるコンピュータ技術者、アイヴァン。苦境を逆転しようと探鉱船<マッド・アストラ>のコンピュータ担当者として乗船する事に。ベテラン揃いの<マッド・アストラ>だったがここ数回の航宙ではツキに恵まれず、今回の航宙が空振りに終わると船を売り渡す羽目になる。乾坤一擲の探鉱航宙だったが、彼らはきわめて貴重な重金属を多数含む小惑星に遭遇、全クルーが億万長者になれるだけの資源を獲得できそうだった。だが詳細を調査しに向かったアイヴァンたちの目の前に、不可解な物体が……。
で、謎の物体とアイヴァンのコンタクトはアイヴァンにとって重大な変容をもたらすものとなり、その変容がコンタクトを仕掛けてきた超種族にとっては数千年のタイムスパンに及ぶ目論見の一環だった、って事が判ってきて…、てな展開。語られるのは銀河系レベルの超種族間のパワーゲームに巻き込まれた1人の人間の闘い、って事になる。「われらはレギオン」の作者による新作。おそらくシリーズ化も考慮しているんだろうが、そちらの作品同様、こちらも重たくなく、気軽に読んでいけるお話になっているところはポイント高い。主人公のアイヴァン君は考えてみたら結構悲惨な環境に叩き込まれているんだけど、そこで過剰に落ち込んだりすることはなく、常にポジティヴに自分の立ち位置を分析し、そこから望める未来を掴み取ろうとしていく展開は悪くない。
ただまあ、同時に突っ込みどころも満載なのは否定できない。数千年のタイムスケールでプロジェクトを実施する超種族には不倶戴天の敵の存在がある、ってのはそれ、緊急性の問題とか大丈夫なんですか? とか、ナノテクがあったら何でも出来ちゃうのはどうなんですか? とか、そもそもアイヴァン君はこのお話の中で最終的にどういうポジションの存在なんですか? とか、突っ込もうと思ったらいくらでも突っ込みポイントがあるんだよね。
何となく続編も造りたい気満々だけど、そっちはどうでしょうね。これ本体ならまあ、暇つぶしには上等な一作と言えると思うけど。
★★★
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