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ジョン・スコルジー 著/内田昌之 訳
カバーイラスト 前嶋重機
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011716-0 \880(税別)
特殊部隊の兵士として、二度目の青春を戦場で過ごしたジョン・ペリーも今は無事兵役を退役し、とある植民惑星で農業を営みながら街のシェリフ役として平和な暮らしを送っている。そんな彼の許を特殊部隊時代の上官、リビツキー将軍が訪問する。複数の集団からの選抜メンバーによって編成された、新しい形の植民者たちのグループのリーダーとして、新しくコロニー連合の植民惑星となったロアノークに赴いて欲しいというのだ。微妙に釈然としないものも感じつつ、新しい生き方への興味もあり、妻子と共にロアノークに向かうことにしたペリーだったが…
「老人と宇宙」シリーズ、第一作の主人公ペリーをふたたび主役にすえたシリーズ第三弾。なにやらゲイリー・クーパー主演の西部劇みたいな雰囲気で始まったお話は、そんなテイストをいい具合に残しつつ、前半は異星における開拓者たちの人間ドラマ、中盤以降はここに前作でも描かれていた人類文明とそれ以外の異星の文明との対立問題などが少しずつ姿を現して、最後は相当大きなスケールでの宇宙戦争が引き起こされていく。その戦いの最前線に放り出されたのがペリーをはじめとするロアノークの移植民たちなんだが、様々な思惑が交差して、彼らは必ずしも万全の態勢でこの混乱に臨むことは許されていないんだがさあどうする、というお話。
人類って種は、どうも宇宙で暮らしている様々な生命たちの中でも飛び抜けて未熟なくせに、妙に活きがよく、暴れ方の想像がつかない困った連中で、必要以上に古い種族から目の仇にされがち、なんてのはSFではよく見かける図式(「知性化」シリーズとかね)で、このシリーズでもそんな、困った若造である人類の大暴れの一番前の列に押し出された、元々は人の良いじいさまだった元兵士が、二つの勢力の中で自分が負かされることになった小さな世界を何とか守りきろうと奮闘する姿が描かれる。このあたりが何となく、ゲイリー・クーパー的西部劇な世界を連想してしまうのかも知れない。
SF的アイデアのつるべ打ちを楽しむよりは、違った世界で人間としての誠実さを貫こうとする少ない人間の戦いを味わう物語。で、その「人間」であるという部分のアイデンティティがちょっと怪しくなってしまった人々が主人公である、ってあたりにSFらしいスパイスが利いていると言えるかな。
前作でもちょっと顔を出したアトランティスの…じゃなかった遺伝子工学が生み出した亀形兵士(の名前がストロスとはねw)や、第一作でペリーが持つことになった新しい家族たちのワケありな事情なども上手に取り入れられて、楽しく読める一冊になっている。ラストはちょっと、ニヤリとさせてもらいました。
スコルジーはこのエピソードを、ペリーの娘ゾーイ(なにげにこのシリーズの最重要人物かも分らんね)の視点から見たバージョンでも書いているんだそうで、そっちも楽しみですわ。
★★★★
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