ばむばんか惰隠洞

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2004-09-01 この日を編集

[Chinema] スチームボーイ

劇場版パンフ表紙 スタッフ
原案・脚本・監督:大友克洋
脚本:村井さだゆき
総作画監督:外丸達也
音楽:STEVE JABLONSKY
声の出演
鈴木杏 小西真奈美/津嘉山正種
沢村一樹/斎藤暁/寺島進
児玉清/中村嘉葎雄
公式サイト:http://www.steamboy.net/

極寒のアラスカ。英国の科学者、ロイドとエディのスチム父子はこの地で、世界の歴史を変えうる特殊な液体を発見する。それこそが現在世界を支える蒸気機関を一気に時代遅れな代物に変えてしまう力を秘めた物質。米国の武器商人、オハラ財団のバックアップのもと、ロイドとエディの研究は進んでいた。それからしばらく経った英国、マンチェスター。スチム家の少年、レイの許に祖父ロイドから一つの小包が届けられる。中身はボールほどの大きさの一個の鋼球。そのボールを手にした瞬間から、レイの大冒険の幕が上がったのだった。時に1866年、ロンドンでは今まさに、世界初の大博覧会の幕もまた上がろうとしている…。

圧倒的なまでの作画レベルに星一個、感動的なまでの色彩設計に星もう一個、その他全部ひっくるめて、あと星半分、かなあ。「AKIRA」などでも感じたんだけど、大友アニメの神髄って、人間の手によって描き込まれ、動く絵のものすごさへの拘り、みたいなものがあると思ってるのだけれど、そういう部分を眺めて「いやこれは凄い」ってな気分にさせてもらえるって点においては十二分に満足できる。特に序盤、レイの住むマンチェスターの描写はすばらしい。ただし、"劇場用長編アニメーション映画"としてどうか、といわれると正直うーんな気分。コックさんから給仕まで、誰一人、微塵も手を抜いていない高級レストランの料理なんだけど、一口ほおばった瞬間に「なんかぱさぱさした料理だなあ」、と思ってしまう、様な感じ、でわかりますか?

絵のレベルに関しては前にも書いたとおり文句なし。いや、まあちょっとあるけど(^^;)誤差の範囲内。すばらしいです。で、この絵で伝えてもらうお話の方は、基本的にはストレートな冒険活劇のフォーマットなんだけど、どういうんだろう、微妙に、あちこちで、大友克洋の照れ隠し、みたいなものが見えてきて、それがストーリーの展開を、こちらの期待しているものとは、微妙に"外した"方向に持っていく傾向があるように感じられる。ガイナックスが「海底二万哩」から「ナディア」をこさえたのとおんなじようなノリで、大友は「悪魔の発明」から「スチームボーイ」をこさえたのかなあ、とか、ふと思った。結果的にこの二つ、妙に似たテイストを持っていたりする。で、ガイナックスはパロディで照れを隠してるのに対して、大友はストーリーを微妙に王道の展開から外してみせることで、自分の「てへっ」感を映画に盛り込みたかったんじゃないかなぁ、などと。

で、そのこと自体は決して悪いことじゃあない。大友だもの。多少はクセ球放ってくれなくちゃ、とも思うしね。ただ、クセ球投げるなら、それが明らかにクセ球であるとわかるような造りを映画が備えていないといかんと思うわけで、残念ながらこの映画はそこがうまくできてない。なのでクセ球がクセ球に見えない。ただの失投に見えちゃうわけです。どこが悪いか。声優。

パンフで大友自身が、メインのキャストにプロの声優じゃなくて俳優さんたちを起用したことについての質問に答えて、「19世紀のリアリティが出したかったので、アニメ的なキャンキャンした方向じゃなくて、朴訥な感じが欲しかったからです」と発言しているのだけど、で、確かに朴訥は朴訥なんだけど、朴訥が過ぎてメリもハリもないセリフを喋るキャラクターオンパレードになっちゃってしまった、ってのはどうよ(ついでに、アニメ的なキャンキャンした、つー発言もたいがい失礼だと思うぞ)。

この映画で最初にセリフを発するのは、スチムじーさんを演じる中村嘉葎雄なんだが、で、わたしゃ中村嘉葎雄の「ゴジラ×メガギラス」の時のマッドサイエンティスト役とか、それなりに好きではあるんだけど、声優としては残念ながら落第。声が全然前に出てないの。抑揚もあまりに平板なの。実はこの、中村嘉葎雄の第一声を聞いた時点で、私この映画、もしかして2時間の拷問になるんじゃないだろうかと危惧してしまったぐらいです。困ったことにその予感、かなり当たってしまったのがさらに辛かったですが。

声優経験のある津嘉山正種と、芸達者な斎藤暁(役柄にも助けられたか)以外の声優陣がほぼ全滅。揃いも揃って抑揚なし、メリハリなし、声の出具合がいまいち悪しではお話のクセ球具合を楽しむ以前に、「もうちょっとマシな声出してくれー」って気分でいっぱいになっちゃうんですな。もったいない。これが手慣れた声優さんたちのお芝居だったら、大友克洋の照れ隠し大冒険映画、もうちょっと楽しめたんじゃないかなあと思ってしまうんだけど。鈴木杏はこのメンツの中ではすばらしく健闘していたと思うけど、でもやっぱりちょっと声に芯が通ってない、と感じる時がある。わたしゃ杏ちゃんファンなのでこのお芝居は許容するけど、んーでもやっぱちょっと辛いかな。声優さんって偉大だ。青ニプロバージョンの「スチームボーイ」とか、やってくれませんかね(w。

というわけでお話を楽しみたいのだけれどスカタンな声優陣のおかげでそこが台無しにされちゃった一作。残念賞ですな。ものすごく豪華な残念賞映画。

最後に。それはともかく金田正太郎の活躍を描きたかっただけなのに気がついたら「AKIRA」ができちゃった大友克洋。ホントはこの作品も、大友的「少年ジェット」みたいなノリにしたかったのに、気がついたらこんなんなっちゃったなー、みたいな、彼なりに忸怩たる思いがほの見えるエンディング、実はこの映画で一番の見所だったりしてな(^^;)。

(★★☆)

本日のツッコミ(全3件) [ツッコミを入れる]

TUX [●以前、声優の林原めぐみさんが、インタビューで「声優は表情とか、身振り手振り一切なしで、喜怒哀楽を、それこそ声だけで..]

rover [たぶんそこでしょうね。俳優さんであればセリフに連動する所作、で表現できる部分も声優さんは声でやらなくちゃいけないわけ..]

TUX [●杏ちゃんは、先日テレビでリーターナーを見て、そのあとDVDでジュブナイル見て、やっぱこれだよなぁ、とか思ったので、..]


2005-09-01 この日を編集

[Day] わあい(泣) (12:54)

本人もすっかり忘れてた仕事の修正要望がやってきたぞ。プリントアウトに鉛筆で修正入れたヤツがFAXで50枚、ウチの、ごくヘタレな家庭用FAXつき電話機に……。

読めねえよ(つoT)

まずは解読作業からだなあ。

[Day] わあいわあい(泣)2 (18:05)

なんだなんだ、今日はヤケに細かい仕事がわらわらと舞い込んでくるぞ。トップページリニューアル? ほいほい、やりますよ。何? 文字サイズは10pt〜11ptでお願いします……

喉もと、もとい指先まで罵倒の言葉が出かかったけど、ぐっとこらえて作業作業。

オトナになるってのは、何かを捨てるって事なのさ、ふっ(大袈裟)。


2006-09-01 この日を編集

[Comics] お買い物 (22:35)

409180649x太田垣康男「MOONLIGHT MILE」(13)。ゴローを中心とした、ロートルとはぐれもののベンチャー集団が、骨董品のH-ⅡAロケットで、人間を宇宙までぶちあげちゃうお話。宇宙で待っているのはかつての親友、ロストマン。

うーん、やっぱり"ビッグ"系のマンガ雑誌の連載で、あまりにがっつりとハード方向に突っ走るようなマンガは受け入れられにくいってことなのかな。何が言いたいかと言えば、そのプロジェクトX風味、そりゃあ確かに感動的だが、同時に少々クサいぞ、ってとこで。

日本製ベンチャー集団の宇宙船、スポンサーに"あの"模型メーカー(の、ようなもの)も一役買ってるのがわかるあたりで、妙にニヤリとしてしまったりもするんだが。ああまたケッテンクラート症候群だ(^^;)。

[web][TV] 「レプリカだ、ドミニク!」「そいつを待ってたぁ!」(22:56)

これもやや旧聞。連邦経由で、たぶんスクラップのジェットレンジャー買い取って、実物大のエアーウルフのモックアップ作ってるアメリカ人のサイト、Airwolf。ここのThe Airwolf Mock-Up Rebornってのが問題のブツ(写真は"Preview Images"に。Operaだと上手くスライドショーが動いてくれない感じ。しくしく)。なんかすげえ完成度高いんですけど。映画のプロップ製作かなんかのプロの人たちなのかしら。

ナイト2000作るヤツは結構見たおぼえあるけど、エアーウルフ作ってるヤツってのは初めて見たなあ。


2007-09-01 この日を編集

[PC] メモメモ (19:42)

Flashムービーの上にHTMLの要素を被せて、それをボタンとして利用したい、と言うリクエストをもらってて。

Flashムービーを<div>か何かで括って、こやつにz-indexを指定しても効果はない(常にFlashムービーが上に来る)。こんなときは.swf再生オプションの項目に、<param name="wmode" value="opaque">を追加してあげると問題解決。

ちなみにこの"wmode"の値には、Flashムービーの背景を透明化する、transparent、なんてのもあるそうで。んでそのtransparentの反対語がopaqueで、"不透明"と言うような意味合いらしいが、それと表示順を下にするのにどういう関係があるのかな。

まあいいや、とりあえず昨日からずっと考え込んでたネタが、やけにあっさり解決しましたよ。

[TV] いろいろ見たもの (24:34)

なんか最近は、週に一度投げっぱだった網を引き上げて、中にどんな魚が入ってるかなあ的な視聴ぶりですが。とりあえず引っかかってたのは「らき☆すた」の最初の15分ぐらい、「アイドルマスターXENOGLOSSIA」、「スカルマン」、「地球へ…」、「電脳コイル」。久方ぶりに見た「アイマス」、キャラのみなさまが揃って壊れまくってるのに少々うろたえ。煩悩にあからさまなぐらい素直な分、「スカイガールズ」の方が分が良いんじゃないのかね、とかかすかに思った。「地球へ…」はまあ手堅い展開。「電脳コイル」は、おいおい連続で総集編かよ、もう息切れ? てな感じで。とりあえず姉の加虐記録、34の次が25だったのは問題ないのか、ケアレスミスだったのか、ちょっとだけ気になった。


2009-09-01 この日を編集

[Anime][web] 定期視聴番組 (23:32)

「うみものがたり」。主人公マリンの魔法少女的ストーリーよりも、相方の夏音サイドの日常のお話がかなり良い。大島ちゃんがすんげーかわいいな。

豊崎病?

[Day] ってことでかなり久々に (23:41)

明日は南大阪ドサ周りだー。


2011-09-01 この日を編集

[Day] 今日から9月…だよね?

昨日は8月31日だよね? 月末だったはずだよね? なのに月末払いのはずの入金が全然やってこないってどういうことなの? もしかして8月って32日まであるの?

今日になってメールしてみたら、どいつもこいつも「忘れてましたー」だってさ。

ふざけんなコラ(^^;。

[Anime] 定期視聴番組

「異国迷路のクロワーゼ」。なんだろな、階級問題的な視点を持ち込みつつも全体としてはふわっとしたところに着地点を持って来たせいで、カミーユお姉さま(ああ、女の名前だわね)は上流階級故の深謀遠慮すぎがやな感じばかりを前に出しすぎ、クロード様の方は庶民的なフランクさが無神経ばかりを演出し、湯音のほんわりがそれを一旦うやむやにしてまあ良いか、で終わらせちゃった、みたいな。

もうちょっとこの話、続くみたいなんでどう落すのか、続きに期待しときます。

[Baseball] マケヘンカッタデー!!

D3-3T。どう見ても今日は負けを一つチャラにしてもらった感じ。ナゴヤドームでこれは御の字以外の何者でもないとは思う。当分新井は7番でいいよ。4番は関本じゃなく森田にしないか? どうせ優勝なんか出来ないんだから、ここらで将来の虎の4番候補にもっと場数踏まそうぜ。

ラジオ観戦なんで細かいところは良くわからんのだけど、今日の試合は7回ノーアウト満塁で藤井に代打桧山、ってとこに文句付けたい。そこは藤井で行って、投手のところで代打の切り札だったんじゃないのかね。真弓はんの用兵には、なんつーかルーティンワークすぎて面白くない、ってところが多いような気がしますなー。


2012-09-01 この日を編集

[Anime] 定期視聴番組

「エウレカセブンAO」、「じょしらく!」、「貧乏神が!」。アオが出戻ってゲネラシオン・ブルがテロリスト認定されちゃうお話だった「エウレカ」、もっと爽やかにも、もっと大事にも描けそうな気がしたんだけど、全体にどっちつかずな感じだったかも。「じょしらく」と「貧乏神」は安定して面白いんじゃないでしょうか。

[F1] ベルギーGP予選

タイミングモニタで観戦。可夢偉、フリー一回目でトップだったとは言えまあフリーだし、雨もあったらしいからあてにはならないのかと思ったんだけど、予選が始まっても意外にザウバーの速さは落ちてなくて、最終的に可夢偉は2位からのスタートということに。スパで速いってのは凄くないか? 後ろになにかと批判されることも多いマルドナドが控えていることや、本戦でのピットワークや作戦にイマイチ信用できない物のあるザウバーだけに不安も多いんだけど、決勝でも頑張って。

ポールはバトン、ロズベルグがギアボックス交換で5番後退するのでペレスも4番手スタートだし、スタート直後が見どころかしら。スパ・ウェザーがいい方に働いてくれると面白いんだけどね。


2013-09-01 この日を編集

[Anime][SpFX] 定期視聴番組

「進撃の巨人」、「<物語>シリーズ セカンドシーズン」、「とある科学の超電磁砲S」、「獣電戦隊キョウリュウジャー」、「仮面ライダーウィザード」、「ドキドキ! プリキュア」、「宇宙戦艦ヤマト2199」。丁寧に個性を描いてきたキャラたちを、ハエ叩きの一振りで骸にしてしまう「進撃の巨人」、リヴァイ班のみなさまのご冥福をお祈りします。人間の時と巨人化したときにかなり見た目が変わってくるエレンと、何となくこれまでに登場した女性キャラの誰かで、ここまでで出番減ったといえば彼女って事になるのかなあ、ぐらいには予想できる女型の巨人、この変わりようの違いみたいなものにもお話的にそれなりの説得力みたいなものはあったりするんだろうかね。変身するにあたっては「目的」も重要なファクタ、みたいな説明もあったけど、してみるとエレンの変身には変身したあとの姿をエレンに繋げて欲しくない、みたいな意識(無意識?)も働いていたりするんでしょうか。

クセ球連投の「化」、正しいオリジナル(なんですよね?)の造りで押してきた「超電磁砲」はどっちもいい感じ。

日曜朝、坂本監督は女の子のアクションに妙な入れ込み具合があるよなあ、ってのが感じられてとっても楽しかった「キョウリュウジャー」、生身の女の子の動きがすんげーいいよね。カーニバルモードもなんか元気良くて良いっす。他のメンバーにもフェスティバルモードとかリバイバルモードとか、用意されてるんですかね。「ウィザード」もいよいよラス前。仁藤クン、やっとおいしい役回り回ってきたですね。

「ヤマト」もラスタチ前の下準備。やりたい事というか、言っておきたいことがいろいろある、というのは分るけど、全体としてはやはり少々、軽く、速かった感じはある。

こちらの「ヤマト」においてはデスラーさんが、実は他のキャラに比べて一頭地抜けた近代的思想の持ち主なんである、って設定はちょっと面白いとは思うんだけどね。


2014-09-01 この日を編集

[Books] SFマガジン700【海外編】 創刊700号記念アンソロジー

SFマガジン700【海外篇】(山岸真/編集) 山岸真 編
カバーデザイン 岩郷重力 + Y.S
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011960-7 \1060 (税別)

こっちは文句なし

「SFマガジン」創刊700号記念アンソロジー。山岸真が編纂した海外編は12編を収録

うむ、国内編と違ってこっちは注文付けたいところはほぼ無いと言っていい。そりゃ個別の作品にはそれぞれ思うところの温度差はあると思うけれど、一冊のアンソロジーとしての完成度は素晴らしく高いと思う。なので余計なことは最小限、それぞれの感想に行きます。

「遭難者」アーサー・C・クラーク(小隅黎 訳)

1947年に書かれた作品、ということを考えれば、いかにもクラークらしい最新の科学情報を踏まえた末来視、といえるか。宇宙SFにしてファースト・コンタクトSF。一時クラークの本職でもあったレーダー技術者からの視点も交えた静謐な作品。

「危険の報酬」ロバート・シェクリイ(中村融 訳)

SFマガジン創刊号「SFマガジン」、記念すべき創刊号の完投を飾った作品。主人公をシュワちゃんがやっていたら「バトルランナー」になってただろうけどそこはシェクリイ、スピーディーな展開の中に少し先の未来へのヴィジョンを盛り込んで見せる。その未来がまさに、現在のわれわれが良く知っている、過剰なマスコミによって仕掛けられる行き過ぎたイヴェントに視聴者が無責任に熱狂する世界、というあたりはまさにSFだけが書き得る世界。

本誌で発表された時には小松左京さんが激賞したという。さすがに後付けの自分らが今読んで、そこまでのインパクトは得られるものではないけれど、それでも疑似イベント的狂騒感の果てにマスコミのみならず、大衆もまた容易にタガが外れてしまう物だぜ、という、現代にも通ずる(近)末来視に対する批評的な態度もしっかり押さえているあたりは、やはりさすがと思う。

「夜明けとともに霧は沈み」ジョージ・R・R・マーティン(酒井昭伸 訳)

「星の光、いまは遠く」などと同じ、<一千世界>シリーズに属する一遍。雰囲気的には「フィーヴァードリーム」的な味わいか。異世界における怪異に対するSF的なものとホラー的なもののアプローチの相克がもたらすものは…的な。個人的にはホラーサイドからもう一手、という気はしないでもないけど、でもまあこれ、SFだからなあ(^^;

「ホール・マン」ラリイ・ニーヴン(小隅黎 訳)

火星に放棄された異星人の基地を発見した調査隊が発見したものは…。なんというか、これがどちらかというとグッド・オールド・SF的に読まれること自体、今が21世紀なんだということなのか。本編が発表された1974年にこれを読んでいれば、こいつはどこか難解さもたたえた一作という位置づけになったのだと思う。読み手のリテラシーの成長、ということなのかも知れんけど、改めて読むことの面白さ、みたいなものをちょっと感じた。

「江戸の花」ブルース・スターリング(小川隆 訳)

サイバーパンク・ムーヴメントの牽引役的ポジションの作家のひとりの作品にして「SFマガジン」誌が世界初出、というある意味エポックメイキングな作品。スチームパンクならぬ、"えれくとりかる・パンク"的な何か、と言えるのか。軽めのノリの裏に、実は意外に深いメディアの変遷に対する考察的なものが仕込まれていたりする。

「いっしょに生きよう」ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア(伊藤典夫 訳)

対象者から見たファースト・コンタクトSF、ということか。ティプトリにしては優しく終わったな、という感じ。このアンソロジーの中では、気持ち明るい方に顔を向けてると思えるあたりもうれしいかもな。

「耳を澄まして」イアン・マクドナルド(古沢義道 訳)

不可解な疫病が元で人類が激減した世界。特殊な共感能力を持った修道士、イノセンスが待ち受ける人物とは…。ナノテクがもたらした災厄を背景に語られる一種の終末SF。

対称(シンメトリー)」グレッグ・イーガン(山岸真 訳)

お、宇宙SFとは珍しいなどと思いながら読み進めていくと、やっぱり最終的にはイーガン印の真骨頂、オレには易々とは理解できそうもない超絶理論が炸裂するハードSF。次元って一体どう言うもんだろうね、というところに斬り込んでいく作品である、というのはかろうじて分かるんだが、その切っ先が何をどう斬ったのか、いまいち分からないまま(^^;

「孤独」アーシュラ・K・ル・グィン(小尾芙佐 訳)

いわゆる"ハイン年代記"に属する作品。ハイン人の子孫が生息していることがわかった惑星に赴いた母子が出会ったのは…。我々が近代的、未開、と分類する文化のそれぞれにそれなりの存在意義はあるものだ、というお話。これはこれでしみじみと深い作品であるとは思うが、容易に正しい答えは見いだせないだろうし、そもそもその場合の正しさって何だ、というところに行き着いて、どうもならん悶々としたものを抱えてしまうことにもなってしまうだろうという。それが書かれた目的なのだろうから、成功しているお話なんだろうとは思うけど、

ちょっと長すぎ。少なくとも自分には。

「ポータルズ・ノンストップ」コニー・ウィリス(大森望 訳)

新たな職に就くためにニューメキシコ州のポータルズという街にやってきたぼく。少しばかり早く着きすぎたものだから、時間つぶしに街の観光名所でも回ってみようと思ったのだが、どうもこの街はその手の名所というものは一つもないらしい。途方に暮れて街中をさまようぼくがとある駐車場で見つけたツアーバスのコースとは…

どちらかといえば重めなお話が並ぶ本書の中で、ほぼ唯一、頭ぼんやりしたままニヤニヤ読んでいける楽しい短編。ただこれは自分がぬるいSF読みだからで、それなりにマニア属性のある人であれば、ニヤニヤしつつも頭の方はフル回転させることになるんだろうな。「宇宙軍団」、「航時軍団」などで知られるジャック・ウィリアムスンへの愛にあふれたユーモアSF。「混沌ホテル」に入っててもおかしくないお話。

「小さき供物」パオロ・バチガルピ(中原尚哉 訳)

いかにもバチガルピらしい、何ともどろどろぐちょぐちょとした未来絵図。イメージが鮮やかな分、「うへえ」感も半端ないっす。

「息吹」テッド・チャン(大森望 訳)

トリは(おそらく)現在のSFシーンの頂点に立つ人の一人、テッド・チャン。読むに当たって注意事項が一つ。

絶対にシラフで読むこと(w。

帰省からの帰り、列車の中で缶ビしこたま飲んだ状態で読んでたときには、一体何が起きているのか全くわからなかった。翌日改めて読み直してみて、ようやくこの短いお話にとてつもないテーマが込められてたことが解ってちょっとゾクッと来るという。すごく雑な喩えをするなら、シャルミレンはどういう経過で滅んだのか、的な。ここにミクロな側では自分で自分を見る、ということ、マクロ側では一つの文明にもたらされるエントロピーの結末とは、というテーマがぶち込まれる。傑作SFをずらりと並べたアンソロジーのラストを飾るにふさわしい作品。

ということで。これはもう、読めばわかるすばらしいアンソロジー。付け足すことなど何一つありませぬ。満点つけてもいいけどグィンが長すぎたとこでちょっぴり減点(^^;

★★★★☆


2017-09-01 この日を編集

[Oldbooks] 古書神プチ襲撃

ごめん、無理(^^;。いや、数も手頃だし、多分お客様が満足できる買い取り価格も提案できると思う。ただね、

大ダブりなんすわ、それ。

ご期待にそえられず、ほんと、すいませんm(__)m。

[Baseball] カッタデー!

T5-3D。終盤の逆転とはまた、阪神らしくない芸当を。とはいえ大山、中谷と来年以降に期待できる選手が育ちつつあるのかな。明日はノーミサン、明後日は藤浪きゅんですか。ちょっとは覚悟しておいた方が良いかしら、ま、ここまで4連勝だし帳尻は…(^^;


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ここ1週間分の話題

傑作です

懐かしさ満点

妖精を観るには…

ジュヴナイルとしてなかなか良質

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