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スタッフ
原案・脚本・監督:大友克洋
脚本:村井さだゆき
総作画監督:外丸達也
音楽:STEVE JABLONSKY
声の出演
鈴木杏
小西真奈美/津嘉山正種
沢村一樹/斎藤暁/寺島進
児玉清/中村嘉葎雄
公式サイト:http://www.steamboy.net/
極寒のアラスカ。英国の科学者、ロイドとエディのスチム父子はこの地で、世界の歴史を変えうる特殊な液体を発見する。それこそが現在世界を支える蒸気機関を一気に時代遅れな代物に変えてしまう力を秘めた物質。米国の武器商人、オハラ財団のバックアップのもと、ロイドとエディの研究は進んでいた。それからしばらく経った英国、マンチェスター。スチム家の少年、レイの許に祖父ロイドから一つの小包が届けられる。中身はボールほどの大きさの一個の鋼球。そのボールを手にした瞬間から、レイの大冒険の幕が上がったのだった。時に1866年、ロンドンでは今まさに、世界初の大博覧会の幕もまた上がろうとしている…。
圧倒的なまでの作画レベルに星一個、感動的なまでの色彩設計に星もう一個、その他全部ひっくるめて、あと星半分、かなあ。「AKIRA」などでも感じたんだけど、大友アニメの神髄って、人間の手によって描き込まれ、動く絵のものすごさへの拘り、みたいなものがあると思ってるのだけれど、そういう部分を眺めて「いやこれは凄い」ってな気分にさせてもらえるって点においては十二分に満足できる。特に序盤、レイの住むマンチェスターの描写はすばらしい。ただし、"劇場用長編アニメーション映画"としてどうか、といわれると正直うーんな気分。コックさんから給仕まで、誰一人、微塵も手を抜いていない高級レストランの料理なんだけど、一口ほおばった瞬間に「なんかぱさぱさした料理だなあ」、と思ってしまう、様な感じ、でわかりますか?
絵のレベルに関しては前にも書いたとおり文句なし。いや、まあちょっとあるけど(^^;)誤差の範囲内。すばらしいです。で、この絵で伝えてもらうお話の方は、基本的にはストレートな冒険活劇のフォーマットなんだけど、どういうんだろう、微妙に、あちこちで、大友克洋の照れ隠し、みたいなものが見えてきて、それがストーリーの展開を、こちらの期待しているものとは、微妙に"外した"方向に持っていく傾向があるように感じられる。ガイナックスが「海底二万哩」から「ナディア」をこさえたのとおんなじようなノリで、大友は「悪魔の発明」から「スチームボーイ」をこさえたのかなあ、とか、ふと思った。結果的にこの二つ、妙に似たテイストを持っていたりする。で、ガイナックスはパロディで照れを隠してるのに対して、大友はストーリーを微妙に王道の展開から外してみせることで、自分の「てへっ」感を映画に盛り込みたかったんじゃないかなぁ、などと。
で、そのこと自体は決して悪いことじゃあない。大友だもの。多少はクセ球放ってくれなくちゃ、とも思うしね。ただ、クセ球投げるなら、それが明らかにクセ球であるとわかるような造りを映画が備えていないといかんと思うわけで、残念ながらこの映画はそこがうまくできてない。なのでクセ球がクセ球に見えない。ただの失投に見えちゃうわけです。どこが悪いか。声優。
パンフで大友自身が、メインのキャストにプロの声優じゃなくて俳優さんたちを起用したことについての質問に答えて、「19世紀のリアリティが出したかったので、アニメ的なキャンキャンした方向じゃなくて、朴訥な感じが欲しかったからです」
と発言しているのだけど、で、確かに朴訥は朴訥なんだけど、朴訥が過ぎてメリもハリもないセリフを喋るキャラクターオンパレードになっちゃってしまった、ってのはどうよ(ついでに、アニメ的なキャンキャンした
、つー発言もたいがい失礼だと思うぞ)。
この映画で最初にセリフを発するのは、スチムじーさんを演じる中村嘉葎雄なんだが、で、わたしゃ中村嘉葎雄の「ゴジラ×メガギラス」の時のマッドサイエンティスト役とか、それなりに好きではあるんだけど、声優としては残念ながら落第。声が全然前に出てないの。抑揚もあまりに平板なの。実はこの、中村嘉葎雄の第一声を聞いた時点で、私この映画、もしかして2時間の拷問になるんじゃないだろうかと危惧してしまったぐらいです。困ったことにその予感、かなり当たってしまったのがさらに辛かったですが。
声優経験のある津嘉山正種と、芸達者な斎藤暁(役柄にも助けられたか)以外の声優陣がほぼ全滅。揃いも揃って抑揚なし、メリハリなし、声の出具合がいまいち悪しではお話のクセ球具合を楽しむ以前に、「もうちょっとマシな声出してくれー」って気分でいっぱいになっちゃうんですな。もったいない。これが手慣れた声優さんたちのお芝居だったら、大友克洋の照れ隠し大冒険映画、もうちょっと楽しめたんじゃないかなあと思ってしまうんだけど。鈴木杏はこのメンツの中ではすばらしく健闘していたと思うけど、でもやっぱりちょっと声に芯が通ってない、と感じる時がある。わたしゃ杏ちゃんファンなのでこのお芝居は許容するけど、んーでもやっぱちょっと辛いかな。声優さんって偉大だ。青ニプロバージョンの「スチームボーイ」とか、やってくれませんかね(w。
というわけでお話を楽しみたいのだけれどスカタンな声優陣のおかげでそこが台無しにされちゃった一作。残念賞ですな。ものすごく豪華な残念賞映画。
最後に。それはともかく金田正太郎の活躍を描きたかっただけなのに気がついたら「AKIRA」ができちゃった大友克洋。ホントはこの作品も、大友的「少年ジェット」みたいなノリにしたかったのに、気がついたらこんなんなっちゃったなー、みたいな、彼なりに忸怩たる思いがほの見えるエンディング、実はこの映画で一番の見所だったりしてな(^^;)。
(★★☆)
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●以前、声優の林原めぐみさんが、インタビューで「声優は表情とか、身振り手振り一切なしで、喜怒哀楽を、それこそ声だけで表現しなければいけない所に、独自の方法論と苦労がある」みたいなコトをおっしゃってましたが、至言だと思います。<br><br>●逆に声優だけでやってた人が、舞台に出たりすると、オーバーアクションになったりするんですよね、声だけが(笑)
たぶんそこでしょうね。俳優さんであればセリフに連動する所作、で表現できる部分も声優さんは声でやらなくちゃいけないわけで。そこらの「鍛えられていなさ」を痛感しました。いや、杏ちゃんは良かったのですよ、かなり(^^;)。でもねえ………。
●杏ちゃんは、先日テレビでリーターナーを見て、そのあとDVDでジュブナイル見て、やっぱこれだよなぁ、とか思ったので、スチームボーイ見たい率、極端に低下してます(馬鹿)