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デイヴィッド・ブリン 著/酒井昭伸 訳
カバーイラスト 加藤直之
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011628-6 \960(税別)
ISBN978-4-15-011629-3 \960(税別)
量子ならぬ霊子物理学が飛躍的に発展した未来社会。そこでは陶土に個人の"魂"を転写することで、期限付きで自分の分身として活動する"ゴーレム"を自在に利用する文明が発達していた。"原型"である人間は複数のゴーレムを利用することで、自分の一生を何層倍にも拡張することが可能になり、それはまた社会一般に対しても大きな影響を与えることになっていた。そんな世界のとある一日。高度な複製の技術を持ちながら私立探偵として日々を送るモリスが捜査の為に送り出した、比較的低いレベルの彼のグリーンのゴーレムは、仇敵であるベータの手下たちに追い立てられ、のっぴきならない状況に追い込まれていた……。
そこらにある粘土に最新技術を投影することで、パーマンのコピーロボットさながらの分身ができちゃう世界。しかもコピーロボットはあくまで姿形をまねるだけだが、この世界のゴーレムには原型となる人物の"魂"がコピーされることで、原型の意志の向き具合などがある程度反映された複製が出来上がる事になる。しかも糖度の質などによって、出来上がるゴーレムにもさまざまなランクが出来上がるような世界で、そのテクノロジーの根幹に関わる技術を開発した科学者にの失踪事件に巻き込まれた主人公の私立探偵はさあどうする、ってなお話。"知性化"シリーズで見せるくどいほどの重厚さとはうって変わって、今回のブリンの最新作はたっぷりの遊び心に満ちた、軽妙洒脱な作品になっている。訳者の酒井さんもその辺のテイストを感じ取ったのか、各章のタイトルなどに作者と訳者の遊び心のような物が存分に反映されていると感じた。
そうは言ってもそこはブリン。単純な複製探偵モノで終わるようなことはせず、後半に行くにつれて、読んでる側がびっくりするような仕掛けをキッチリ用意してくれているんで油断できない。このまま一種の電脳ハードボイルドで行っちゃうのかな、と思い始めた矢先に用意されてる仕掛けの大きさに、さすがにブリンだなあと感心してしまうわけで。
お話の中で重要な意味を持つ、ゴーレムたちの扱い具合が実に秀逸。コピーロボットはみんな同じスペックだけど、ゴーレムたちにはその見かけの色合いでランクが存在する。原型に近いほど無彩色に近くなっていくそのヒエラルキーの中で、比較的単純な作業に従事する為の緑色のゴーレムが、実はお話を通じて一番活躍してくれるあたりのストーリーの組み立ての巧さに、ついつい感情移入して読み耽ってしまうんだった。
軽いと見せかけてその背後に潜む、いろんな重めのネタを、その重さを感じさせない軽妙さで捌いちゃうブリンの職人芸を心ゆくまで楽しめる一作。個人的には酒井さん、ちょっと悪ノリしすぎなんじゃないかと思わなくもない(私、紙メディアで2ちゃん的物言いを読むのがすごく嫌いなの。気持ちは分かるけどここは自重して欲しい)けど、やっぱりブリンのSFは面白い。嬉しくなっちゃうね。
★★★★
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