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牧野修 著
カバーイラスト&デザイン YOUCHAN(トゴル・カンパニー)
ハヤカワ文庫JA
ISBN978-4-15-031198-8 (税別) \980 (税別)
友人の啓太と共に性的マイノリティの人々のパレードを見物にきていた菱屋修介。啓太にも伝えてはいなかったが、菱屋もまたゲイだった。そして彼の思い人こそ啓太。この場の雰囲気で啓太にその思いを伝えられたら、などという目論見はしかし、思いもよらぬ現象で断ち切られてしまう。と著所鳴り響く黙示録的な怪奇な音響と共に現れた天使のようなもの。「それ」の出現と共に世界は突然崩壊し始める。目の前で繰り広げられる惨劇に、思わずあり得ない逃避行を夢想した菱屋。死を覚悟した彼が次の瞬間目にしたものとは…。
「魔王ダンテ」のソドムとゴモラのエピソードもかくや、なオープニングからお話は一転、平行世界で繰り広げられる、人と神的なものの間での言語にまつわる、そして言語自体を武器にした闘いの物語が展開する。「言語SF」と言う訳だけど、たとえば円城塔や古くは筒井康隆なども実験的にやっていた、タイポグラフィ的なよく言えば目眩く、悪く言うなら訳の分からん世界とは異なり、こちらにはちゃんとした「物語」があり、その「物語」はちゃんと頭の悪い自分でもスジを追って行けて、しかもちゃんと楽しめるものになっている。ここが大変嬉しい、と言うかありがたい。最近読んでも分からんSFが増えてきておるからねえ(苦笑)。
わかりやすいお話の中に、いかにもSFでしか思いつかない奇っ怪なアイデアが盛り込まれているあたりもとても楽しい。打ち込まれるとその部位の綴りを組み替えて、ものの意味を変えてしまうアナグラム弾とか、脚注を追加することで相手の行動に制限や強制的な変化をもたらしてしまう攻撃とか、徹頭徹尾、「言語」がお話の中で中心的な役割を持ち続けているあたりも上手いと思う。
その上でいかにもこの著者らしい、'70年代サブカル的な様々な事象を、現実の(読者サイドの)時間線での事象ともシンクロさせつつお話にまぶしてくるあたりの匙加減もなかなか。現実の我々がかつて見た、あれこれの物事が、物語の中でも起きていて、しかもそれが微妙に我々の知っているそれとは異なるものになっている、と言う演出も面白かった。
最初に「魔王ダンテ」持ってきたので続けるなら、あちこちに「光る風」風味を交えつつ「ライディーン」が始まったと思ったら「サザンクロス」になって「エヴァ」みたいなのが来て「まどか」で〆る、ようなお話(そうか?)。大変楽しめました。山田正紀氏の解説もやたら面白かったっす。
★★★★
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いやもぅホントに面白かったです。なんだろう、テイストは随分と違うのですが力量としては日本の第一世代作家さんたち(小松さんとか半村さんとか)並の感覚。楽しみました。
どっちかというと牧野修さんって苦手な方の作家さんだったのですけど、今回は文句なしに楽しかったです。最近翻訳SFに訳分からんモンが増えてきてるせいもあって、日本語SFが楽しいのはとてもありがたいですね(^^;