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2020-01-11 [長年日記]

[Books] 時を歩く 書き下ろし時間SFアンソロジー

時を歩く 書き下ろし時間SFアンソロジー(松崎有理/著 空木春宵/著 高島雄哉/著 門田充宏/著 石川宗生/著 久永実木彦/著 ほか) 東京創元社編集部 編
カバーグラフィック 瀬戸羽方
カバーデザイン 岩郷重力+S.K
創元SF文庫
ISBN978-4-488-73904-1 \900(税別)

もやもや

「宙を数える」に続く創元SF短編集入選作家による書き下ろしアンソロジー。こちらは時間をテーマに7人の作家が筆を奮う。

てことでね。ちょっと言いたいこと、と言うかどうにもモヤモヤしたモノが拭いきれないところもあるんですが、まずはそれぞれのお話について。

未来への脱獄(松崎有理)

インサイダー取引で巨額の利益を得たとして法廷に立たされた男。彼は苦し紛れに自分は未来人であり、その知識を利用しただけだ、などという無理ないいわけをしたばかりに、懲役20年の刑に服することになる。538、と番号で呼ばれることになった男が入った監房には187番の囚人が。様々な囚人生活を送るうちに、538は187が何かを作り上げようとしていることに気づく。それはタイムマシンだった。187は自分が未来人である、と主張しているのだった…。
プロジェクトX・イン・プリズン的な? そこのところの流れはややもたつきつつも楽しめるし、ラストの余韻もそれなりに。ただまあ、538と187の関係性にもう一ネタ欲しかったような気が。

終景累ヶ月(しゅうけいかさねがつじ)(空木春宵)

古典落語からモチーフを得たと言うことだけど、そちら方面は全く疎いので何のことやら。最初は「牡丹灯籠」なのかな、って思ったんだけど「真景累ヶ淵」という作品があるんですね。そちらを知っていたらもう少し深く読み込むことが可能だったんだろうか。ちょっとピンとこなかったです。

時は矢のように(八島游舷)

Xnerveと呼ばれる人体埋め込み型情報端末によって大幅に拡張された人類文明。その中枢にある超AIが、ある日驚くべき演算結果を報告する。ごく近い未来に大多数の人類の意識活動が停止してしまうだろう、というのだ。事態を打開するため、対策チームが出した結論は…
ある意味川原礫ワールド、って言ってしまったらネタバレになるのかなあ(^^;。さすがは「法勝寺」の八島さん、面白いんだけどこれ、その意識活動停止の元凶ってXnerveなんじゃないのかしら? そんな描写はなかったように思うけど、それとも自分が見落としてるだけで、それとなく匂わしてたりしたのかしら。

ABC巡礼(石川宗生)

とある作家によって著され、話題を集めた「AB巡礼」なるセミ・ノンフィクション紀行記。その熱心な読者たちは、彼が記したAからZまでの地を巡礼することがブームになっていた。私もまたそんな読者の一人だったのだが…。
いわゆる聖地巡礼の中で出会う奇妙な人たちと、自己の認識にまつわる微妙なズレが生じていく、みたいな。紀行が奇行を生む様なお話って事でいいんだろうか。で、「時間」はどこ行った?

ぴぴぴ・ぴっぴぴ(久永実木彦)

事故や災害などの現場を一度体験したあと、時間旅行でその現場にもう一度跳び、その事故を未然に防ぐ<声かけ>と呼ばれる時間局職員のぼく、だが<声かけ>によって未然に防がれたはずの事件や事故の映像が、webに流出しているという。誰が何の目的で、そもそもどうやって…
実は<声かけ>の活動は微妙に現実世界にも影響を与えていて、って描写もあり、不穏な雰囲気も込みで話は進んでいき、ここにぼくの個人的な問題なども絡んで来て、最終的には… みたいな。

ゴーストキャンディカテゴリー(高島雄哉)

VRを介した仮想通貨のお話かと思ったら、お話はいきなり千年単位の航宙記につながっていく、みたいな? すんません、全然入ってこなかった。

Too Short Notice(角田充宏)

気がつくと白い部屋にいた。目の前には絶世の美女が一人。彼女が言うには、自分は雇用されている事業主の定めた規則のうちの第61条が適応されることとなり、近い将来に死ぬことが定められたというのだ。そういう規則であることは前もって承知しているので仕方がないことと理解できるが、なにか引っかかるところもあって…
白い部屋での情報問答、その果てにある物は…、ってことでオチが少々唐突なんじゃないかって気もするが、これはこれで。認知の隙を突いてきた、って事なのかな。

ってことで。読んでる最中自分の頭の中に湧いて出てくるのは「これは時間SFなんだろうか?」って気持ち。もちろん作者の皆さんは、そんなこっちの固定観念みたいなモノを覆そうと言う気概の元にお話を作ってきているのだとは思う。思うんだが、なんて言うんだろうなあ、なんか大きな布かなんかを切ろうとしてカッターをあててみたんだけど、最初は良い感じに斬れるんだけど途中で斬れ味が鈍ってしまったような。掴みは何か惹かれるモノがあるんだけど、終わりでばっさり斬ってもらえない、というモヤモヤばかりが残ってしまう、という。こっちの本読み能力が錆び付いてきてるってとこもあるんだろうけど、ちょっと読むのがしんどい本でした。申し訳ないけど、残念賞です。

★★★


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