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マーサ・ウェルズ 著/中原尚哉 訳
カバーイラスト 安倍吉俊
カバーデザイン 岩郷重力+W.I
創元SF文庫
ISBN978-4-488-78001-2 \1000(税別)
ISBN978-4-488-78002-9 \1040(税別)
"弊社"の指示の元、様々な現場で警備ユニットとして働く"弊機"。だがこのユニットはかつて、数十人の人間を殺害した
そんな弊機が行く先々で出会う人物、事件を4つの中編にまとめた本それぞれの事件で、弊機(自称がそうなんだから別の呼び方した方が良いのかしら。御機とか? w)はその高度な警備ユニットとしての能力を発揮してコトにあたるんだが、先に書いたようにかつてのトラウマから来る人との接触を極度に嫌う態度から、何かともたついたり、要らぬトラブルを引き起こしたりもする。そんな経験を積み重ねて弊機は成長していって、ってお話。で、それぞれのお話自体は比較的シンプルな筋立てのエンタティンメントになっていて、そこはまあ、特に新しいと言うほどのことでも無いと思う。SF的に(ガジェットなり、バックグラウンドなり、世界観なりが)何か新しい、ってものがあるわけでもないしね。
なんだけど本書、SFでしかやれない仕掛け、しかも結構なフレッシュな仕掛けが一つこらされていて、そこが本書をとてもチャーミングなものにしてくれていると思う。それは何かというと、言うまでも無く弊機と言う存在。かつて(どういう理由かはわからんが)大量殺人を犯してしまい、本来ならばその時点で廃棄処分となってもおかしくない存在なのだが、そもそもの造りが上等なだけにあっさり捨ててしまうのもしのびないって事なのか、大量殺人の記憶をデリートして標準的な警備コンサルタントとして現場に送り出されることで、いびつな記憶(と何か谺するもの)をもとにつくられた個性が、少しずつ変化していく、そこのところの流れがとても楽しい。恐らく大量殺人の方にも何か事情はあって、その辺の掘り下げも続き(あるらしいですね)で語られたら楽しみだな。
本書に収められている4つのお話は、最初に弊社から警備ユニットとして送り込まれた惑星探査チームの元で警備活動を行う弊機がチームに降りかかる災難を処理していく中で、自らのアイデンティティへのとば口のようなものを得て、続くお話でそのアイデンティティとの相克と、それと並行する、まあ下世話と言ってもいいストーリー展開が良い感じに絡んでくれている。個人的には2話目で登場したAI宇宙船「歌う船」ならぬ「煽る船」、ARTのキャラの立ちっぷりが大変好み。弊機とARTの宇宙股旅SFは結構読みたい気がしてる。マーサさん、そういうの書いていてくれないかな( ̄▽ ̄;)。
あと本書、どのお話にも非常にふんわりとはしているが、百合の香りが漂っているのもちょっと興味深いかも。作者が女性だからなのかも知れんけど、この控えめな百合感も自分は嫌いじゃないですよ(w。
★★★☆
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