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久しぶりにやってきました、買い取り依頼物件。ここのところは買い取りはお断りさせて頂いてたんだけど、亡くなったお母様の蔵書をお父様と娘さんが梱包して発送、という事情でなんかほだされちゃって(^^;。
ただ亡くなられたお母様、なかなかの読み手でらして、SFとミステリでかなり良い本が集まった感じなので、ぼつぼつご紹介していけたら、と思ってます。700冊くらいあるんでね(w。
いくつか。「デカダンス」、うんまあこんなもんか。SF的な味付けとかは面白かったけど、アニメとしては盛り上がらないグレンラガン、って感じだったかな。「富豪刑事」、面白かったです。筒井康隆に過分に忖度しなかったのが勝因ではないかと。「天晴爛漫」、レースが主体じゃなく、一種のマッドサイエンティストものと見れば楽しめた…かというとそういうものでもなく。天晴号に何の追加ギミックもなかったあたりが残念かも。アニメ自体は普通に楽しめましたけど。「とある…」、こちらもまあ結構でした。ラストのカタルシスはちょっと控えめだったかも判らんけど。「SAO」、BDレコーダーが録画してくれなかった(^^;。
伴名練 編
カバーイラスト れおえん
カバーデザイン BALCONY
ハヤカワ文庫JA
ISBN978-4-15-031441-5 \1000(税別)
「恋愛編」に続く伴名練氏編纂の「今まであまりアンソロジーなどに入っていない」隠れた傑作を集めた短編集。[怪奇編]と題されたこちらには11編を収録。
です。それでは行きますど。
サブカル誌の編集者である「僕」は最近の若者たちの間で流行するインプラントによる肉体改造の取材のため、とあるライブハウスにいた。美容整形の範疇をはるかに超え、ほとんど肉体欠損、あり得ない肉体移植まで踏み込んだインプラント化。それでも最初はライブハウスでのパフォーマンスに物足りなさを感じていた「僕」だったが、サプライズ的に登場したラストのバンドのステージを見たとき…
「異形コレクション」に収録されていたと言うことなんだけど、チェックしてみたら感想残ってない。2004年なら読んでたと思うんだけどなあ…、という話は措いといて、フリークスものとしてとても良く出来ている。初出が「異形…」って事もあってSF感も持つと同時にホラーものとしての出来も素晴らしいんじゃないだろうか。演劇や音楽にも造詣が深かったであろう中島らもさんの資質が、とても良い方向に反映されていると思った。アンソロジーの開幕編としては文句なし。
かつての教え子にして今は暴力団の2代目となることとなった祐一から突然の知らせが。数学者である私にいったい何の用があるのかと訝しみながらも出向いてみると…
タイトルからも予想出来るとおり、ある意味数学SFとも言える造りに怪奇風味も振りかけられたショート・ショート。「ウルトラQ」の1エピソードとしても通用しそうな気がする。
今やただのアメリカ村になってしまった大阪。狭い土地に溢れる人は、歩いていても他人とぶつかり合い、そこからトラブルが頻発する世界だった。この状況を解決するかも知れない新薬が神戸で開発されたのだが…
関西の「田中」姓のSF作家にろくなヤツはいない(褒め言葉です)と思ってるんだけど、その面目躍如なデタラメSF。落語的な面白さがあると思う。古典じゃなく、上方の若手の創作落語系、って言えるかな。
文字通り「立錐の余地もない」状態になってしまった世界。ぎゅう詰めの状態で日々の暮らしを送るなか、僕の周りで大きな事件が…
二作続けて「密SF」w。そこはかとないユーモアにくるまれているけれど、これも一種のディストピアSFと言えるかな。その上でディストピア感を上書きするかのように、なにがしかの希望も感じられるラストに持って行くってあたり、これは悪い意味で言うのではないのですが、古き良き時代のSF短編、という感じ。
日々をぼんやり過ごしていた無職の俺の許にやってきたシュッとした弁護士。彼は父の友人で最近亡くなった実相寺老人の遺産の一部を俺に譲渡する手続きを遂行するためにやってきたのだという。年に一、二度様子を見に行っていた程度の関係だったのだが、どういうわけか爺さんは俺を少しは気にかけてくれていたらしい。弁護士の案内で実相寺宅の蔵で俺が目にした物は…
そこで見つけて無意識に作動させてしまった装置は、実は一種の時空跳躍装置で、俺はこの装置を利用してダメダメな自分の半生をリスタートしようとするのだが、ってなお話で、そういう見方をするなら時間SF、というかむしろこれは人生のリセマラといえるのか。ただそこからお話はちょっと予想を裏切る方向へ進んでいく。着地がとても暖かくて好き。ちなみに著者はとても名の知れた別のペンネームがあるのですね。
ケイ酸ナトリウム溶液、"水ガラス"とも呼ばれる液体に金属塩の結晶を沈めてできる不思議な形の生成物、ケミカルガーデン。とある高校の授業のテーマとして実験されていたケミカルガーデンで不思議な物体が生まれている、という話を聞いて、政府の治安維持局勤めだった私が派遣されたのだが…
こちらも古き良き香りのする作品だけれど、それもそのはず、作者の光波さんは老舗のSF同人誌「宇宙塵」のごく初期の段階から活動していたが、程なく作家活動から離れてしまった方。この辺の事情は伴名さんの解説に詳しいのでそちらを。お話はそうだな、「人形つかい」的なお話なんだが、そのブツのイメージが美しい。
めったやたらに出血しやすい体質を持った家族のドタバタ編。解説で引かれている津原さんの文章によると、田中啓文氏に軽く揶揄されて発憤して書いたんだそうだ。で、ご本人も言ってるけどなんで発憤した?w。ま、著者名を伏せてたらそれこそ田中啓文さんや牧野修さんあたり? って思うかもね(^^;。
一家4人を乗せて惑星ティコを目指す宇宙船。だがぼくを除く家族3人はどうも本当の家族とは言えないように思える。<父>も<母>も<妹>も、あたかも普通の家族のように振る舞ってはいるが、彼らがその通りの存在ではないことをぼくだけは知っているのだ。
こちらも今はその多くが出版されることのないまま逝去された作家の作品。「怪奇編」という大きなくくりの中で言うなら、これは非常にキリキリ来る感じのサイコ・サスペンス。タイトルにある「笑う」がどういうものなのかが判るラストは、かなり怖い。
自らの翼に恒星風を受け、宇宙をさすらう少年。孤独な旅の中、同胞の姿を求める彼が遭遇したものとは…
「怪奇」と言えるかどうかは判らんタイプのお話で、スティーヴン・バクスターがラノベレーベルで小説書いたらこんな感じになるかも知れないな、なんて思った。かなり希有壮大なハードSF感の作品で、ほうほうと思って読んでいくと後半、ちょっとした驚きが待っている。
知性化され、能力を強化された動物たちが覇権を競う未来の地球。ここでは人類は衰退し、動物たちの奴隷として生きながらえている。そして今、貂の女伯爵に率いる軍勢は、億年生きる要塞のような亀を抜き、その後方の敵方の拠点、万年城を攻略しようとしていた。
フリークス風味満点のアドベンチャー。何となく「タルカス伝」ぽいなー、なんて思いながら読んでた。これは既読のはずなんですが、ううむ、そのときはどう思ったんだろう…。
1920年代、北海道で発見された「低体温症」の女性。体温は24度、呼吸は毎分3回という状態でありながら生きている彼女に興味を惹かれた陸軍の軍医だったが…
ほとんどノンフィクション風味で語られる一種のバイオ・ホラーと言えるのかも知れない。さらにここにミステリ要素が加わって、静謐な緊張感が持続する。これは素晴らしい。これをラストに持ってきたのは多分に編者の気持ちもコミってところもあるのだろうけど、それも宜なるかな、と思わせる説得力は存分にあると思う。
ということで。「怪奇編」と銘打たれてはいますけど、そこを取っ払って普通に「ね、SFって面白いお話たくさんあるでしょ」っていうプロパー的な役割、って方向でも充分その必要条件を満たしているアンソロジーと言えるんじゃないだろうか。大変楽しみました。
★★★★
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