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グレッグ・イーガン 著/山岸真 編・訳
カバーイラスト 田中光
カバーデザイン 岩郷重力+WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫SF
ISBN4-15-011594-x \820(税別)
ほんのちょっとしたきっかけだった。街で見かけた不条理ないざこざ。見逃せばすむその騒ぎに首を突っ込んだ、そんなちょっとした「選択」が、それからの自分にとっての大きな転換点の最初の一歩だったのだ…。表題作を含む7編を収録した日本版オリジナル短編集。
えーと、グレッグ・イーガンって(あたしにとっては)梶原一騎だ、とか言ってしまって良いでしょうか? 特定のジャンルの文化圏で到底無視できない影響と方法論と思想を叩き込んでくる人なんだけど、脊髄の一部があからさまに拒絶反応を起こしてしまう作家。なんだけど困ったことに時々とてつもなく面白い。そんな人。
とにかく読むのに大変な労苦を強いる本。では投げ出してしまいたくなるような本なのかといわれるとそう言うわけでもない。うへえ、勘弁してくれよう、とか思い始めたあたりに、おや? と思わせてもうちょっと先に進んでみようか、って気を起こさせてくれるようなお話が並ぶ、極めて罪な構成の本になってるわけで、これは編者が上手いと言うことなんであろうか。本書で言うなら序盤の「行動原理」と「真心」でやや敷居が高いかな、と思わせておいて驚天動地のバカ数学SF(もちろん褒め言葉)「ルミナス」で、ついて来れないヤツをがんがん振り落とし、そこで生き残った人には「決断者」、「ふたりの距離」という、本書の最初の二本に近いテイストを持った作品で安心させ、続いて本書の中では(私みたいに、かなり脳味噌クロック周波数が遅い人間にも)分かりやすい「オラクル」と繋いでラスト、「ひとりっ子」へと繋ぐ、この構成はうまいなあと思う。何たって時間はかかったけど、オレも頑張って最後まで読んだんだものね。
で、読み終えて感じたのは、これはイーガンSFの本質がそうなのか、この短編集を編んだ山岸真さんの意識がそちらに向いていたからであったのかは判別できないのだけれど、イーガンって内側に向かうタイプの人なのかなあ、って事だったりして。
発想の飛び具合、驚くべき奇想、みたいなものはふんだんに持ち合わせているイーガンなんだけど、この方、というか少なくとも本書に収められた作品の中では、そんな資質を僕とあなたとそれから僕たちの…、にばかり惜しみなく注ぎ込んでいるような気がして。イーガンSFってそうだったっけ? と、少しばかり自分の中の過去ログを辿ってしまったりしたのだけれど。
最近のエッジな感じばりばりなイーガンSFももちろんスゴいと思うんだけど、わたしゃ「宇宙消失」のイーガンが一番好きなんだよなあ、と再確認したことであった。本書は「スゴいなあ」と思える。でもさ、「宇宙消失」は、「オレこういうの好き!」って言えるんだよね。そこんとこの差は割と大きいと思うのだな。
(★★★)
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あー、「ひとりっ子」、手をつける予定が立ってないなぁ。どうもイーガンって読み始めるのに気合を必要とします>私。<br><br>ベアとかソウヤーとかレナルズとかストロスだとすぐに読み始められるのに…。いまだに「マルドゥック ヴェロシティ」も手をつける予定さえ見えない私。<br>(今、まだ「Singularity Sky」を読んでいて、この後、「Iron Sunrise」へ続く予定)
読み始めるのに気合いは要らないんだけど、読み続けるのには結構な気合いが必要なんですわ、オレ的にイーガンSFは。内田さん訳の「老人と宇宙」とか、そろそろお店に並ぶんですよね。未読が結構溜まってるんだよなあ、とほほ。