カテゴリ一覧
Anime | AV | Baseball | Books | CGI | Chinema | Comics | CS | Day | DVD | Event | F1 | Games | Hobby | HTML | Kindle | Misc | mixi | News | Oldbooks | PC | Photo | SpFX | Stage | tDiary | Tour | TV | web | 逸級介護士
山本弘 著
カバーイラスト 橋本晋
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫JA
ISBN978-4-15-030914-5 \720(税別)
特別美人というわけじゃあない。ま、それを言うなら俺だって似たようなものだ。だけど裕美子は俺のオタク趣味を、完全に理解はしてないけれど拒否はしないし、俺も裕美子のチョコパフェへの偏愛を否定するつもりはない。お互い上手い具合に相手をわかり合える、いい按配のカップルなのだし、俺たちを取り巻く環境も、総じて気持ちの良いものだと思えていた。高校時代の友人、溝呂木に久しぶりに会うまでは。俺とは違って天才的な頭脳を持ち、俺とは違って世間とうまく折り合いを付けることのできなかった溝呂木の中には、いつしか世界に対する敵意が芽生え、それは徐々に肥大していたのだ。そして溝呂木の天才的な頭脳から導き出された答えとは…。表題作他6編収録。
と学会系じゃない山本弘を読むのは、そう言えば初めてだな。総じて(失礼な物言いですが)意外に良く書けているなあ、というのがトータルの感想。読みやすく噛み砕かれた文体で、意外に硬派なSF的なアイデアが続々と繰り出されてくる。良い感じで軟派と硬派が混じり合ってて楽しめる。
ただ、ね……。
北野勇作作品なんかでも時折感じる、「やっぱりそう来るよね」的な"分かっちゃう感"が、しばしば素直な読後感に邪魔をしかけてくる。主に私が悪いんだと思うんだが、やっぱり時折「ちっ」とか、舌打ちしたくなっちゃう時があるんだよなあ。てな事でそれぞれの作品について短く。
一種の認知SFに、オタク版"最後に愛は勝つ"っぽいテイストをまぶしたスラプスティック。元は同人誌に発表した作品で、オタクなネタの一部を今様なアイテムに入れ替えたそうだ。で、そこはなんかこう、恥ずかしい(w。あと、
「うーん、あれかな、子供の頃に『ウルトラQ』の再放送でケムール人の話見てさあ」
「あの、納豆みたいなのが人間消すやつ?」
って会話は、ちょっとオレのなかのオタク成分的に許せないものがあるかも知れない。「納豆みたい」云々をいうのがオタク分少なめの裕美子なら良いけど、これは「俺」のセリフ。オタク的にこういう返しはしないんじゃないかと思った。
タイトルが全てを言い表している。実際に加速装置ができたとしたら、その装着者から見える世界と自身の体はどういうものになるか、てのがテーマ。んまあこぢんまりと良い感じだけれども一点、"世界の通貨の80分の1を動かせると豪語するMCSなる組織"の登場でオジサンの舌打ちは最高潮(w。
生き物をそのまま宇宙船として使う、つーとバクスターの「天の筏」なんてのがありましたかね。一種のコンタクト・テーマSFと言えなくもないか。短いながらも気宇壮大。
これはいいね。ベイリーばりの奇想SF。本書の白眉はこれなんでないかい。
量子論的時間SF、つー括りで良いのかな。そこはちょっと面白いんだが、この作品、それから次の作品なんかもそうなんだけど、SF作家の山本弘、というより、と学会会長の山本弘、のニュアンスの方が色濃く感じられる気がして、そこに少々違和感みたいなものを感じなくもない。
バカSF。ま、自分が敬愛するSF作家がょぅι゛ょの頃に触手にうねうねされる様を想像して、それを文章にして発表できるこの人は、相当な大物なのかも知れないな
先日神戸にたおさんがいらした時、彼に「アンタこの本、時々ムッとして読んでるだろ」と図星を指されてしまった。仰せの通り。楽しみつつも時折、ケツのあたりをぽりぽりと掻いておりましたですよ、はい。
★★★☆
前 | 2008年 2月 |
次 | ||||
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 |
●ワタシも許せませぬ。納豆てなんやねん、ナットウて。<br><br>●それはさておき、あと12年かぁ(謎笑)