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2010-02-24 [長年日記]

[Books] ゼロ年代SF傑作選

ゼロ年代SF傑作選(早川書房/著 SFマガジン編集部/著) SFマガジン編集部 編
カバーイラスト シライシユウコ
カバーデザイン 岩郷重力 + Y.S
ハヤカワ文庫JA
ISBN978-4-15-030986-2 \700(税別)

ハヤカワJコレクションと、それに続くハヤカワ文庫JAにおける一連の「リアル・フィクション」シリーズに代表される2000年代ハヤカワ・国内SFを代表する作品を集めたアンソロジー。

というわけで、これは単純にゼロ年代に面白かった国内SFを集めたアンソロジーではなく、ゼロ年代にハヤカワが仕掛けた、ライトノベルと日本SFの中間のどこかに位置するような、そんな括りを突破して、盛り上がってるライトノベル陣営に老舗のSF(その中にはジュヴナイルSFという、非常に重要なジャンルが内包されていたんだが)に積極的に斬り込んで行こうとする時の先鋒となってくれそうな作品たちを集めたアンソロジー、ということになるのかな。重要なのは個別の作品の完成度という前に、イマイチ理解しづらい「リアル・フィクション」の代表選手たちを集めましたよ、というところ。それは突っ走ってるライトノベル陣営に対して、ハヤカワが「ウチはもうちょっと高尚な何かを考えてるぜ」的なアクションを起こし、それはゼロ年代の十年をかけて成功したんだか失敗したんだか良く分からん結果を残した、というオチにたどり着いたと言うことになるのかな。

自分がもはやSF読みとしてはボケボケのロートルになってしまっているのでそう思うのかもしれないけれど、この本に集められた作品たちから受ける印象は、妙なふわふわ感、ってところかもしれない。個々の作品の完成度は高いし、しばしば「お」と思うところがあるのだけれど、全体としてはなんかこう、物足りなさが残るようなアンソロジー。以下作品ごとに短くコメント。多分凄く短いコメントになる様な気がする。

マルドゥック・スクランブル"104"(冲方 丁)

ウフコック・ボイルド時代のコンビのエピソード。ストレートなアクションSFの中に、テクノロジーの進歩がセコいジャンルに妙なヴァリューを持たせてしまうことがあるかもしれない、なんて示唆がちょっと興味深かった。

アンジー・クレーマーにさよならを(新城カズマ)

いかにもライトノベル的な舞台設定と、最近流行りの「記述」をテーマにしたSFアイデアが交錯して輻輳する、ような。タイトルをうっかり「クレージー・クレーマー」と誤読してしまったオレは「はみだしっ子」ファン失格だ。でもクレーマー姓を名乗るようになったアンジーは、このお話に相応しいのかな、ともちょっとだけ思った。

エキストラ・ラウンド(桜坂 洋)

自分が漠然とイメージしている「ライトノベル」ってこんな感じなのかも。そこそこ凝った設定を用意して、できるだけ再利用が可能なストーリー構成を用意してくる、みたいな。

デイドリーム、鳥のように(元長柾木)

本書の中では一番オーソドックスなスタイルの作品と感じた。ミステリとしての面白さも備えた良質のSF、という、ある意味古風な方向性もちゃんと押さえてルあたりは好印象。

Atmosphere(西島大介)

うーんだめだ。やっぱりこの人のマンガの良さはさっぱり分らん。

アリスの心臓(海猫沢めろん)

装幀の部分から凝った力作。これも「記述」が大きな意味を持つ。ハヤカワ的に「ウチらはタダのライトノベルとはひと味違うんだぜ」みたいなところをプッシュしたいと思ったら、こういう作品がその先鋒にくるんだろうな。軽い部分と少し踏み込んで来た部分が良い感じに混じり合った作品、なんだけど着地点が少々ライトノベル側に寄ってたのが残念だったかも。

地には豊穣(長谷敏司)

タイトルからして食い付くオッサン読者は結構いるかも。で、小松左京が(作者と同じ)1974年生まれだったらこういう話を書いてたかもしれないな、とはちょっと思った。端正な美しさとそこはかとないうさんくささを持った作品、だと思う

おれはミサイル(秋山瑞人)

ちょっぴり浮かれたリリカルジャムたちの物語、なのかな。自分の趣味的な部分もあるのかもしれないけれど、ビジュアルの部分がかなりヴィヴィッドにイメージできた作品。ちなみに自分の脳内ではビジュアルはジブリの絵でした。

個別の作品についての感想はこんな感じってことで。総括したいんですがちょっと考えがまとまらない(酒が進みすぎてこれ以上書けない、って話もありますが)んで、そっちはまた、改めて。

★★★☆

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
通りすがり (2010-02-25 07:28)

「おれはミサイル」は秋山瑞人ではなかったですか?

rover (2010-02-25 09:08)

のへーい。その通りでございます。訂正しました。どうもありがとうございます。<br>ホンマにへろへろやな。


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