ばむばんか惰隠洞

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2012-10-27 [長年日記]

[Oldbooks][Books] 秋の突発性サンリオまつり 『確率人間』

書影なんだかんだでずいぶん間が開いてしまった。昨日、病院の待合室でだいぶ読み進んだ(午後は先生が病棟回るので外来が後回しになっちゃうんだね、結構待たされた)ので、本日残りを一気に。ロバート・シルヴァーバーグ「確率人間」、田村源二 訳、1980年初版→amazon (ユーズドのみ)

未来に起きるであろう予兆を確率的に感知できる能力を持った私、ルウは、その能力を活かして一種のコンサルタント事業を興し、それなりの成功を収めていた。そんなルウがとあるパーティーで出会った新進の政治家、クイン。彼に大きな可能性を認めたルウはクインのニューヨーク市長選のスタッフに参加し、見事彼を市長の座につけることに成功する。次に狙うのは大統領の座。そんなとき、ルウの許を一人の男が訪れて、三つのアドバイスを残して去っていった。普通に考えれば有り得ない、未来の出来事に対する提言は、だがしかし見事に的中する。彼はルウ以上に未来を見通す力を持っているらしいのだ。その男、カーヴェイジャルを訪ねたルウは、彼から驚くべき時間線の秘密を聞かされることになる…。

未来視のメカニズムがちょっと新鮮。なんて言うんだろう、ベイリーの「時間衝突」ばりに自分達の時間線とは逆に流れる時間線が並行世界的に存在し、自分が生きている時系列と重複する領域の別のラインを見ることが出来る、という。上手く説明できんけど、1900年から2000年まで生きる人間は、1900年の時点で2000年から1900年までの自分の周りの出来事を見ることが出来る、でわかりますか?

そこのアイデアはかなりパワフルで、作家によってはここを芯にいくらでもお話を拡げてくる(それこそベイリーとか)んだろうけど、シルヴァーバーグはそこにはあまり深入りしないで、そんな世界で起きるであろう、さまざまな人の選択と結果のお話を丹念に描写してくる。それ故にもやっとしたところは残るんだけど、でもお話としてはかなり読み応えのあるものが出来上がる、という…。いみじくも本書の解説で亀和田武さんが書いているんだが、

科学的アイデア、ないしは科学観といったものを、論理力でもってギリギリと絞り上げていき、その結果として未だ読者が体験したことのない"認識の衝撃"を与えるという方向にはシルヴァーバーグの興味はないらしいのだ。かわりに、そうした科学的アイデア、科学観をバネにして、どれだけ絢爛豪華なエンターテイメント・ストーリイを作り上げることができるかということに、彼の興味も努力も集中しているようなのだ。

というのが、本書の魅力をかなり的確に表現しているんじゃないかと思う。「絢爛豪華なエンターテイメント」のためにシルヴァーバーグは、自分達が知っているそれとはちょっと違う近未来(本書の刊行は1975年)のニューヨーク、さらには21世紀直前の世界を丹念に予想し、そこで暮らす登場人物達の、それぞれの「選択」がもたらす「結果」を描写することに注力したのだな、と思える。そこの所の「仕掛け」の捌き具合には少々不満も持つ(俺は頭が悪いからいいけど、頭のいい人ならツッコミどころ満載だと思うんだ)のだけれど、それでもお話の面白さ、という部分では充分満足できる出来でした。ちょっとビターな近未来SFとしてね。


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