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ブライアン・オールディス 著/中村融 訳
カバー写真 Doller Photo Club
カバデザイン 坂野公一(welle design)
竹書房文庫
ISBN978-4-8019-0355-5 \900(税別)
さまざまな種族の人間、亜人種、ミュータントたちが共に暮らす世界。<グリーン族>の狩人、コンプレインはある日、種族の司祭マラッパーから世界の中心を見極める旅への参加を求められる。実はこの世界はかつて人類が建造した巨大な移民宇宙船であり、宇宙船というものにはそれを統べる<船長>が居る場所がある。そこを押さえればこの巨大な宇宙船全体を支配できるだろう。こうして種族の禁忌を破り、コンプレインたちは宇宙船の<前部>を目指すことになったのだが…。
オールディス、1958年の最初の長編作品。他の惑星への植民宇宙船、謎の疫病、種の改変、伝説としての地球などなど、自分が小学生の頃に読んでいた、子ども向けにリライトされたSF作品のエッセンスがいっぱい詰まった作品になっている。主人公コンプレインの視点で進んでいく物語は、絶妙にミスリードを誘いながら進んでいき、最終的に「それでどうなるんだよー」と言いたくなるような放り投げっぷりで終幕。昔のSFって、そういえばこんな感じのヤツ多かったかもなあ、なんてちょっぴりほっこりしながら思ったことだった。
お話は秘境冒険譚的な始まりから、世界のゆがみの様なものへと言及が進み、そこで多種多様な生命体が混在するこの世界が実は巨大な閉鎖空間だったことがわかる、と言うところに最初のショックがあり、続いてその世界(がつまり植民を目的とした巨大宇宙船だった訳ですが)の現在只今の在りようがどういう物であったのかが解るところに二つ目のショックが用意され、それがコンプレインの視点から見たらどういうことになるのか、そのショックに彼はどう向き合うのか、がラストへの導線になるように構成されていて、そこのところのお話の流れはかなり良い。自分の視点のみで見聞していた世界に他者の視点が加わると、世界の見え方は変わってくるよね、という造りは少しも古びてなくて面白かった。
ただ、あふれるSF的イマジネーションをお話的に交通整理するところに、やや手腕のほうがついて行けてないところはあったかな、と言う気はしてそこは残念だったかな。ぶっちゃけ、まだ刈れたんじゃないかな、と思った。冒険譚的なエピソードが逆に登場人物たちのキャラ立て、というところでマイナスに作用してしまったんじゃないかしら。中盤、ちょっととっちらかった感の方が前に出てきすぎな感じはあるんだよね。
そこはちょっと残念だったけど、総じて楽しく読んでいけた。これは多分、訳者の中村融さんの手腕が大きいんだろうな。これがアメリカで刊行された後、あまり時間を置かずに訳出されていたら、それはかなり読み味の異なる本になっていたのかも知れない。古い酒を入れるための新しい酒袋、を意識して下さった、ということですね。何よりそこのところのお仕事がすばらしかったと思うです。
★★★☆
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