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夏休み、公共図書館からの依頼でビブリオバトルの実演を行うことになったBISビブリオバトル部、テーマは「戦争」。テーマで紹介する本の選定、さらに夏休みと言えば合宿だろうと言う安易な発想も手伝って、部の面々は実家が造り酒屋で大きな旧家に住まう武人の家が合宿会場となることに。武人の家族にも参加してもらって行った「恐怖」をテーマにしたバトルを行ったその夜、空は不思議な体験をするのだった…。
前作をKindle Unlimitedで読んだから、って訳でもないんだけどこいつもKindle版で。基本的に前作を読んでいればビブリオバトルというものがどういう物なのか、ビブリオバトル部の活動ってのがどういう物なのか、ってのはひととおり説明されているので、あとは続くお話に選ばれたテーマに沿って、部の面々がどういう本を紹介し、その魅力がどこにあるのか、ってところを説得してもらうところに読んでいく楽しさがある。その上で空ちゃんと武人君の距離がどうなっていくのか、その他の部のメンバーたちのキャラの掘り下げ、今回は特にクールビューティー、明日香先輩の宿命のライバルの登場、ってあたりが見どころか。そこらのハンドリングはさすがに手慣れたもので、それぞれのキャラがビブリオバトルのテーマにどう向き合うのか、って部分もコミで上手に描けていると思う。
その上で前半、どちらかと言えばSFが否定すべき霊的なニュアンスも含む「恐怖」というテーマを掘り下げるビブリオバトルと、その後に付け足される武人と空、それぞれのエピソードには味があると思った。特に空ちゃんのエピソードは、かつて山本弘さんご自身が「トンデモ本」シリーズのどれかで説明していた、「幽霊が出た時、叫んで逃げるのがホラー、友達になるのがファンタジー、解剖しようとするのがSF」と言う喩え(これはこれで秀逸と思います)を敢えて外してくるあたり、上手いと思いましたよ。このあたりは、とてもいい。
なんだけど、本書のメインテーマである「戦争」に関するビブリオバトル部分は、やっぱり今の山本弘の悪いところばかりが前に出すぎている、と感じられて、正直「うへえ」感の方が強くなってしまっていると感じられる。非常にいびつな造りになっていると思うのだな。
そもそも「戦争」をテーマにするところでイヤな予感はしたんだけど、その予感は残念ながら的中してしまい、戦争を一歩引いて検証する、とか言う視点はなくて、あくまでも一般的に流布される、メディアが演出する戦争報道とそれに付随するジャーナリズムと(主に)ネットを介したオピニオンの暴走、みたいなものに対する山本弘本人のナマな警鐘が前面に押し出され、それを読まされるこっちとしてはやっぱり「うへえ」が一番先に来ちゃうよね、ってことになってしまっている。勿体ないです。ビブリオバトル部には論理的思考がちゃんと出来るキャラもいるのだから、戦争の人を殺し、殺されると言う図式の一つ上のレイヤーとも言える、何が戦争を起こすのか、と言う部分に注目するキャラもいて良いんじゃなかったのかな、という印象はある。山本弘さんはどちらかと言えばハードSF側の人だと思うんだけど、であれば「戦争のメカニズム」に冷静な評価があっても良かったのではなかろうか、と言うあたりですね。
と言うわけで正直、諸手を挙げてステキ! とは到底言えまへん(^^;。何より最低だな、と思うのは、ご自分の小説に「山本弘」を結構モロに露出させてること。ここは本気でがっかりしました。もうちょっと「お話」としての完成度、ってところを考えて欲しかったな、と言う気はするな。
★★☆
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