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林譲治 著
カバーイラスト Rey.Hori
カバーデザイン 岩郷重力+Y.S
ハヤカワ文庫JA
ISBN978-4-15-031340-1 \840(税別)
4000年以上前、今や伝説でしかない地球を後にした播種船団は、遙かかなたの星団に植民地を発見し、旧地球の文明のアーカイヴを元に、ここに新たな人類文明を築き上げ、それは出雲を中心にした5つの星系に拡張していた。その中で一番の辺境である壱岐星系で、小さいが不可解な物体が発見された。機能や目的は類推できるが、人類のものとは到底思えない無人の探査衛星。それはこの宇宙に、地球人類以外の文明が存在する可能性を示唆していた。そしてそれは、少なくとも5年前には同種のスパイ衛星を壱岐星系に展開していたことが明らかに。程なくその衛星の送り主は、実体を伴った存在として人類の目の前に現れる…
ガイナス、と名付けられたその異星文明は、最終的な目標はわからないながらも、当面は人類社会への攻撃を開始する。かろうじて奇襲を受けることは回避した人類だったが、徹底的に自分たちの情報を秘匿し、そのためには味方を犠牲にすることも厭わない、人類には理解しづらい行動原理の元にやってくる敵を、人類はどう迎え撃つか。で、ここで最も重視されるのが、戦略や戦術ではなく、戦争をする前の準備をどうするか、ってところ。軍隊を編成し、拠点を用意し、そこにどのように物資を運び続ける(続けないといけないんだよね)には何が必要になるのか、どんな人物が必要になるのか、ってところにかなり深く斬り込んでくるあたりが、昨今よく見かける、「謎の異星生命体の攻撃に立ち向かう人類艦隊モノ」とは一線を画していると言えますか。
タイトルに「兵站」としっかり表記されているものだから、延々WWⅡにおける北極海の死闘的な、補給船団の苦闘が描かれるようなお話なのかな、と思ったらそういう物ともちょっと違って、もう少し巨視的なところから、財政、生産、補給、そして回復に至る一連の流れをまとめて描きたい、というのが本書の執筆意図と言うことなんだろうか、兵站というよりもロジスティックスですね。
この、やや地味目(故に個人的には割と好物なんですが)なテーマをベースに、林譲治さんの作家としてのもう一つの顔である、ハードSF作家のそれが顔を出してくるあたりが面白い。それをものすごくわかりやすく表現するところなんかも含めて。作中出てくる超短距離ワープなんて、「ヤマト」世代なら思わずニヤリとしてしまうよね(w。さすがに補給で一冊保たせるなんてのは至難の業なんで、随所で挟まる派手な見せ場の部分も、著者の架空戦記とハードSFの書き手としての手練れっぷりが良い感じにフュージョンしてると思う。その上俺の大好きな、ラストで一発大ショック、も用意してくれてるし(w。
まあこれは主に架空戦記方面への偏見かも知れないですけど、登場人物のキャラ立てがそちら方面のステレオタイプ感をちょっと感じるのと、全体にソリッドな文体にたまにちょっと軽めの(偏見ですよ、偏見ですけどなんかちょっとラノベっぺーなあ、と思ってしまう)セリフが挟まるのは個人的にはちょっとイヤかも。基本堅苦しい翻訳SFを多めに読んできたおっさんは、急にくだけたセリフが挟まると、そこでちょっと引っかかっちゃうんだよね(^^;。
若干もっさりした感も無しとはしないのですが、それでもとっても楽しみなシリーズ開幕編。どうでもいいけど「あとがき」もちょっとクスクスできますよ(w。
★★★☆
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