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高橋良平 編
カバーデザイン 早川書房デザイン室
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-012230-0 \1080(税別)
人類の宇宙船「ランヴァボン」は深宇宙で謎の異星船と遭遇する。これは幸福なファースト・コンタクトなのか、それとも…。ラインスターによる表題作他、伊藤典夫の訳による宇宙SFを6編収録。
知らなかったんだけどこれ、伊藤典夫さんの翻訳傑作選の第2巻だった(第1弾は『ボロゴーヴはミムジイ』、自分はこれ、銀背の再録かと思って買ってなかった。うかつでした)。で、こちらは宇宙SFの古典的名編を収録。それではいきますど。
ツカミはあらすじの通り、で、ここから進んでいくストーリイはいわゆる普通のSFにおけるファースト・コンタクトの定番的なノリとは一味違ってて、一方的な強者が存在するでもなく、何かファンタジックな交渉が進むでもなく、ただひたすらに彼我の疑心暗鬼ばかりが増幅されていくお話、って事で言ってみれば60年代の米ソ冷戦の状態を(ユーモアも交えて)皮肉に描写した作品、と言えるのかも知れない。現代に移し変えてみるならそうだな、トランプと金正恩の米朝の関係性に投影されるのかも。
いまだ安全性に不安の残る長距離の宇宙旅行に参加することになった新妻、だがその宇宙船は航行中に致命的なトラブルが発生して…
全然違うんだけど、なんとなく「ロトの娘」を思いだした。まあこっちの方がかなりサイコホラー風味強めですが(w。
超光速航行中の宇宙船が消息を絶つ事故が頻発。原因を探るべく出発した宇宙飛行士、ギャラードに起きたこととは…。
宇宙、FTL、そしてそれに伴う謎の現象…とまあハードSFの要素てんこ盛り、なんだけどハードSFとしてはその「ハード」の部分の情報量が現在から見たら相当乏しいものだから、肝心のハードSFとしてのキモの部分が現代の基準からするとややニュアンスに逃げちゃったかな、って感じもあるかも。本作の罪ではないのだけれど。
宇宙を航行する貨物船のクルーに巻き起こったトラブル、その背後にはとある惑星特有の病気が関係していた。その原因を探る船医が見たものとは…
クセ者ファーマーによる、そうだな、
巨大な宇宙病院船、そこにはヒューマノイド以外にも様々な生物たちが収容されている。そこに勤務する医師が出会った生物とは…
ちょっとした口直し(^^;、とも言えそうなドタバタ・スラプスティック。なぜそれをそうする(すいませんね、ワケ分からなくて)、ってところにはあまり深い説明はないけど絵面はやたら面白い。
「分身処置」と呼ばれる一種の遺伝子の優性部分と劣性部分を分離する処置が一般化した社会で、その処置が効かない少数の人間は社会から隔離されてしまう世界。そこで一人の「分身」が効かない男が選択した方策とは…
こういうの読むとつい、「あ、良いカークと悪いカークのお話だ」と思ってしまうワタシはロートルですね(w。人間の中の「悪」の部分を捨てられない人間のサバイバルと、謎の超文明の遺物を巡る、生きると言うことの可能性に関する物語、と言えるだろうか。ダイアスパーから一歩踏み出す人間のお話、と言えるでしょうかね。
異性間文明の中、先進的技術文明を築いている
SFに限った話ではないけど、物語というのは時代を超えて何か寓話的な教訓を時代を超えて残していくタイプのお話ってのがあると思うんだけど、本作は間違いなくそういう一作。読んでもらったら判ると思いますが、本書の造りはおそらく冷戦時代の二大陣営の衛星国になるということがどういう事なのか、をベースにしたお話だと思うんだけど、それは現代でも通じるテーマを内包していた、ということだろうか。古いのに新しい、と感じるお話でした。
あと、SF小説としては地球人類が一番進んだ文明を展開しているって設定は、結構珍しいかもね(^^;
てことで。なんでしょうね、とてもホッとしたよ。自分が安心して楽しめるSFってたぶん、このあたりなんだろうなって気はした。古いっちゃ古いんだけど、たまにはこういうのも読ませてよ、としみじみ思ったことでした(w。
★★★☆
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