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シルヴァン・ヌーヴェル 著/佐田千織 訳
カバーイラスト 加藤直之
カバーデザイン 岩郷重力+W.I
創元SF文庫
ISBN978-4488767051 \1000(税別)
ISBN978-4488767068 \1000(税別)
突如地球に出現し、1億人もの人びとを消し去った巨大ロボットたち。人類側の必死の対抗策が功を奏し、ロボットたちはその姿を消した。だが同時に最初の巨大ロボ、テーミスの修復に功のあったローズら何名かの人間も姿を消してしまう。それから9年、破壊され、一体だけ地球に残った巨大ロボ、ラペトゥスの修復に成功した米国は、その圧倒的な力で地球の半分を支配していた。そんな時、突如ロシアに「あの」テーミスが出現したのだった。そしてその中には…。
という訳で「巨神」三部作の完結編。割と「宇宙戦争」的な手垢感も無しとはしない方法で退けた異星文明、エッサット・エックトと呼ばれるその世界に送り込まれたローズたち4人がそこでどんな暮らしを送り、何のために地球に戻ってきたのか、一方地球での覇権争いにおいて決定的な力を持つ巨大ロボが2体になった時に世界の情勢にどんな変化が起きるのか、そして人類はそこにどういう解決策を見出すのか。
前作でインタビュアーが退場してしまっているのだから文体などは変えても良さそうなものだけれど、このシリーズは基本このスタイルで、というのが著者の方針なんだろう。なので本作も様々なインタビュー、会話記録、記録文書などを参照しながらお話は進んでいく。そこで語られるのは異質な文明同士の折り合いの付け方をベースにした、理解、または(理解ができないのなら)呑み込みの物語、といえるだろうか。このお話の中では人類は最後まで問題に対する満額回答を得ることはできない。得られるのはあくまで暫定的なハッピーエンドってあたりは今風、と言えるのかな。
この流れにさらに、人類とエッサット・エックトの価値観の相容れなさから来るなんとも言えん話の通じなさ、がスパイスとして効いている感じがする。このあたりは解説で大野万紀さんも書いておられるけれど、昨今のヨーロッパの難民問題なんかが通底しているのかも知れない(そういえばイーガンのビット・プレイヤーでも、この問題を想起させるお話がありましたね)。そういう今日的問題提起をしつつ、巨大ロボ同士の激闘、親子の解り合い/行き違い、そして幼年期は終わっていなかった、と言うオチに至るまで、なかなか濃い内容のお話になっているとは思った、けれども例のインタビュー形式がお話としての「味」みたいなものを薄めてしまっているんじゃないかな、って気も同時にしたのは事実ですね。
もちろん示唆に富む表現もあったりしてなかなか味わい深いところもあるにはある訳ですが。終盤のローズのこんなセリフは、なかなか良いと思いましたよ。
わたしたちは……わたしたちはヒーローじゃない。誰もそうじゃない。わたしたちが見るどの映画、わたしたちが読むどの本にも、あらゆる問題を解決できて、どんな危険にも自力で立ち向かうことができる人たちが必ず出てくる。でも現実の生活ではね、ヴィンセント、わたしたちは警官を呼ぶだけなの。それが私のやったことよ。
苦いっちゃ苦いけど、でもそりゃそうだよなあって説得力も持ったフレーズかと。
★★★☆
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