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うーむ、なんかこう、わざわざ岸和田までCoCo壱のカレーを食いに行っただけのような気がしないでもないが…。まあ日当でたので良いって事にしよう、うん。
足だるい。
グレッグ・イーガン 著/山岸真 訳
カバーイラスト&デザイン 小阪淳
ハヤカワ文庫SF
ISBN4-15-011531-1 \900(税別)
あ〜ま〜ぞ〜ん
つまるところ、すべては数学なのだ……勘弁してください(つoT)。
人が生身の体を捨て、仮想現実空間に暮らすようになって久しい30世紀。仮想現実に棲む人々は、現実世界の800倍の処理速度で流れる「タウ」という時間単位のもとで暮らしていた。この世界では「人」は、仮想世界を統括するソフトウェアの膨大なシミュレートのもとにその人格や性向が形成される。そしてごくまれに、シミュレートに予想外のランダムなファクターが加味されることで、「誰の子」とも定義づけることのできない「孤児」が誕生する事もある。今まさに、そんな「孤児」が一人誕生していた、ヴァーチャルな環境下、自らもまた持って生まれた類推と演算能力をフルに使い、仮装社会の一員となるべく試行錯誤を繰り返しながら……
読むのに一ヶ月近くかかっちまった。序盤の、人間の遺伝子が子供を作ろうという時にどういう動きをしてみせるか、ってのをそのまま強力なコンピュータならどうするのか、ってシミュレーションに置き換えて見せたり、そうやって生まれ出た子供が、生まれた瞬間から孤独な存在である事を認識し、独力で他者とのコミュニケーションを取っていくにはどうするか、をこれまたソフトウェアの働きに置き換えて表現してみせるあたりの描写は、そのワケのわからなさにもかかわらずいかにもイーガンSFって感じの楽しさがあって良いのだけど、そのあとが良くない。一日2ページぐらいしか読めない時期が延々続いてしまうのだった。つまらない、のではなく「先生、何言ってるんだか判りません」で翌日学校に行くのが億劫になる、様な感じ。
解説で大森望氏は(ワシみたいな)文系SF読みのための"攻略法"として、「判らないところはばんばん跳ば」しちゃえばいい、なんて書いてらっしゃいますけどね、それやったら私、この本、ほぼ最初から最後までとばし読みですっ飛んでいくしかないんだよなあ。それで一体どんな読後感が残るというのだろうね(^^;)。
個人的にこういう、理屈が先に出るSFってのは苦手で、大森パパに言われなくても「これはいかん」と思ったらそれなりに体が勝手にとばし読みモードに入るんだけど、こいつは困った事にどこまで跳ばせばいいか、予想できないんだよ。なので「なんだかわかんないよー」と泣きながら、一応字面だけは追っかけて読む羽目になってしまったのでした。それでも一応最後まで読んだなあ、ちょっとだけ自分を褒めたい。中盤を過ぎても、終盤が近くなっても、いっこうにこっちが燃えるような展開にぶち当たらないもので、「これはオレにはあかん本なのかも」と思いつつ何とか読み切ったです。で思ったことは……
これはつまり全く異質な世界を描いた作品なのだよね。で、その異質さの中心になっているのが最新の科学的情報である、というところでこれはSFだし、SF以外にはできない芸当でもある。そういうところのとんがり具合は、確かに今のSFシーンの中でイーガン以外には作れないような世界、なのかもしれないと思う。そこは確かにスゴいんだと思う。ただなあ…
昔懐かしいSFで良くあるパターンに、宇宙に飛び出した人類が遭遇した超文明、みたいなネタがあって、そういうときの遭遇相手ってのはしばしば、精神のみで生きる、とか思考する鉱物、とか肉体を捨ててすべてを情報に置き換えた超文明、みたいなものだったわけだけど、「ディアスポラ」ってのはこの、今までは人類が遭遇する相手だった側を主人公にして描いた作品、という感じがする。それはそれですばらしくSFしていると思うんだが、今までのSF(とりわけ通俗的なヤツ)だとこういう場合、人類は「確かに彼らは我々を遙かに超える存在かもしれない、だがッ!」って展開になるのだよね。
詰め込まれた情報量とスペキュレーションには敬意を表しつつ、通俗的なSFファンな私としては、「確かにイーガンSFは私の想像を遙かに超えた存在だ、だがッ!」って、言いたくなっちゃう様な存在でもあるわけですね。こっそりと。
(私には評価不能です)
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