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2008-03-18 [長年日記]

[Books] ナポレオン艦隊追撃 海の覇者トマス・キッド 6

9784150411664 ジュリアン・ストックウィン 著/大森洋子 訳
カバーイラスト Geoff Hunt
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫NV
ISBN978-4-15-041166-4 \940(税別)

意外なくらい正統派

連戦連勝のナポレオン率いるフランス軍の猛威に恐々とする対仏大同盟諸国。次なる目標はいよいよ英国本土なのか。だが、当のナポレオンは、地中海側のトゥーロンでその姿を目撃されていた。彼が次に狙う目標はどこなのか…。英国地中海艦隊の指揮艦ヴィンセント卿は、ネルソン提督を指揮官とする小艦隊を組織、フランス艦隊の動向を探らせようとする。その小艦隊の中に、トマス・キッドの座乗するテネイシャス号の姿もあった…。

トマス・キッドものの第6弾。フランス革命がナポレオン戦争に様相を変えたあたりの時代を背景に、強制徴募されたカツラ職人が、海に自分の居所を見いだし、己の才覚で上をめざしていこうという話。今回はアブキールの海戦とアクレの攻防戦がメイン。帆船もの冒険小説としては、先に海戦が来てその後陸戦で〆、ってのは構成上ちょっともったいない気もするが、史実がこの順番だからしょうがない。

いわゆる海軍士官、とは家柄のようなものが密接に関係していて、到底ヒラの水兵などがその地位にあがれる様なものではない(ゼロではなかった、という事が第1巻のあとがきで明らかにされておりましたが)のだが、敢えてその険しい道を進もうとするキッドは、どんな小さなチャンスもどん欲に掴んでいこうとする。それは言ってみれば究極の二択の連続になるわけで、目の前のチャンスに見えたものが、少し長い目で見ると結果的にマイナスに働くこともあり、彼の選択はいつも正解のルートを行くとは限らない。その時々の結果に一喜一憂し、心のどこかに焦りのようなモノがうまれ、そのことがやがて、彼を大きく落ち込ませる事態を引き起こすことになる。彼を見守る親友、レンジもまた彼なりの問題を抱えていて、そのことに悩み続けているのだが、いずれにしても今、彼らの命はナポレオンの大軍を前に風前の灯状態。さあ突破口はあるのか……、と言うあたりの展開はなかなかうまい。

元もと何も持たない一人の若者が、それなりに歴史と伝統のある軍隊という社会の中で、自らの地位を押し上げて行くにはどうしたらよいのかを迷い、間違いをしでかしながら生きていく、と言う軸がぶれないのでかなり楽しめる。「オーブリー」ものはどうにも肌に合わんので、最近続きを買ってないのだけれど、こちらはもうしばらく付き合ってみても良いかな、と思える。史実の折り込み具合も無理がなく、なかなか楽しめる。不満があるとしたら、登場人物達の関係性の描写がまだ手薄な感じがするってあたりかしら。ボライソーとオールデーのような強烈なものは難しいかも知れないけれども、せっかくの親友、レンジとの関係性が今のところはまだ、自分たちは親友親友言うておるのに、端から見たらあの二人、仲良くないんじゃね? みたいに見えてしまう時があって。シリーズ物では人間関係の強弱はお話の良いアクセントになると思うんで、ここらがもっと改善されると、さらに面白くなるんじゃないかな。

★★★


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