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2014-07-02 [長年日記]

[Chinema] ホドロフスキーのDUNE

劇場版パンフ スタッフ
監督:フランク・パヴィッチ
出演
アレハンドロ・ホドロフスキー
ミシェル・セドゥー、H・R・ギーガー、クリス・フォス
ニコラス・ウィンディング・レフィン
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/dune/

夢に憑りつかれた男のパントマイム

カルトムービー「エル・トポ」、「ホーリー・マウンテン」で一定の成功をおさめた映像作家、アレハンドロ・ホドロフスキーとプロデューサー、ミシェル・セドゥーのコンビ。彼らが次回作に選んだのはフランク・ハーバートの傑作「デューン」だった。読んだことはないけれど何かカルトな感があるから、というインスピレーションはやがて、ホドロフスキーに得体の知れない確信と情熱を湧き出させることになる。そしてそんなホドロフスキーの発する熱が伝染し、憑かれたように彼のプロジェクトに参加する「戦士」が一人、また一人…

画像の説明学生の頃購入したクリス・フォスの画集を眺めていて、んでその後デイヴィッド・リンチ版の「DUNE」を見て、どこにもフォスのイラスト使われてへんやんけゴルァ! などと誤った方向に愚痴垂れていた青二才時代が何だ懐かしく思い出される今日この頃。フォスが参加していたのはリンチ版じゃなく、こちらのホドロフスキー版であることを知ったのはちょっと後のこと。フォスの画集にはホドロフスキーが序文を寄せていたというのにね(^^;。

「スター・ウォーズ」よりも前の1975年に動き始めたこの一大プロジェクトの始動から頓挫までを、関係者たちのインタビューで再構成するドキュメンタリー。作られなかった映画の映画、という点では「ロスト・イン・ラ・マンチャ(→マイ感想)」的な映画といえるか。ただ、あちらが何となく「仕込んだ」感も結構ある作品だったとするなら、こちらはそういう仕込み感はあまりなく、あくまで事実を淡々とひもといいて再構成していくような作品といえるか。それゆえ「映画」としての出来を云々できるようなものじゃない。

というわけであくまでドキュメンタリー作品として見るべきものではあるんだけど、ホドロフスキーという人は舞台芸術もやっていた人物で、身振りや様々なオノマトペを交えた語りがそれ自体面白いのと、その芸によって語られる様々な関係者たちとの出会いの描写は、やっぱり見ていて面白いんだった。コンテとキャラ設定担当にメビウス、メカ設定にフォス、作品世界のコンセプト・デザインにギーガー、SFX担当にダン・オバノン…今から見れば錚々たるメンバーだけど、当時はまだそこまで知名度を得ていなかった若い才能たちをホドロフスキーが見出し、彼らを「魂の戦士」と呼んで自らの陣営に呼び込んでいく様子はなんとも言えん味があってニヤニヤできる。ダグラス・トランブルがとばっちりくらっちゃうところも含めて(^^;。

キャスティングの方も同様。レトにデイヴィッド・キャラダイン、ハルコンネンにオーソン・ウェルズ、銀河帝国皇帝にサルバトール・ダリ、フェイドがミック・ジャガー(リンチ版ではスティングだったね)……、ものすごいメンツだけど、驚くのは彼らが一度はホドロフスキーの出演オファーに対して首を縦に振っている、ということなんだよな。これが出来てたらもしかしたら大変なことになっていたかもしれない、感は満点だ。

基本的にカルトのジャンルにいたホドロフスキーという人のキャラクタも考慮して、スタッフは極めて完成度の高い企画書というか詳細版スクリプト・シートを作成し、それを持って大手の映画会社を回って資金と制作環境を確立しようとするのだけれど、この時点で彼らは大きな壁にぶち当たり、結局このプロジェクトは日の目を見ることができないまま終幕を迎える。ただ、そこに至るまでにホドロフスキーが巻き込んだ才能たちというのは先に述べた通りとてつもないもので、これだけのメンツを巻き込むことに成功している時点で、ホドロフスキーが発散していた熱量という物がただならぬものであったのだろうということだけはいやというほど伝わってくる。彼が言う「魂の戦士」というワードに乗っかった人々の質と量に、正直圧倒されてしまうところはあるよね。

空前のプロジェクトは様々な理由から空中分解し、ホドロフスキー自身はその後しばらく映像作品を作る気力もなくなってしまっていたらしいけれど、一度彼の熱に浮かされた人たちは、その後のSF映画において重要なポジションにつき、彼の「DUNE」が目指したイメージのいくつかは、その後のSFX超大作と呼ばれる作品にそのコンセプトだったりビジュアルイメージが継承されることになった、とされている。それを持って瞑すべし、という話にはならないと思うし、そもそもホドロフスキーの意思が途中で阻害されなかったとして、そうしてできた「DUNE」が傑作になっていたか、という問題自体にも疑問符は付くと思うけれど、人の人生のある一部分で、何か得体の知れない物に取り込まれ、熱に浮かされたように一つの方向を向いてわき目もふらずに突き進む瞬間がある、というのは、それはそれでとてつもなく幸福な瞬間ではあるよな、とは思った。一種の麻疹状態なんだけど、その麻疹は患者一人で済んでしまうようなものではない、ということなのだろうね。

(★★★)


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