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大森望 編
カバーデザイン 岩郷重力 + Y.S
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011961-4 \1120 (税別)
「SFマガジン」創刊700号を記念して編纂されたアンソロジー。国内作家の作品群を大森望がチョイス。
大森望氏の編集後記にもある通り、ここのところのアンソロジーブーム的な流れもあってか、すでに再録された名作なども結構ある状況下で、さらにアンソロジーを編むというのは結構大変な作業なんだろう。結果オールタイムベスト的なものではなく、いわゆる長老級の作家さんたちに軽く目配せをしつつ、主に若い世代のために、SFマガジンってこういう面白いお話を載せてきた雑誌なんですよ、って方面にやや重きを置いたような方針で作られた本、という印象。それについてはまあ、言いたいこともある。元気が持続してたら最後にその辺についても触れるかも。てことでまずは短い感想を。多分今回はホントに短いと思うよ(^^;。
核戦争で滅亡した地球から命からがら逃げ延びた宇宙ロケットのクルー。彼らがたどり着いた惑星は…
「ソラリスの海」ならぬ「ソラリスの森」的な何か、ってのはすでにネタバレになってしまうんでしょうか。アンソロジーの幕開けを飾るのには最適な、オーソドックスかつ端正な一品。
初期平井和正らしい、スピーディーなハード・ボイルド。今風に言うなら、観察者が世界に過剰に干渉する怖さ、みたいなお話かな。
1971年の海外SF事情を面白おかしく紹介するエッセイの後半のみ(前半は「SFマガジン」700号で読める)。気持ちは分からんでもないがこりゃ反則だろう。
「セクサロイド」。それ以上でもそれ以下でもない。
作家をやっていると、上から下に文字が流れ、下まで来たら次の行に移る、というお話の流れ方に無性に逆らいたくなる時があるんだろうな、なんて思った。タイポグラフィ小説ともちょっと違う、なんていうんだ? レイヤー化、もしくはセグメント化されたお話たちの集合体? それが面白いかどうかはまた別の話。
とある理由で若くして世を去った才媛によるちょっと変わったグルーピー(これも死語か)のお話。鈴木いづみさんの作品、なぜか自分とは接点がなくて、その一点においてとても苦手な作家さんだったりする。で、やっぱ苦手だ(^^;
一種の終末SF的なラブロマンスに、種の保存的なアイデアを被せてきた、みたいな、本書はこのあたりからぐっと現代モードが加速してくる。
書籍化されていない著者のシリーズ、"ジェイク&コーパス"物の第一作。軽い方の神林長平、ですね。
オレ吾妻さん大好きだけど、こういうのは「吾妻ひでお大全集」的なのに入れてください。
このあたりからいわゆるラノベ的匂いも顕著になってくる。いかにもこの人らしい、ラノベテイストとハードSF風味が良い感じにフュージョンした一作かと。
本書中最大のボリュームの海洋冒険SF、クジラ風味。面白かったけど個人的には掴みの部分へのおみやげ的なパートが最後の方に欲しかったかな。
「All You Need Is Kill」がハリウッド映画化された、ある意味旬な作家の、こちらもラノベ的な何かを持ちながら、何よりビジュアル面でのインパクト強めな作品。「キック・アス」とか「エンジェル・ウォーズ」的なものに対する日本軍からの回答、と言えるのかしらね。
自分が一番苦手な作家による、極めてトリッキーな時間SF。当然のように訳が分からんのだが、わからん、で済ますのではなくんじゃもう一回読んでみるか、と思わせる何かがあるのがこの人の魅力ということなのか。有限の記述で抑え込める無限などはせいぜい高が知れている
なんて記述は、SF以外では味わえない「上がる」感じはあるよね。
てことで。いろんな事情はあったと思うんだけど「SFマガジン」700号を記念するアンソロジーとしてはやや、700を半分で切ってその後半に力を入れてみたアンソロジー、という印象は持った。そんな気は無かったと思うんだけど、でもこのアンソロジーに小松左京の名前がないってのはやっぱりおかしいだろうと思うし、伊藤典夫さんのエッセイは楽しいけど、それを載せるのならエッセイってことなら、「SFマガジン」であるなら福島正実さんのエッセイこそ、収録すべきだったのではなかろうかという気もするし。
あえてクセ球を狙った、ということであればそれはそれで大森さんらしいと思うけど、でも策士策に溺れてロートルファンが置いていかれちゃった、的な読後感は無しとしないかも。古い革袋に入れるお酒のチョイス、それでよかったのかな? って気はしないこともない。
★★★
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