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キム・スタンリー・ロビンスン 著/金子浩 訳
カバーイラスト 加藤直之
カバーデザイン 岩郷重力+WONDER WORKZ。
創元SF文庫
ISBN978-448-870708-8 ¥1260 (税別)
ISBN978-448-870709-5 ¥1260 (税別)
24世紀の太陽系。そこはテラフォーミング技術の発達によって環境改造された諸惑星が、同じ技術によって大小さまざまの小惑星を改造したテラリウムによって接続されるゆるやかな連合体と、環境災害と人口爆発に苦しむ地球、という二つの勢力が控えめな緊張関係のもとに共存していた。環境デザイナーとして様々なテラリウムを設計しているスワンの母、アレックスは惑星連合体にあって指導的な立場にある大政治家。そんな母の突然の訃報に動揺するスワンだったが、偶然発見した母のメッセージによりにわか伝書使の役目を負わされることになる。解けない疑問を抱えたまま、地球を含むいくつかの惑星を回り、ホームである水星に戻ったスワンだったが、時を同じくしたかのように、水星の移動都市は予想外の災厄に見舞われて…。
キム・スタンリー・ロビンスン、というと大がかりな世界設定の元、意外と地味なお話が長々と続く、というイメージがあるんだけど、本書にもそういう、何とも言えん退屈さは健在。ただ、たとえば例の「マーズ」シリーズなんかだと、退屈な中に時折「お」と思わせる見せ場が挟まったりするんで油断できないんだけど、で、確かに本書もそういう見せ場は用意されてはいるんだけど、全体としての読み味は「なんかふわふわしてんなあ」ってあたりになるだろうか。
基本的にこの掴みは好きなんだ。いわゆる宇宙SFの佇まい、繰り出される用語(ターミネーター、だのアッチェレランド、だの、妙に他のSF作品を引用してきているのかな? と思わせる言葉選びがいろいろ興味深い)の面白さ、宇宙SFのノリではじまったお話がいつしか環境問題や経済問題といったところにシフトしていくあたりも、その志を買うのにやぶさかではないんだ。ないんだけどね…。
本書は言ってみれば、モビルスーツがない宇宙世紀で、重力に魂を引かれた人たちと人の革新を信じる人たち、さらになんだか良く判らん勢力が入り乱れての権謀術数に巻き込まれた一介の芸術家が、その中で本当に信じるに足りるものは何なのか、を見出していく物語。そこのところの必要条件は一応クリアしているとは思う。ただ、そのスジがどうにも乗り切れないまま進んでいく感じ。お話を追っていくのが正直辛いのさ。
何で辛いかといえば、一つはお話の中において勝利条件が何なのか、ってのがはっきりしてないこと。どうなったらこのお話はハッピーエンドなのか、ってのが判らないままお話を読み進んでいくってのは結構つらいよね。そこのところの曖昧さと、あと、構成上のアイデアとして盛り込んだであろう各章の間に挟まるインターミッション的なパートが、本書に限ってはお話を追って行く上での邪魔になってしまっていると思う。世界観を補強するような意味合いはあるのだろうけどこれ、話の流れにとって邪魔になってしまっていると思った。それでなくても芯が弱めに思えるお話が、こいつのおかげでさらにあやふや感アップ、という結果を招いてしまったような気がするんだよな。
読み始めた時は「ミエヴィルもバチガルピも良いけど、やっぱオレはこういうのが好きだよなあ」くらいの感じでわくわくして読み始めたんだけど、残念ながらそのわくわく感、途中から急速にしぼんじゃった感はなくもない。いろいろ面白いところもあったんだけど、最終的には残念賞、かなあ。
★★☆
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